見出し画像

They Shall Not Grow Old ピーター・ジャクソン

第1次世界大戦の記録映像をカラー化と音声を入れ再構築し製作したドキュメンタリー映画で、特にストーリ性はなく戦場に向かう若者にフォーカスして制作られた内容でした。映像に伴い元兵士の当時を振り返ったコメントも被されていて、またそれがリアルに感じられた。それを聞いていると普通の本当に普通の青年が戦場に駆り出されたんだなあと感じた。


「15歳?18歳に見えるから、そう書いとけ。はい、合格だ」
「親父に戦争に行ける年齢では無いけれどお前へは背が高いから行ってこいと言われたんだ」
「3食メシが食えて楽しかった」
「最初はキャンプに行っているみたいで楽しかった」
「配給された靴のサイズが合わず違うのを求めたが、靴をお前のサイズに合わせろと言われた」
「腹が減っていたら何でも食える」
「死ぬのは怖く無いけれど怪我をするのは嫌だった」
「ドイツ人の捕虜と仲良くなった。俺たちと何も変わらない若者だった」
「戦争が終わって外回りの営業に戻った時、客に『ずいぶん久しぶりだな、どこに行ってたんだ』と言われて腹が立った」

どこかユーモラスで危険を軽視した若さ故の言動が逆に国の犠牲になっている現実から遠ざける。ヒロイックな感情に支配され、興奮状態の高揚感に胸を高まらせる。映画の中では戦地に近づくにつれ戦況が悪化し、死体も山の様に積まれまさに死屍累々としている。観ている自分もこれは本当に恐ろしいものだなと感じた、人間では無くまるでダミー人形にしか見えず生きた心地がしなかった。一体生きるとか死ぬとか何の意味があるのかさえ分からなくなって来る。本当に戦争は恐ろしいものだ。学生の時分に歴史を学んだが今回再現された様な映像で戦争を観るとこんなにものどかな田園風景で淡々と多くの人間が死んで行く光景を想像することはできなかった。しかも戦争で戦っている軍人は鬼畜でもサイコでもなく殆どが普通の青年だ、そこにまたシンパシーを感じた。時代と場所が違えば自分も他人事では無いことを感じた。戦争から帰っても中々就職もできず大変だった人もいると聞いた。現実社会に戻ってもまた新たな戦いに巻き込まれる。もちろん戦争は大反対だが人間は死ぬ時は簡単に死んでしまうが、中々死な無い人もいる。これから何秒先の運命も分からぬ状況を乗り越えたくましく生きていく。本当に人間が生きるというのは素晴らしいものだ思った。現代を生きていると何をやり遂げたとか頑張れば出来るとか、まあそれも一理あるかも知れ無いが、この映画を観て人間は淡々と生きて死ぬだけでも素晴らしいでは無いかと考えさせられた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?