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いろいろ(2021中)

恐竜が絶滅したのは紀元前何世紀ごろの出来事か?

(2021年5月 149号)

  ◇ 恐竜が絶滅したのは紀元前何世紀ごろの出来事か?
  ◇ 人口がアボガドロ数より多い国をすべて挙げよ。
  ◇ 太陽から最も近い恒星までジェット機で行くと何ヶ月かかるか?

 一つずつ見ていきましょう。


◇ 恐竜が絶滅したのは紀元前何世紀ごろの出来事か?
 1世紀は100年です。だいぶ長いですね。一方、恐竜が絶滅したのもだいぶ前。さて、恐竜が絶滅したのは紀元前何世紀ごろの出来事でしょうか?
 wikipedia によると、恐竜が絶滅したのは6600万年前。1世紀=100年で割ると、66万。従って、恐竜が絶滅したのは紀元前66万世紀です。ふぇ〜。

◇ 人口がアボガドロ数より多い国をすべて挙げよ
 人口が最も多いのは中国で14億人以上、次がインドで13億人以上、どちらも日本の10倍以上です。さて、人口がアボガドロ数より多い国は世界に何ヵ国あるでしょうか?
 アボガドロ数とは物質量1モルに含まれる粒子の個数で、その数は 6×10^23(10の23乗)です。高校の化学で出てくる定数です。ところで、中国の人口14億=1.4×10^9 ですから、アボガドロ数と比べると、だいぶ小さいですね。10^14 分の1以下、100兆分の1以下です。つまり、人口がアボガドロ数より多い国はありません。あるわけない。

◇ 太陽から最も近い恒星までジェット機で行くと何ヶ月かかるか?
 ジェット機の最高速度は時速1,000kmほど。この速さで太陽から最も近い恒星まで行くと、さて何ヶ月くらいかかるでしょうか。
 太陽から最も近い恒星はケンタウルス座α星、4.3光年の距離です。地球1周は4万kmで、ジェット機では40時間かかりますが、光は1秒間に地球を7周半=30万km進みますから、・・・えぇっと、速さの比は 1:100万 だから光が4.3年かかる距離をジェット機で飛ぶと430万年=5000万ヶ月かかります。ふ〜っ。

 以上、ありえないくらい大きな数のようにも思えますが、いや、これくらいの大きな数に私たちは日常的に接しているんです。コンピュータの世界です。キロは千=10の3乗、メガは百万=10の6乗、ギガは十億=10の9乗、テラは一兆=10の12乗…。ですから、これくらいの大きな数に親しんでおくことは案外と必要なことなのかもしれませんよ。

サイコロでばらつき具合を体感する

(2021年6月 150号)

 まず、エクセルの乱数を使ってみましょう。乱数がどんなものかは、理屈よりも何よりも、使ってみるのが一番です。エクセルの任意のセルに関数
  ○ = RAND ( )
を入力すれば0と1の間の小数が表示されます。そしてその式を右方向・下方向にコピーすれば0と1の間の小数が不規則にかつバランス良く現れることが確認できるでしょう。それが乱数です。
 次に、サイコロの目のモデル化を考えましょう。多少長くなりますが、
  ○ = ROUNDUP (RAND ( )*6 , 0) … ①
これでいけます。内側から見ていきましょう。「RAND ( )」で0~1の間の乱数を発生させて、それを「*6」で6倍しています。そうすると、0~6の間の乱数になりますね。その数を ROUNDUP 関数を使って「小数点以下を切り上げ」ています。これで1から6までの自然数になります。これでサイコロの目のモデル化、完成です。

 さて、モデル化が出来たところで、ここからシミュレーションに進みます。「エクセル上でサイコロを100回、1,000回、10,000回投げて、1~6の目が出た回数をカウントして、その回数をグラフ化」してみましょう。
 上の関数式①をセルA1に入力して下方向にコピーすれば、コピーした数だけサイコロを振ったのと同じことになります。それを COUNTIF 関数で集計しましょう。A列から「1」の個数を数える関数は、
  ○ = COUNTIF (A:A , 1)
です。同じように2〜6の目が出た回数を数えてグラフを描いてみましょう。ここメルマガ上でそのグラフをお見せすることはできませんが、皆さんの方でもぜひやってみてください。(私がやったときのグラフはこちら → https://note.com/omori55/n/n678541ee4c84 をどうぞ)
 やってみると、100回投げた場合はグラフはデコボコになって、再計算するたびにグラフはガタガタ大きく動きます。1,000回投げるとだいぶ滑らかになって、10,000回投げるとグラフはほぼ一直線状になって、再計算してもほとんど動かなくなります。
 この感覚、大事です。その実習を通して、テレビなどで時々見かける「新橋駅前のサラリーマン100人に聞きました」「原宿の女子高生100人に聞きました」系のアンケートにどの程度の信頼性があるのか(だいぶ誤差があるでしょう)。「5人がダイエットに挑戦して、4人に効果が出ました」系の実験結果を信用してよいのか(統計的にはほとんど何の意味もありません)。そんなことを感じ取ってくれるでしょう。
 また、先の例で1000回でほぼフラットになったということは、それ以上サンプルを集めても精度はほとんど変わらないということです。現実にサンプル調査をする場合、人手・経費・時間がかかりますから、どれくらいのサンプル数を集めればよいのか、妥当な線を判断したいところです。
 サイコロを実際に100回、1000回、10000回と投げてみることは大事なことです。とはいえ、現物のサイコロをそれだけの回数投げることは現実的ではありません。そこでエクセルの出番です。これもシミュレーション・ソフトとしてのエクセルの使い方の1つです。

感染防止しながらの文化祭、どうやるか?

(2021年7月 151号)

 秋の文化祭には例年たくさんの人がやってきます。けれどもある感染症が広がっている状況では、例年通りのやり方で実施できるとは限りません。
 人数制限をするのかしないのか、何を売るのか売らないのか、オンライン配信するのかしないのか等々考えるべきことはたくさんあります。それらは制約でもありますが、新しいことを始めるチャンスかもしれません。
 そして、どのやり方でやるにせよ、そろそろやり方を決めなければなりません。そうでなければ、準備が間に合わないことになりかねないからです。
 あなたは生徒会の文化祭実行委員会の一員で、具体的な実施方法については実行委員会に一任されているものとします。さて、この場面で、あなたならどのように判断しますか? 三者三様、十人十色の案を出してください。


 ここで話は突然変わって、「学力の3要素」について。文部科学省から新しい「学力の3要素」なるものが示されて、2021年から始まった「大学入試改革」はその線に沿って進められています。
   ① 知識、技能
   ② 思考力、判断力、表現力
   ③ 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度
 ①の「知識・技能」を問う問題とは、典型的には従来型の「答えが1つに決まる」問題のことでしょうけれども、上の問題がそれに該当するかというと、条件設定があいまいで「正しい答え」が出ませんから、「出題ミス」ということになるでしょう。
 でも、上の問題を②の「思考力・判断力・表現力」を養う問題、あるいは③の「主体性・多様性・協働性」を育む問題と受け取ると、問題として成立しそうですね。
 さて、私は上の問題を③「主体性・多様性・協働性」を育むための問題と捉えたいのです。その方向性を示すものが「三者三様、十人十色」の記述です。
 というのは、上の問題を②「思考力・判断力・表現力」を養う問題と捉えると、「どっちが良いか、より優れているか」を競うようなことになったり、相手の意見を聞かないことになるような気がするからです。
 この問題の大事なところは、まずいろんな考え・意見・発想を出し合うこと。自分一人で出てくるものは数知れていますから、より多く出すためにはみんなの力が必要です。まず他人の話をしっかり聞くこと、その前にみんなが発言しやすい空気を作ること、その場に「正誤、優劣、勝ち負け」は要らないのです。
 先ほどの問題、最終的にはやり方を「決める」のですが、それはもうしばらく先のことです。その前にいろんな意見を出すことが大事で、たくさん出れば自然と「決まってくる」ものだろうと思うのです。ですから、慌てず騒がず、そして「急いで決めよう」と思わずに、とにかくみんなにしゃべってもらいましょう。そのための【問題】です。


 ここでまたまた話が変わって、②「思考力・判断力・表現力」を養う問題とはどのような問題を想定すれば良いでしょうか。
 私にとってのモデルはチコちゃん(NHK「チコちゃんに叱られる!」)です。「自分なりに問いをたて、自分なりに考えて、自分なりの答えを出す」、そんな形が私の中ではぴったり当てはまるのです。
 でもチコちゃんは②「思考力・判断力・表現力」にはぴったりなんだけれども、③「主体性・多様性・協働性」にはそぐわない。それがくっきり分かるセリフが「ボーっと生きてんじゃねーよ」なんですね。
 というわけで、②「思考力・判断力・表現力」にはチコちゃん、③「主体性・多様性・協働性」には上の【問題】が向いていると私は思うわけです。
 では、上の【問題】について、グループでいろんな考え・意見・発想を出してみて、そしてお互いにしっかり聞きましょう。「ただ1つの正しい答」、そんなものはありません。「どっちが良いか」、そんなものも要りません。

信用創造という名の錬金術

(2021年8月 152号)

 みんなのやる気もあるしビジネス・チャンスもあるけれども、お金だけが無い町があります。その町に銀行はありますが、残念ながら預金はゼロです。預金さえあれば銀行はお金を貸し出せて、町にお金が回り始めます。ただし、銀行が貸し出せるのは、預金総額の90%までです。
 そんな町の銀行にAさんが100万円預金したとしましょう。そうすると銀行は90万円をBさんに貸します。Bさんが90万円分の資材をCさんから購入して、Cさんは売って得た代金90万円を銀行に預けたとしましょう。そうすると銀行はその90%、すなわち81万円を新たに貸し出すことができます。
 話はまだまだ続きます。銀行が誰かに81万円を貸し出せば、そのお金はやがて誰かが銀行に預けることになります。そうなると銀行はさらにその90%すなわち72万9千円を別の誰かに貸し出します。
 実際には貸し出せる上限額を1人に貸し出すとは限りません。何人かに分けて貸し出す場合もあるでしょうけれど、需要が多ければ最終的には上限額の全額が貸し出されることになるでしょう。
 また、現実には売って得たお金を全額預金するとも限りません。すぐに投資・消費することもあるでしょう。けれども中期的に見れば、お金は市中を回りながら、いずれかのタイミングで銀行に戻ってくると考えられるでしょう。
 そう考えると、お金は銀行を経由しながら市中をぐるぐる回る間に、90%の90%の90%の・・・とだんだんと増えていくのです。
 さて、ここで突然ですが、次の式を展開してください。(以下、a^bは「aのb乗」を表します)
  ○ (1−r)(1+r+r^2+…+r^(n−1)) =[ア] (← rとnの式になりますね)
ここで0<r<1としましょう。そこで両辺を1−rで割りましょう。
ところで、0<r<1のとき r^n はどんどん小さくなって0に近づきますね。ということは、nを無限に大きくすると、
  ○ 1+r+r^2+…+r^n+… =[イ] (← rだけの式です)
となるわけです。
 はい、準備が整いました。では、ここで【問題】です。
○ 銀行が預金残高の90%を貸し出し続ける場合、銀行の預金総額は初めにAさんが預けた金額の何倍になるでしょうか?


 空欄[ア]と[イ]は高校数学で言うと数列の問題ですが、上のような【問題】の出し方もアリだと思うんですよ。つまり「公式を知らなかったらお手上げ」の形ばかりでなくて、問題に答えながら回答者が「なるほど、そういうことかっ!」と理解してくれるのも良いと思うのです。
 最初の空欄[ア:1−r^n]は機械的に展開すれば出て来ます。
 続いて問題文に書いてある通りに「両辺を1−rで割って、さらにr^n=0」とすれば空欄[イ:1/(1−r)]とわかります。もちろん公式を覚えていれば、そのまま書いてもOKです。
 そして最後に[イ]の式にr=0.9 を入れると・・・銀行の預金総額は初めにAさんが預けた金額の「10倍」になるんですね。
 これが「信用創造という名の錬金術」のカラクリです。いや、錬金術という言い方は不適切だったでしょうか。。。

◇      ◇      ◇

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