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2024年5月 徳島県板野町・大阪府豊能町 行政視察レポート


【道の駅いたの】


徳島県板野町は人口12,939人、出荷量日本一の春ニンジンをはじめ、ダイコンやレンコンの生産が行われている、農業を基幹産業とする町です。

「道の駅いたの」は、議員が先進地視察と30回以上の協議を重ね、次世代エネルギーを備えた未来型思考の道の駅としてDBO方式を採用し、31億1200万円で整備された道の駅。


余市町の新たな道の駅の事業方法は当初PFI方式で考えていたが、現在はDBO方式を予定。
(新たな道の駅 基本構想より抜粋)


地域振興施設は指定管理者が管理し、道路施設は町が管理しています。

道の駅の整備を進める中で防災拠点としての機能を追加したとの事で、避難所兼備蓄倉庫やヘリポートを併設。


備蓄倉庫の備蓄品。

EV急速充電器の他に移動式水素ステーションも整備されていますが、現時点での利用は1日数件。

この他にレストラン、足湯、ドッグラン、レンタサイクル、高速バス停留所も設置されています。



足湯のお湯は「あせび温泉」(町営)のお湯を運んでいるとのこと。



[地域振興施設の運営について]


年間1,000万円を板野町に支払う事を条件に、㈱阿波食が指定管理者として運営。

春ニンジンをはじめとした農産品・農産加工品の他、阿波名物の麺類、鮮魚、地元のブランド肉等の食品が多種販売されており、地元民がスーパーのように買い物が出来る品揃えと設備でした。


ボトルも可愛いニンジンドレッシング







(来場者数と売上の推移)
R3 入場者数 38万3,000人  売上 6億34万円  @1,567円

R4 入場者数 39万4,000人  売上 6億9,700万円 @1,769円

R5 入場者数 45万3,000人  売上 8億3,600万円 @1,845円


※駅長の小川満大さんの説明によると、来場者数・売上共に増加しており、最近の客単価は平均2,000円前後との事。(平日1,500円、休日3,000円)


[参考]
全国の道の駅客単価   863円 (全国道の駅連絡会報告 R4調査)

余市町現道の駅客単価  303円 (道の駅再編基盤整備検討調査R3作成)

余市町新道の駅客単価 2,534円※(道の駅再編基盤整備検討調査R3作成) 
※令和10年開業予定の新道の駅客単価は目標数値。


来場者数・売上の現状と目標を表にまとめてみました。


[指定管理者と町の関係]

①    指定管理者は年間1,000万円を板野町に支払う。

②    売上が3億円を超えた場合は、①に加えて売上の2%を板野町に支払う

③    指定管理者の駅長と役場担当者は常に情報を共有している。


[集客・売上増加のポイント]   
 
①    お買い得な農産品
②    地場の鮮魚・肉などの生鮮品
③    地場の農産品を加工した商品
④    イベント開催
⑤    周辺に大型食料品店がない環境
⑥    地場の素材を使用した特色のあるソフトクリーム
⑦    町営温泉無料券の配布(先着200名) 
⑧    「じゃらん」等、メディアが注目し、取材依頼が来る話題性
⑨    道の駅にホテルが隣接

駅長を務める㈱阿波食の小川満大さんの「地域経済を活性化させるために地場産品を売る」意気込みが感じられる品揃えと、商品の魅力を伝える工夫がみられる道の駅でした。

データとして示されていませんでしたが、おそらく売上に占める地域内調達率が高いと思われます。町内と県内の利用者が多いとの事で、売上が観光客の増減に左右され難い道の駅の在り方は、本町の新たな道の駅にとっても有効な運営方法であると感じました。

 地域を活性化させる道の駅にとって重要なものは、優れた戦略を打ち出し、それを実行できる人材であると実感した視察でした。


【豊能町AIオンデマンド交通】


大阪府豊能町は人口18,174人。高齢化率(65歳以上)が49.59%で、観光産業はなく、農地と山地が多い東部地区と、大規模開発による市街地がある西地域(人口の77%が居住)と、農村環境と都市環境が共存した地域です。

[AIオンデマンド交通 ハニタス]

・予約に応じてシステムが生成したルートで運航。
・乗る時間と場所を自由に選べる
・予約制なので必ず座れる。


運行会社:地元のバス会社・タクシー会社と協力
配車時間:9:00~17:00
使用車両:ワンボックス車両(乗車定員8名)×3両(後日1台追加)
降車場所:115箇所(通常のバス停に加えて多数設置)
予約方法:スマホアプリ、電話


[無償実験]
令和5年2月1日~2月28日
運賃:無料
平均乗車人数:114人/日       
※車両不足で予約出来が取れない状況が多く発生したため27日より車両3台→4台に変更。

《無償実験事業費》
自環境整備 52,799千円(デジタル田園都市国家構想推進交付金)
運行面   6,317千円(大阪府の補助金)
運行面   7,589千円(町・交通事業者負担金)

[有償実験]
令和5年10月17日~令和6年2月19日 (126日間)
運賃:大人300円 こども障がい者100円
平均乗車人数:20人/日 ※データは10月17日~11月13日

《有償実験事業費》
共創モデル実証運行事業 38,205千円(国土交通省共創モデル実証プロジェクト)

使用目的未定 9,149千円(大阪AIオンデマンド交通モデル事業費補助金)
       6,150千円 (町・交通事業者負担金)

無償実験期間の平均乗車人数114人/日と比較して、有償実験期間の平均乗車人数が20人/日と大幅に落ち込んでいる事、また、有償実験期間の町・交通事業者負担金だけを見ても6,150千円の負担があり、運賃(売上)が1日約6千円、実験期間の126日の運賃収入合計が約75万6千円と考えると、継続運行に町の負担が大きいものになるのではと感じました。

ですが、公共交通は採算が合わなくとも住民にとって必要であれば税金を使って維持するべきものだと考えます。

豊野町にはAIオンデマンド交通の他に、要介護、要支援認定者、障がい者の外出支援をする軽自動車が2台あり、需要が高いとのことでした。

高齢化が進む余市町でも、公共交通よりもこのような外出支援をする車両の重要性が増す可能性が高いと考えます。

1日あたり2,144人の利用があり、町民から廃線を反対する声が高い鉄路も含めて、町民が必要とする移動手段の在り方を検討していく必要があると感じました。

[参考:余市循環線]
余市循環線(バス) 令和4年度4~9月事績
運賃     :200円 ※小児運賃あり
平均乗車人数 :40人/日  ※期間中の利用者数合計7,094人 
町負担金   :1,950千円 ※国補助金
バス事業者負担:0円
収入実績   :1,288千円

(余市町地域公共交通活性化協議会における地域公共交通確保維持改善事業の概要より)
 
 
 
[参考:余市~小樽 第3セクター鉄道運行2030年度収支試算]
運輸収入:234,000千円
営業経費:720,000千円(486,000千円赤字)
※初期投資額 4,540,000千円
(余市駅を存続する会資料より)

 
《社会資本整備総合交付金》
鉄道再構築事業を実施する場合にトンネル、橋、信号などの整備、車両購入など、国から最大50%の補助を受けられる。


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