サンクトペテルブルグのパラドックス
こんなゲームがあります。
では、期待値を計算してみよう。
となる。これはお得なゲームだ。
「なぁんだ、掛け金が要るんだったら、やーめた」というのはまだ早い。もう一度、期待値計算してみよう。掛け金100万円を支払う場合に参加者がもらえる金額の期待値は、
である。無限大の利得に比べれば、100万円の損失なんて無いに等しい。
さて、あなたはこのゲームに参加しますか?
◇ ◇ ◇
計算は間違っていないのです。掛け金 100 万円どころか、掛け金 1 億円でも 1 兆円でも、参加者の期待値はやっぱり無限大になります。その意味では「掛け金がどんなに高くても、このゲームをやるべきだ」ということになります。計算上はそういうことです。
でも、現実にはどうでしょうか。掛け金 100 万円の場合、$${2^{20}}$$ ≒100万 です(→ 2のn乗のザックリ計算 )から、表が連続して 20 回出れば元が取れます。でも表が 20 回連続して出る確率は $${\frac{1}{2^{20}}}$$≒1/100万 ですから、まず間違いなく損するでしょう。
さて、この辺のことをどのように考えればいいのでしょうか? なぜこんな変なことが起きるのでしょうか? 実際のところ妥当な掛け金はいくらくらいなのでしょうか?
私は、それは「無限」のとらえ方によるのだと思うのです。無限というものが現実にあるのか、それとも無限とは概念上のもので実際は無いものなのか、そのとらえ方の違いなのではないでしょうか。
先ほどのゲームで、無限大の金額の賞金というのは現実的ではありませんよね。そこで、上限を設けてみましょう。現実にある宝くじの賞金の最高額に近い金額、また計算しやすくするために、仮に上限を「10億円」として期待値を計算してみましょう。そうすると、
となります。ということは、掛け金 16 円くらいで期待値トントンということになって、表が連続して 4 回出れば元が取れることになります。
なんだか急に現実的な数字になったように思いませんか。ちなみに、賞金の上限を 1 兆円とすると賞金の期待値は 20.5 円となり、賞金の上限を 1000 兆円とすると賞金の期待値は 25.5 円となります。
実際に「無限がある」と考えると「掛け金がどんなに高くても、このゲームに参加するべきだ」ということになり、「無限は無い」と考えて有限な値を想定すると途端に「掛け金は数十円程度が妥当」となるわけです。
さて、無限というものが現実にあるのか、それとも無限とは概念上のもので実際は無いものなのか、あなたはどう考えますか?
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〜 無限のいかがわしさ 〜
▷ サンクトペテルブルクのパラドックス
└ 慶大商学部の論文テストより
▷ 板をズラして積み上げる