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喜至楼のうた

水色のワンピースが
扇風機の風で規則的に揺れている
飽きずに鳴いているミンミン蝉
まだ夏だ まだ夏だ

丸い浴槽の削れたタイルは
時間と名付けられた完璧な模様である
わたしも削れたタイルになって
時間の一部になれたら
しかし生活は続くのだ
まだ夏だ まだ夏だ

どこにいても水の音がして
北の方がお産をした山は霧がかっている
五歳になった子どもは死んだ
母を貫いたのと同じ刃で

争いとはほど遠い場所で
清潔なシーツのうえ浅い眠りにつく
まだ夏だ まだ夏だ

※平安時代、源頼朝から逃れるため平泉へと向かっていた源義経一行は、喜至楼から見える山•亀割山を通った。山の中、義経の妻•北の方は、赤子を産んだ。赤子は無事に成長したが、義経らが自害に追い込まれた際に、同じ道を辿った。

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