成長の時代と成熟の時代
成長の時代と成熟の時代
全体として成長していた時代には、個々に見ればその度合いがいろいろであっても、ダメならダメなりに成長していた。人口が増え続け、物が行き渡る途上にあって、効率の悪い企業もそれなりに業績を伸ばし、ダメな社員もそれなりに出世した。ざっくり言えば、よほどの粗悪品でなければ作れば何でも売れた時代たっだわけで、放っておいても企業は拡大し、それに伴って若い社員がどんどん入ってきたわけだから、上の世代は自動的に出世したのである。これが成長の時代である。
さて、日本はすでに成熟の時代に入った。それは全体として横ばいの時代である。人口は減り始め、日本中に要るモノ要らないモノを含めて物があふれ、もはや全体として成長することは考えにくい、そんな時代である。そして、その中で企業業績や社員の能力に差があれば、ダメな企業や社員はマイナスに転じることになる。こうなると企業であれば倒産し、労働者なら失業する。みんながプラスを維持することはできないのだから、誰かがそうなるのは当然だ。
第二次世界大戦で世界はリセットされた
日本経済がこれまで来た道、この先続く道を考えるには、第2次世界大戦以降を振り返ってみればいい。第2次世界大戦で世界経済はリセットされたからである。
シンプルに語ろう。第2次世界大戦で日本は焼け野原になったが、ヨーロッパも同じだった。敗戦国ドイツ・イタリアだけでなく、戦勝国イギリスもフランスも戦場になって、生産基盤を失った。
そんな中で唯一、戦場にならなかったのがアメリカである。アメリカはむしろ軍需で儲けたクチであって、その点でもアメリカは世界で唯一の国だった。そして、それ以外の地域は後進国だった。つまり、第2次世界大戦後すぐの状況は、アメリカだけが先進国で、他は焼け野原と後進国ばかりだった。
ここが話のスタートラインである。日本の未来を考えるとき、太古の昔までさかのぼる必要はない。戦後から語り始めれば、未来が見える。
日本の高度成長は何だったのか?
第2次大戦後、アメリカが世界中にドルをばらまいて、日本がそれを回収してまわった。日本の高度成長を単純に言えば、そういうことになる。
通常の貿易において輸出と輸入はおよそバランスを保つものだが、世界通貨ドルだけは例外である。アメリカ以外の国はドルを手に入れないと世界貿易に参加できないから、最初はまずドルを貯め込まなければならない。アメリカ側から見れば、ドルが世界にあまねく広がっていくまでは、アメリカは輸入して消費する一方でも成り立つということだ。
戦後アメリカが最初にドルをばらまいたのは日本だった。復興のための資金は、アメリカがただドル紙幣を印刷すればよかった。日本のモノをアメリカが買うにあたっても、インフラ整備のための労働力を確保するにあたっても、アメリカは印刷したドル紙幣を日本に渡せばよかったのだ。そして、だんだんと日本はドルを蓄えて、世界貿易に参加できるようになった。
後進国が経済発展する過程は次の2点で説明できる。1つは、後進国から先進国に一方的に輸出してドルを蓄えること。この際、1次産品(食料や地下資源)を安く売ることになる。高い2次産品(工業製品)を買うためである。もう1つは、先進国がドルを持って乗り込んで、インフラを整備し、工場を立ち上げること。目的はもちろん、先進国が利益を上げるためである。この際、後進国の人件費は安く抑えられる。後進国はこの2つの搾取の構造に耐え、そのおこぼれにあずかりながら、少しずつ経済発展するのである。
日本がいち早く経済発展できた最大の理由は、アメリカによる占領にあった。他のどの地域よりも早く、大量のドルが流れてきたからである。でも日本はアメリカにはなれない。円が世界通貨でないからである。一方のアメリカは、他の後進国でもドルをばらまいた。そこで日本はどうしたかとうと、アメリカがばらまいたドルの回収に走ったのである。すなわち、工業製品を売りまくったのである。
こうして日本は高度成長を遂げ、先進国の仲間入りを果たした。
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〜 日本経済の見えない未来を見てみよう 〜
(1)成長の時代と成熟の時代
第二次世界大戦で世界はリセットされた
日本の高度成長は何だったのか?
(2)国の豊かさと個人の豊かさ
成長の終わりの始まり
交易条件が変わった
(3)資本主義は拡大することでなりたつ
なぜバブルは起きるのか?
これから先も日本が先頭を走るだろう
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