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世の中の増減は率で変わる

【問】文中の括弧〔ア,イ,ウ,エ〕から適当な方を選び、括弧〔オ,カ〕に適当な式を入れて、文章を完成させてください。

 世の中の増減は率で変わる。人口増加率、経済成長率、金利 … 。率で変わるものは指数関数的に変わる。直線的に変わるわけではない。なお、現実には変化率は一定ではない。コロコロ変わる。
 指数関数的に変わるものは、あっという間にべらぼうに大きくなる。もしくはやけに細かくなる。普通のグラフに収まらなくなる。そこで対数をとる。そうすると適度な大きさになる。しかも直線的な動きになる。つまり分かりやすくなる。扱いやすくなる。
 将来ビジネスを始めたと考えよう。伸び率が一定とは限らないが、起業して最初の r 年で売上が(基準の)R 倍になり … (1) 、続く s 年で売上がさらに S 倍になった … (2) としよう。このとき、起業して最初の〔ア:r+s , rs〕年で売上が〔イ:R+S , RS〕倍になったことになる … (3) 。
 以上の話は伸び率が一定であってもなくても言えることだが、伸び率が一定 a の場合には (1) , (2) , (3) はいずれも指数関数もしくは対数関数で表される。
 (1) の R を a と r で表すと R=aʳ となり、(2) の s を a と S で表すと s=logₐS となる。そしてこの場合、年数は売上の〔ウ:指数 , 対数〕関数であり、売上は年数の〔エ:指数 , 対数〕関数であると言える。
 また (3) を指数関数で表すと RS=aʳ⁺ˢ となり、対数関数で表すと r+s=logₐRS となるが、年数の関係を r , s を使わずに量 R , S で表すと〔 オ 〕となり、量の関係を R , S を使わずに年数 r , s で表すと〔 カ 〕となる。


 この問題を実際に高校3年の定期試験で出したところ、[ア]〜[エ]はよく出来ていました、

《答》 ア:r+s   イ:RS   ウ:対数   エ:指数

 けれども、最後の2つ[オ]と[カ]がダメでしたね。説明しましょう。
  ①: 最初の r 年で R 倍 ⇔ R=aʳ … ①’ ⇔ r=logₐR … ①’’

  ②:   続く  s 年で S 倍 ⇔ S=aˢ … ②’ ⇔ s=logₐS … ②’’

  ③: (r+s) 年で RS 倍 ⇔ RS=aʳ⁺ˢ … ③’ ⇔ r+s=logₐRS … ③’’
ここまでは問題文にほぼ書いてあります。

 さて、③を「r , s を使わずに R , S で表す」ためには、③’’ に ①’’ と ②’’ を代入すれば、
ご存知の公式「logₐR+logₐS=logₐRS」が出てきます。このとき両辺は「時間」(年数)を表します。( logₐR は「量がR倍になるのに要する時間」です)
 また、③を「R , S を使わずに r , s で表す」ためには、③’ に ①’ と ②’ を代入すれば、
ご存知の公式「aʳaˢ=aʳ⁺ˢ」が出てきます。このとき両辺は「量」(何倍か)を表します。以上から、

   《答》 オ:logₐR+logₐS=logₐRS   カ:aʳaˢ=aʳ⁺ˢ

です。どちらも数学Ⅱの教科書に出てくる基本的な公式・法則です。

 [カ]について「そりゃそうだ」としっくりくる人が多いでしょう。
 さて、[オ]はどうでしょうか。実は[オ]と[カ]は全く同じもの、単なる書き換えなんですね。ですから[カ]が「当然だ」と思えるなら、[オ]も「そりゃそうだ、当然だ」と思いたいものです。
 それはそうと、問題文を読めば、《答え》上のように決まります。他にはあり得ません。

◇     ◇     ◇

 ついでながら、もう1つの指数法則 (aʳ)ᵗ=aʳᵗ … ④ についても、これを機械的に対数に書き換えることで別の対数公式(法則)を導くことができます。④ の右肩部分 rt を指数部分と読み取って、rt=logₐ(aʳ)ᵗ 。次に r を R で置き換えれば、公式 logₐRᵗ=t logₐR の完成です。

 さらについでながら、対数を使う上であと1つ知っておきたい公式は、底変換公式です。等式 R=aʳ(⇔ r=logₐR)の両辺の底を x とする対数をとると、
  logₓR=logₓaʳ=r logₓa ⇔ r=logₓR/logₓa ⇔ logₐR=logₓR/logₓa
が導かれます。最後の式を見ると、左辺の底 a だったものが、右辺の底 x の対数に書き換えられました。
 以上まとめると、

 《指数》     《対数》
  R=aʳ  ⇔ r=logₐR=logₓR/logₓa
   aʳaˢ=aʳ⁺ˢ ⇔ logₐR+logₐS=logₐRS
 (aʳ)ᵗ=aʳᵗ ⇔  logₐRᵗ=t logₐR

となります。指数・対数で知っておくべき公式は以上ですべてです。指数が使えるなら、対数に慣れればきっと大丈夫です。

◇      ◇      ◇

指数で変わるものを対数で見る 〜 
▷ 指数の拡張    ▷ 世の中の増減は率で変わる
▷ 原子から宇宙までを1つの数直線に表してみよう
▷ eってなに?    ▷ e^iπ+1=0 を腑に落とす

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