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連載記事(2014後)

著作権模擬裁判

(2014年11月 71号)

 私が授業で著作権の話をするとき,「○○はやっちゃいけない」ということは基本的に言いません。反対に「やっていいこと」を並べます。そのために,著作権法の条文を生徒と一緒に読みます。
 著作権法には「著作者は,その著作物を複製する権利を占有する」(第21条)と書いてあります。これが原理原則です。一方で,著作権法には例外規定も書いてあります。第30条から50条に「一定の条件の下に」利用者が利用・複製できる場合が示してあります。
 私が授業で著作権をやるときの中心は,その「例外規定」です。法律で「やっていい」と書いてあることは「遠慮せずに正々堂々とやれ」と私は言っています。もちろん,勝手に拡大解釈してはいけないのですが。
 そうすると生徒が私に聞いてくるんですね。「○○のようなことはしていいんですか?」,「どこまでならやっていいんですか?」と。そういうとき,私は次のように答えます。「そんなことはオレに聞くな。違法か合法かを判断するのは裁判所の仕事だ。オレの仕事じゃない」と。それでもしつこく聞いてきたら,「裁判で勝つ自信があるならやればいい,負けるかもしれないと思うならやらない方がいい」と。
 そして定期テストでは,次のような問題を出します。

〇 授業中に示した「著作権法の条文」は,Webサイトから私が勝手に複製(コピー)したものです。さて,その件で私が「著作権の侵害だ!」と訴えられたと想定します。そこで,みなさんには,弁護士になったつもりで,私を弁護してもらいたい。
 では,ここで【問題】です。著作権法の考え方にもとづいて,私がシロだと考える根拠を3つ挙げなさい。

 では,<解説・解答>です。根拠としては,

・ 法律には著作権は無い。    (著作権法13条)
・ 学校で授業中に先生が使った。  ( 〃 35条)
・ 説明のために一部を引用した。  ( 〃 32条)
・ 法律制定から50年以上経過した。 ( 〃 51条)

などを挙げればいいでしょう。
 「誤答例」も示しましょう。1つか2つまでは挙げられても,根拠を3つ挙げるのはけっこうきついようで,3つ目あたりには苦し紛れにひねり出したような文章が現れて,採点する側も楽しめます。

・ 営利目的でないからシロ。
    → 営利目的か否かは関係ないから ×
・ omori先生が違法行為をするはずがない。
    → そう思ってくれるのはうれしいが ×
・ 先生はクロ。牢屋にぶちこんだ方がいい。
    → シロの説明になっていないから ×
・ 先生には責任能力がないからシロ。精神鑑定にまわせ。
    → 著作権の考え方に基づいていないから ×

 3つ書かせるのがミソです。

エクセルで九九の表を作る

(2014年12月 72号)

○ エクセルの1行目のセルに1つずつ,左から順に1,2,3,…,9が並んでいます。
 同じくA列のセルにも1つずつ,上から順に1,2,3,…,9が並んでいます。
 さて,セルB2に関数式を入力して,そこからセルJ2まで右方向にコピーして,さらにセルJ10まで下方向にコピーして,掛け算の九九の表を作りたい。
 セルB2にどんな関数式を入れればいいでしょうか?

       A列目
        ↓
  1行目→   1  2  3  …  9
        1 ?  →  →  →
        2            ↓
        3            ↓
             …
        9            ↓

くれぐれも,関数式を直接入力するのは,セルB2だけです。
他のセルの関数式は,セルB2の式をコピーして仕上げてください。
次の[選択肢]ア~タから1つ選んでください。

[選択肢]  ア =A2*B1  イ =A2*B$1  ウ =A2*$B1
  エ =A2*$B$1   オ =A$2*B1   カ =A$2*B$1
  キ =A$2*$B1   ク =A$2*$B$1   ケ =$A2*B1
  コ =$A2*B$1   サ =$A2*$B1   シ =$A2*$B$1
  ス =$A$2*B1   セ =$A$2*B$1   ソ =$A$2*$B1
  タ =$A$2*$B$1

◇     ◇     ◇

 エクセル関数の「相対参照・絶対参照」の問題です。エクセルの実習課題としてもいけます。
 $マークをどこにつけるかがポイントです。候補は4か所あって,それらの場所に$マークをつけてもつけなくてもセルB2の表示は同じですが,右方向・下方向にコピーすると,コピーした先のセルでは$マークがあるかないかで表示が変わってきます。
 正解は「コ」です。右方向・下方向にコピーして一発で正しく九九の表ができるのは,これだけです。ついでながら,次のような問題を付け加えることもできます。

○ セルK2に関数式「= SUM(B$2:J2)」を入力すると,セルK2の値は(チ)となる。
 次に,セルK2からK10まで下方向にコピーすると,セルK10の値は(ツ)となる。

 これは「関数式の意味が分かっているか,関数式をコピーしたときの式の変化が分かるか」を問う問題です。値を求めるには,まともに計算してもいいですが,工夫するとより簡単に計算できます。答えは,

  チ → 1+2+3+…+9=45
  ツ → (1+2+3+…+9)(1+2+3+…+9)=45×45=2025

となります。

私はあなたをiしています(補)

(ボツ記事)

次の文章を読んで、下の問いに答えなさい。

リアルな世界にあいは無い。とてもシンプルな世界だ。
でも、そこにあいを持ち込むと、とたんに話がややこしくなる。
虚数(Imaginary number)とは、その名の通り「ウソの数」。 

その頭文字をとって、虚数単位をiで表す。 i² =[ア]となる。
でも、こんなことは実際にはあり得ない。
そう、iは実数(Real number)ではない。
実数と虚数をあわせて、複素数(Complex number)という。 

君たちはこれまで、あいのないリアルな世界で生きてきた。
けれども君たちは、あいを知った。
そして、世界の見え方が変わるだろう。それがあいの力である。
あいはウソっぱち
なんだけれども、そこから新しい世界が広がる。
あいはコンプレックスの中にある。

(1)  文中の[ア]に適当な数を入れなさい。

(2)  上で出てきた次の3つの文を表すのに最も適切な数学記号を下の[選択肢]から選びなさい。
   A リアルな世界にあいは無い
   B あいなんてウソっぱちだ
   C あいはコンプレックスの中にある
[選択肢] イ i ∊ R  ウ i ∉ R  エ i ∊ I
      オ i ∉ I  カ i ∊ C  キ i ∉ C
  ただし、R は実数の集合、I は虚数の集合、C は複素数の集合を表す。


 変な問題だとお思いでしょうが、《答え》はこれ(↓)しかないでしょう。

(1) ア -1
(2) A   B   C 

◇      ◇      ◇

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