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円周率とは?

 何千年も前から人は「円周率の大きさをより精度良く求める」ことに精を出してきました。そしてその動きは今も続いています。
 時を経て、円周率がいろんな場面に立ち現れることを人は知り、そして世界に潜む円周率を探し出し、炙り出すことに熱を上げるようになりました。
 3月14日に結婚して「円周率と同じように、私たちの愛は永遠に続く」と言ってるカップルがいました。私は「πラジアン=180°、つまり半周分だ」と言ってやりました。
 すなわち円周率は、我々の歴史であり、友であり、人生の指針でもあるのです。

円周率とは?

【1】 円周率とはなんでしょうか? 定義してください。
   円周率とは ______________________________ のことです。

【2】(A)円周率は _____ から始まります。 (← 1ケタの数字を入れる)
  (B)円周率は(割り切れる / 割り切れない)小数です。(← 選ぶ)
  (C)円の面積は ______________ で求められます。(← 式を入れる)

【3】上の(A),(B),(C)から1つ選んで、
   なぜそう言えるのかを説明してください。

 「知ってる」ことと「分かってる」ことと「説明できる」ことはそれぞれ別物。みんなが当然知ってる円周率。使いこなしている円周率。でも、実はよくわかってない。まして他人に説明できない。そういうことを実感させるのが狙いです。

《解答例 & 解説》
【1】 円周率とは「 円の直径に対する円周の長さの比」  のことです。
          (or 直径1の円の周の長さ

(誤答例)「円周率とは 3.14・・・のことです」
    → 「・・・」 ってナンだ?
     そんなアバウトなもんじゃ定義とは言えんでしょ。

    「円周率とは 3.14159 の近似値 のことです」
    → それを言うなら逆だ。
     「3.14159 は円周率の近似値である」なら正しいが。

    「円周率とは π のことです」
    →「円周率を π で表す」ということなら意味は通るが、
     円周率の説明になってない。

【2】(A) 円周率は 3 から始まります。
  (B) 円周率は 割り切れない  小数です。
  (C) 円の面積は 半径×半径×円周率 で求められます。
 これは簡単ですね。全員正解です。生徒たちは「なにをいまさら ・・・」と思ったことでしょう。

ところが【2】を説明しようとすると、出来そうなのに出来ないんですね。
【3】 1つずつ見ていきましょう。
 まず(B)から。
白状しますが、私はなぜだか知りません。だから、当然説明できません。
これに答えるのは、高校数学のレベルを超えている。中高生には無理だ。
というわけで、(B)を選んだら、もう絶望的。(A)か(C)を選ぼう。

 次に(C)。
小学校での説明は、下のようなもの。きちんとやるのは、高校「数学Ⅲ」。

円の面積

 最後に(A)。
これなら中学生にも説明できます。ですから、選ぶなら、これがおススメ。
とはいえ、なかなか思いつかないでしょうけれど。では、証明いきます。

直径 1 の円の周の長さは π 。
直径 1 の円に内接する正六角形の周の長さは 3 。
直径 1 の円に外接する正方形の周の長さは 4 。
下図より、3<π<4 である。よって、円周率は 「3」 から始まる。//

円周率

ところで、「3」の次の数(小数第1位の数)が何か知っていますか?
あっ、ご存知ですか。それは素晴らしい。では、説明してください。(←無理でしょうけど)

東大の過去問から

【問題】 円周率が 3.05 より大きいことを証明せよ。
           (2003年東大入試 前期理系にて出題)

 高校範囲の余弦定理を使ったり、2重根号を外したりして解く方法がありますが、以下では中学範囲だけで解いてみます。

《解1》 半径 1 の円に内接する正8角形の1辺の長さを c とする。

正八角形

上図より c^2 = (1/√2)^2+(1-1/√2)^2
       = 2-√2 > 2-1.415 = 0.585
(∵ √2<1.415 ← これが怪しいというなら、両辺を2乗せよ)
よって、c > √0.585 > 0.764 (← 両辺を2乗すれば確認できる)
一方、上図において「円周の長さ > 正8角形の周の長さ」だから 
          2π > 8c
以上から、 π > 4c > 3.056 > 3.05

《解2》 半径 1 の円に内接する 正12角形 の1辺の長さを c とする。

正12角形

上図より c^2 = (1/2)^2+(1-√3/2)^2
       = 2-√3 > 2-1.733 = 0.267
  よって、c > √0.267 > 0.516
一方、上図において「円周の長さ > 正12角形の周の長さ」だから 
        2π > 12c
  以上から、 π > 6c > 3.096 > 3.05

《解3》 要は多角形の辺の数が多くなれば良いわけで、必ずしも正多角形である必要はない。多分、次のやり方が、計算は最も楽。

円周率

上図のように原点中心 , 半径5の円上に
    A(0 , 5) , B(3 , 4) , C(4 , 3) , D(5 , 0) をとる。
 第 2 , 3 , 4 象限にも同じように点をとって、十二角形を考える。
 AB=CD=√10 , BC=√2 だから 十二角形の周の長さは 4(2√10+√2)。
 円周の長さは 10π である。
 また、√10>3.16 , √2>1.41 が成り立つ。
以上から、10π>4(2√10+√2)>4×(2×3.16+1.41) =30.92>30.5
 よって、π>3.05 が成り立つ。

 ところで、この東大の【問題】「π>3.05 を示せ」は、先に挙げた中学生向きの【問題】「円周率は __ から始まる」に比べてほんの少ししか精度が上がっていないんですね。しかも上限が不問なわけですから、「円周率は __ から始まる」の方がよほど高級だと私は思うのですが、いかがでしょうか。

◇      ◇      ◇

人はなぜ円周率に熱くなるのか?
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