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アリス ヤン・シュヴァンクマイエル

ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を原作にチェコスロバキアの鬼才であるアニメーション作家ヤン・シュヴァンクマイエルが制作した長編映画です。ストーリーは単純でウサギを追いかけたアリスがある世界に迷い込んでまう。その不気味で摩訶不思議な場所でアリスが登場してくる個性的なさまざまなものとやり取りをしていくという話です。
沢山のおもちゃに囲まれた部屋でアリスはウサギのぬいぐるみに命がやどっっているのを発見する。それがきっかけで不思議の国に誘われる訳だが、言葉に表すのには困難なシーンが沢山あった。とにかく作品の中では理解不能な状態が正常化されていて、またその状況も刻一刻と変わって行く。
自分が好きだったシーンはアリスがインクを飲むと小さくなり、クッキーを食べると巨大化してしまうシーンだった。(いつもそうとは限らないがそこがまた面白いところでもある)CG処理がされていないので大きくなるシーンはおそらく家具を小さくたりして目の錯覚を起こさせたり、小さくなるシーンはなぜかアリスが人形になってしまうというその独特な映像に興味を奪われた。
毎回アリスが机の引き出しを引っ張るシーンがあって、毎回つまみがとれて”ポンッ ”といったアナログの効果音が出るのもたまらなかった。だから引き出しを引っ張るシーンになると ”来るぞ 来るぞ” と毎回期待してしまう自分がいた。そしてその期待を決して裏切らないから本当にたまらない。
アリスが奇妙な生き物とやりとりをする(おかくずを吐き出す頭蓋骨や人間の赤ちゃんの鳴き声をする子豚等々)シーンではかなりいかれているクリーチャーにも関わらず、彼女は殆ど平常心で接している。そして私自身まったく笑いのツボが分からない所で彼女がいきなり笑ったりもする。でも観ている方としてはこれが段々たまらなくなってくる、物凄く中毒性がある映画だった。
この映画に感想やストーリーの内容等はナンセンスかもしれない。シンプルにぞっとしたり、笑ったり、意味不明なシーンでは自分も戸惑ったり、でもまたそのシーンになると観る方も慣れてくる。とても印象的なシーンが多く何故だか精神的に癒された作品でした。これから色々と彼の作品を観たいと思いました。


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