フィリップ・ド・ブロカ「おかしなおかしな大冒険」

メキシコ人のバンドのトランペットの真正面のクロースアップから始まり、そのバンドが演奏する広場の電話ボックスから機密情報を本部に伝えるシークレットエージェントが電話ボックスごとヘリで吊り上げられてさらわれるというバカバカしさを受け入れられないとその時点で本作を観るのをやめた方がいい。
その後、連れ去られたエージェントは電話ボックスごと海に投げ入れられ、海底の檻に入れられたサメに襲われて死ぬという面倒臭い殺し方もバカげている!
「リオの男」の監督作品でジャン=ポール・ベルモンド主演以外の予備情報がなかったので、「カジノロワイヤル」のようなスパイコメディかと思いきや、ベルモンド扮するシークレットエージェントと敵とのビーチでの銃撃戦で、掃除機を持った女性(家政婦)が突然現れ、これもいきなりビーチに現れるドアをノックする。すると、こちらもベルモント扮する小説家がタイプライターを叩く部屋のショットにつがなる。
説明するのもバカバカしいが、それまでのシークレットエージェントのストーリーは、小説家が書いている小説のストーリーというオチだ。
ここらスパイ小説のストーリーに、小説家が執筆中の間の現実世界に現れる人物が登場して、メタストーリーが展開する。
執筆中の小説を出版する出版社社長が、小説家が好きになる同じアパートに住む女子大学生(小説家が好意を寄せている)を口説こうとすると、小説の中でシークレットエージェントが追う組織のボスとして現れ、銃で射殺される。
この射殺シーンは、ボスの手下も大勢銃で撃たれて死ぬのだが、その血の量がありえない量となり、銃撃されるボスのアジトの階段を川のように流れていく。
こんな傑作コメディで、ベルモント主演なのに日本で上映する権利がこれまでクリアになっておらず、日本では未公開だったそう。
後半は、このメタ構造に若干飽きてくるのと、小説家と女子大生の恋のくだりが面白くないのだが、必見のコメディ作品であることは間違いない。

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