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伊丹十三さんは殺されたのだと思われる

 とはいってもその根拠はない。「ヨーロッパ退屈日記」という伊丹さんの本を読み終えて、ふとそう思わされただけのことだ。公には事務所のマンションから飛び降りたことになってはいるが。

 誰に殺されたのかは問題ではない。伊丹十三という稀有な才覚を持ち、生きることの楽しさをこれだけ一冊の本で伝えられるようなヒトを、自殺したのヒトコトで片づけてしまうのは失礼じゃないか。

 週刊誌が不倫疑惑やSMクラブ通いを報じたぐらいで。”それぐらい”のことの潔白を証明するがために、自殺するようなヒトだろうか。そう考えさせられた次第である。

 「ヨーロッパ退屈日記」は机から手の届くところへ置いておくといい。ふとしたときに、手を伸ばして、パラパラと開いて、目に留まったところを読むだけでもいい。

 きっとあなたの脳みそという大地を耕して、肥料をまいてくれる。知識を与えてくれるのも本であるが、素質を引き出してくれるのもまた本であったりするのだ。

 スパゲティの茹で方ひとつをとってみても、1965年にアルデンテを紹介しているところが先進的である。こういうカッコいい生き方をしてみたいと思わされること請け合い。

今日のところはこれまで。ごきげんよう。
この呼吸がつづくかぎり、僕は君のそばにいる。

ヨーロッパ退屈日記

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