見出し画像

第1回国勢調査のポスターがおもしろい

 国勢調査は5年に1度、西暦年の末尾が0の年と5の年に行われます。去年2020年がその年に当たりますが、オンラインで回答できるようになったのはそのときが初めてです。私もその際に初めてオンラインで回答しました。
 日本で国勢調査が始まったのは1920年(大正9年)、今から100年前です。さて、100年前の国勢調査はどんなものだったでしょうか。それが分かる場所があります。総務省統計局の敷地内にある「統計資料館」です。東京都新宿区、実は私の勤務校のすぐ近くです。
 そこに展示してある「第1回国勢調査」のポスターがおもしろいのです。なにがおもしろいって、ほとんどの漢字に「ふりがなみたいなもの」が振ってあります。「みたいなもの」というのは、「読み方」を振っているのではなくて、「意味をわかりやすく」振っているのです。

統計資料館1

上左のポスターから見出しを除く全文をここに書き写してみましょう。

調査事項しらべることがら
一 氏名なまえ
二 世帯に於ける地位しょたいの あるじとの つづきがら
三 男女の別をとこか をんなか
四 出生うまれた年月日としつきひ
五 配偶の関係つれあひが あるかないか
六 職業しょくげふ職業上の地位その みぶん つとめがら
七 出生地うまれたところ
八 民籍別みんせきべつ また国籍別こくせきべつ

調査しらべ租税の賦課ぜいきん にも 犯罪つみびと捜索しらべ にも また戸籍寄留こせききりゅう にも 関係かんけい絶対ぜったい にありませんから 安心あんしん して あり のまヽを 申告しんこく して くだ さい

 漢字が読めない人への配慮だったのだろうと思いますが、漢語(=熟語=音読みの言葉)をなるべく使わずに、和語(=やまとことば=訓読みの言葉)を使っているのです。その点がとても新鮮に感じます。現代の感覚からいうと、むしろお洒落なんじゃないかと思います。
 もう1つ、右上のポスターから抜粋すると、

社会よのなか実況ありさま
現在そのとき状況ありさま
 正確にまちがはぬやうに
 提出するわたす

 もっといきましょう。

統計資料館2

 左上のポスターでは、

申告書用紙かくかみ
申告書かいた かみ

 ところで、そのポスターには、

まった けない ひと いて あげ ます

という優しい文面があります。かと思いきや、右上のポスターには、

調しら べに れては 国民こくみんはぢ です

という厳しい文面もあります。いろんな意味で時代を感じます。
 ところで、この記事では上の4つを「ポスター」と呼びましたが、当時はそんな言葉はおそらく無かっただろうと思うのですが、さて、当時は上のようなものを何て呼んでいたのでしょう?
 「広告」かなぁと思ったりしましたが、でも漢字が読めない人のために何て「ふりがなみたいなもの」を振るんだろうとまたまた気になって、そうすると「はりがみ」かなぁと思ったり。
 一般の見学者がほとんどいないような小さな施設ですが、意外と楽しめました。

※ 実験的に使えるようになった「ルビ機能」をさっそく使ってみました。

◇      ◇      ◇

漢字のたしなみ 〜 
▷ 漢字は筆ペンで書いて覚えよ        ┌ 顔    
▷ 漢字は自由だ      ▽ 漢字のでき方 ▷ ┼ 親・偽・愛
▷ 第1回国勢調査のポスターがおもしろい   └ 論う   

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?