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ミャンマーのエネルギー事情

ミャンマーの小型水力発電

 ミャンマーでトレッキング中に、小型の水力発電システムを見つけました(2007年冬)。昼の間に川の水をせき止めて水を溜め、夜間の数時間にタービンに流して発電して、60戸の家に送電します。

インレー湖

写真左:手前が池、その向こう側に水を流す。    
    昼間だったので、板で水をせき止めています。
    向こうの竹で囲った中に発電機があります。 
写真右:竹のスキマから発電機を覗き込みました。  

 これはつまり、夜間の明かりとりのためのもの。古くて小さい設備でしたが、それだけのことが出来るんですね。
 考えてみると、これはなかなか合理的なやり方です。風力発電と比べてみます。
 位置エネルギー mgh や 運動エネルギー (1/2)mv2 を電気エネルギーに変えるには、重さ m が必要です。風(空気)と比べると水の方が圧倒的に重いですから、この点で水力が 1 point ゲット。
 また、風は溜めることができませんが、水は写真のように溜めることができます。水量を調整することで、安定した発電ができるわけです。ここで水力が 2 point ゲット。
 さらに、風力発電システムや太陽光発電システムよりこちらの方が安価でメンテナンスも簡単でしょう。初期投資と運転コストがかさむようではメリットはありません。ここで水力が 3 point ゲット。

 このシステムは、大量のエネルギーを要する熱源や常に電気を必要とする冷蔵庫には向かないでしょう。慎ましい使い方ですが、これこそが正しい自然エネルギーの使い方といえるのではないでしょうか。
 ボクは思うのです。確かに風力発電や太陽光発電も有効に使えるかもしれません。けれども、写真のものと同じ程度かあるいはもっと慎ましいものになるんじゃないでしょうか。風力や太陽光で石油と同じことを目指そうとすること自体が、間違っているのではないでしょうか。
 ついでながら ・・・ ミャンマー旅行中に1度だけソーラーパネルと風車を見ました。案の定、日本人がボランティアで作ったものでした。看板には「JAさが」と書いてありました。

ミャンマーのバイオ燃料

バイオ燃料

 人間が使うエネルギーのかなりの部分は「熱源」として使われています。一般的に熱は、エネルギーの質は低く、量は多く必要です。一方、電気は質の高いエネルギーです。電気を熱源として使うことは、質を大きく落として使うことになりますから、非常にムダな使い方だといえます。また貴重な化石燃料を熱源として利用することもまた、非常にもったいない使い方だといえるでしょう。
 ミャンマーの田舎では熱源のほぼ100%を植物で賄っています。薪が中心で、米のワラなども使われます。各家庭で薪を拾い集め、常に一定量を置いています。写真1は民家の2階にある台所ですが、燃料は薪です。地方都市でも、熱源のおそらく90%くらいは植物燃料でしょう。屋台など屋外ではやっぱり薪を使います。町中のレストランなどでは煙の出ない木炭が中心です。高級ホテルや金持ちは、プロパンガスも使うようです。写真2はホテルでの焚き火。客と従業員がいっしょになって温まりました。ホテルには暖房設備はありません。南国ですから要らないといえば要らないのですが、冬の間の朝晩寒い時にはこうして暖をとります。写真3はインレー湖近くのニャウンシュエのレストラン。燃料は木炭でした。
 写真4はトレッキング中に撮ったものです。ガイドはそれを「バイオ・ディーゼル」と呼んでいました。ガイドの話によると、ミャンマー政府主導のプロジェクトで、この植物から自動車燃料を作っています。その木の実の大きさはコーヒー豆くらいで、1kgで日本円にして30円ほどで買い取ってくれるそうです。ここが熱帯雨林地域であることと人件費が安いことが、大きなアドバンテージなのでしょう。
 けれども、実際にこれが経済的に成り立つのかどうか、他の場所でもできるのかどうなのかはわかりません。

 バイオ・ディーゼルはちょっと脇に置くとしましょう。ミャンマーの人々にとって、電気はまず第1に明かりとりのためのものです。熱源としては多くの場合、植物を使っています。それは彼らが貧しいからだともいえます。けれどもそれが、効率的で合理的なエネルギーの使い方だともいえます。
 「再生可能エネルギー」あるいは「植物の利用」ということが日本でも盛んに言われています。でもその議論は、発電のためのものがほとんどです。ハイテクを駆使した複雑なシステムばかりです。ボクたちも「植物を熱源として利用する」ことをもっと積極的に考えてみるべきではないでしょうか。(2007年冬)

ミャンマーの油田

 ミャンマーがイギリスの植民地だった頃、イギリスはミャンマーの何カ所かで石油を掘っていた。第二次世界大戦で日本軍がミャンマーに攻め入って、一時は日本が油田を押さえた。戦争で壊れた油田施設を日本軍は修復して、日本軍もなにがしかの石油を掘ったらしい。そして日本は戦争に敗れ、ミャンマーは独立した。
 2010年冬、ミャンマーに行く前にネットで調べてみたら、古い資料に「エナンジョン」という名前で出ていた。ミャンマーの地図を調べたら「イェナンジャウン」という町があり、そこで今でも石油を掘っているらしかった。観光地バガンから車で片道5時間くらいの距離かなぁとボクは見積もった。バガンから近いといえば近い。でも遠い。行くべきか行かざるべきか、そうボクは考えていた。
 そしてバガンで聞いたところ、「イェナンジャウンまで行かなくても、バガンから片道1時間ほどのところにあるチョークという町でも石油を掘ってるよ」という話。というわけで、タクシーをチャーターして行ってみた。物見遊山のおじさんの趣味なのである。

 行ってみて、町のあちこちで石油発掘の機械が動いていた。ところが、どこもかしこも立ち入り禁止なのである。いたるところに看板があって、ミャンマー語だからさっぱり読めなかったが、警告しているらしかった。タクシーの運転手は「道路から写真を撮るだけにしろ」、「それ以上行ったら、警察に捕まる」と言う。
 確かについ何カ月か前にも日本人ジャーナリストが拘束されたというニュースがあったばかりだし、運転手さんに迷惑をかけてもいけないので、道路わきにあったものを写真に撮るだけで我慢した。

油田

 以下は、運転手さんの話である。「ここで掘った石油は中国に輸出している。発電もしているが、電力は全部ヤンゴンに送っている」。発電所がどこにあるのかは分からなかったが、高電圧の送電線は確かにヤンゴンの方角に向かっていた。
 続いて、ボクが泊ったホテルのオーナーの話である。「どこかにもっと大きな油田があるのだろうけれど、ミャンマー政府は外国企業が油田探査するのを嫌がっている」。実際ボクが見た感じでは、目の前の油井からそれほどの量が採れているようには思えなかった。
 以上、運転手さんもホテルのオーナーもボクもみんな片言英語だし、専門家でもないので、責任は持ちません。

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〜 アジアのエネルギー事情
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