ドン・シーゲル「殺し屋ネルソン」

ネルソン(この時は本名のギレス)が刑務所から保釈で出てくる冒頭で車で迎えに来たロッカの手下と話すショットに傑作と言われる所以を感じた。2人のクロースアップはなく、カメラはニルソンが立つ歩道の向かいの通りから2人をロングショットで捉えているだけのショットだが、凡庸な作品にはない緊張感があるショットだ。
刑務所から出た喜びを、ネンソンの保釈を手配したロッカが用意したホテルのバスタブで、風呂の中の泡を頭のてっぺんからかけたり、潜ったりして表わす演出は分かりやすくて良い。
ラストの撃たれたネルソンと泣き叫ぶスーが墓地に入って、ネルソンが墓石にもたれこんでスーに自分の銃を差し出してとどめを刺すように頼む。スーはできないと言う。しかし、ネルソンが彼らの最後の銀行強盗の逃避行の途中で出会った鳥撃ちに森に来ていた 2人の兄弟にマシンガンを向けて撃とうとした時本当は2人を撃つつもりだったとスーに言う。その言葉を聞いて、スーはネルソンを撃つ。
スーはネルソンが兄弟を撃つつもりだったのかとネルソンに尋ねたことがあり、その時スーの問い詰めるような顔を見て、ネルソンは殺意を否定した。
撃たれたネルソンが地面に崩れ落ちると善は常に悪に勝つという墓碑銘とthe endの文字が現れる。
何とも洒落た終わり方だ。

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