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笑ゥせぇるすまんにハマっています

「笑ゥせぇるすまん」をご存じの方はどのくらいいらっしゃるのだろうか。
私は最近、これのアニメ(旧ver.)を観始めた。

全く世代ではないのだが、ブラックな内容であることと喪黒福造(モグちゃん)の顔が有名なので以前から興味を持っていたのだ。

「謎のセールスマン喪黒 福造(もぐろ ふくぞう)が悩める現代人のちょっとした願望をかなえてやるが、約束を破ったり忠告を聞き入れなかった場合にその代償を負わせる」というプロットから成る一話完結のオムニバス形式     
               ------wikiより引用

の作品なのでアニメも基本前後を気にせず観られるのだが、5回に1回ほどはお客が理不尽に酷い目に遭い、とてもやりきれないような気分にさせられるので、1日1話視聴はおすすめできない。

結果私はこれに対するせめてもの防衛策として1日3,4話を毎日観る習慣を着けざるを得ず、まんまとその魅力に取り憑かれたのだった。

ここで先述の5回に1回ほど訪れる理不尽回について、この理不尽回には、

1.モグちゃんがターゲットに課した約束自体が無茶なケース

2.ターゲットの規約違反に対して代償が大き過ぎるケース(空手道、夢の跡、OB夫婦妻等)

3.約束事もなくただターゲットがモグちゃんに誘導され破滅する他ないケース(勇気は損気、ともだち屋、ゴルフ入門等)

を分類する。


誤解しないで頂きたいのだが、笑ゥせぇるすまんは僅かな話を除いてほぼ全てトラウマ回である。
(今のところ)

私の挙げる理不尽回は、むしろあまりの理不尽さに伴う理解不能さによってトラウマ度自体は相対的に薄く感じる方だ。
その代わりしっかり反吐が出るので味わい深い。

因みに、仮にそれらの回をネタバレ無しに避けようと思っても、初見で見抜くのはほぼ不可能に近い。
展開が読めないからだ。

ただ、これらの理不尽回があるからこそ、私は笑ゥせぇるすまんにハマったのかもしれないと思うようになった。
既視感を覚えたのだ。どこかで以前にもこんな気持ちにさせられたことがあるような...

...小さい頃読んだ未修正の昔話だ。

私は小学生の頃、祖母(今生きていれば90代)の持ってくる恐らく口伝に近い昔話の本を読むのが大好きだった。
短い話が1冊の本にまとめられている分厚いものだ。

これらの話にも、ディテールは置いておいてある程度お決まりの展開というものがあったように思う。

①山等、禁忌とされる場所に主人公が入る

②そのまま神や鬼、妖怪と接触する

③主人公が殺されるか大切なものを失う、たまに生還する

山に入って酷い目に遭うという趣旨の話が沢山残っているのは、おそらく子どもを守る為に代々伝えられたからだろう。

笑ゥせぇるすまんに無理矢理照らすと、モグちゃんにお客さま認定された時点でそのお客は山に入ったことになる。

ここで、昔話の主人公には興味本位で山に行く者と、旅でどうしてもそこを通らなければいけない者がいるが、「お客」にもそのパターン分けが効くだろう。
そもそも抱えている欲望が邪悪なものである人もいるし、真面目な人の微かな望みをモグちゃんが無理やり引き出す場合も多い。

次に、山に入った人間(お客)は、道中何か(モグちゃん)と接触してそのまま騙されたり約束事をさせられる。
もしくは、先程の理不尽回の定義3.のように、そもそも約束などない場合もある。
そのまま殺されることもしばしば。

そして最後。大抵の場合約束を違えた主人公が殺されるか大怪我、家族を攫われたりして終わる。
両者に共通してごく稀に、約束を果たして生還するものもいる...

昔話の憂鬱度は、①〜③の過程を如何に運悪く踏むかで評価できる。

例として、題名も覚えていないのに今でも時々思い出す程やるせない話がある。
あらすじを書くので、もしご存じの方がいれば教えて頂きたい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
山で行き倒れそうになった男が優しい老夫婦に助けられて家へ何日か泊めてもらうことになったのだが、毎晩なにかについて夫婦が盛んに話し合っている声が隣から聞こえる。
男は始めは気にしていなかったが、その声色は日に日に思い詰めたようになってきて、とうとうある日、会話の中に「いよいよ殺さなくては」という言葉を聞き取る。
男はこの発言は自分に向けたものに違いないと思い込んでしまい、怯えた結果殺される前にと老夫婦を殺してしまう。
すると男に水瓶の中の魚?が話しかけてくる。
この老夫婦は優しい人達で、自分のことを可愛がっていた。しかし、お前が長いこと泊まっているからまともな食事が出せなくなり、毎晩話し合った結果、昨晩泣く泣く私を殺すと決めたところだった。
それなのに勘違いしたお前が主人達を殺した。
このヒトゴロシ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

というような話。

私の拙いまとめからでは単に思い込みの激しい男の自業自得な話に思えるかも知れないが、本編では夜が来る度に少しずつ精神的に追い込まれていく男の描写がもっと巧みだった気がするので、どうも彼を責める気になれない。
それに、昔話では山で出会った人は7割程の確率で化け物なので、幾晩か耐えた男には労いの言葉をかけてやりたいくらいだ。老夫婦は勿論不憫だが...

山姥や妖怪を警戒しなければならない背景によってこの結末からどうしても逃げられないようになっていると思わせるこの感じ...
そして魚の悲痛な叫びの中に嘲る響きがあったとしても何も言い返せないのが最大に憂鬱だ。

笑ゥせぇるすまんの理不尽回も、モグちゃんの「ドーン!」能力の汎用性の高さや約束の設定具合によって、お客さまに如何に理不尽な形で代償を払わせるかというシナリオが見事である。

運の悪さが現実に重なるところもあるし、実は現代社会への覚悟をする上で1番教訓になるのはこれらの理不尽回なのかもしれない。

ということで、今だからこそ皆さんに笑ゥせぇるすまんを推します!
時代を感じる話もしばしばなのでそこを含めて楽しんでください。


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