真面目な従兄弟のおかげで抽選会違反者として捕まらずに済んだ話

私は抽選会が大好きです。

あらゆるものの金額を記憶して、比較して、クーポンを1日5時間くらい見漁って、1円単位で物事をケチるくらいケチだけど、抽選会のためなら、抽選券をもらえる金額まで必要のないものまで買い物しちゃったりします。


毎月欠かさずいく、ドラッグストアの抽選会。

私にとって、月一の至福の時間。


ある月、抽選会のガラガラ回すやつが壊れてしまった月がありました。


箱の中に色分けされた玉が入っていて、箱の中に手を入れて玉を取るという原始的なシステムに代用されたんです。


店員さんが一生懸命急いで作ったのだろうけど、その箱はとにかくチープで、ガムテープで補強されているけど、今にも壊れそうな材質。

何と言っても、上から手を入れる穴がデカ過ぎて、中の玉の色が全部丸見えなんです。

答えが丸見え。

どれだけ手の大きい人にも対応できるようになっていたのかもしれないけど、もはやわざわざ穴作る意味ある?箱そのまま開けてるのと同じじゃない?というくらい丸見えでした。


この「ズルし放題」な答え丸見えシステムになっていることを知った私は、もちろん、大興奮。


卒業旅行でハワイに行く日よりも、行きたかったホテルビュッフェに行ける日よりも、何よりもテンションが上がった。


テンションが上がったというより、気が狂ったといった方が正しい。

頭がおかしくなってしまった。

そりゃおかしくもなる。
センター試験で自分だけ、テストと答えが一緒に配られているような感覚。

ネジが外れて制御が効かなくなったロボットのように、善悪も何もかも考えられなくなって、とにかく、ズルし放題、答え丸見え抽選会に対してよだれが止まらなかった。本当に、失禁寸前だった。


このシステムやばくない!?!?!?!?!?!?!とずっと大声で、一緒に来ていた叔母と従兄弟に話しかけていた。


頭がおかしくなっていて、興奮と共に語彙力も低下しているので、ひたすらやばいを大きい声で連発していました。


こんなやばい状態の私がいざ抽選をするとなると、抽選箱に手を入れなくても大興奮。店員さんが箱を持っている姿を見るだけでテンアゲ。


真面目で曲がったことが大嫌いな7個下の従兄弟はそんな私を見るに耐えなかったのか、一緒に来ている人と思われたくなかったのか、3メートル以上離れて見ていました。


ズルに耐性がある叔母は私の近くで、私ほどではないけどニヤニヤしながら見守ってくれました。


ああ〜〜答え丸見えじゃん!!!

色付きのやつ取り放題じゃん!!!

全部色付きにしてやろう!!!


頭の中が欲でいっぱいになりました。

色付きの抽選玉しか目に入って来ません。

どうせ取るならなるべくいい色を・・と思って金ピカを一生懸命探しましたが、興奮し過ぎて気が狂って、目も回っているので、黄色と金色の区別が全くつかず、結局探せませんでした。


金色は諦めたにしろ、それでもなお、なるべくいい商品が当たる色をとってやる・・・と思い、「そういえば各色の当たり引き換え商品ってなんだっけ」と視線を一旦抽選箱の中から外に移すと、真っ青になっている従兄弟の顔が見えました。


その瞬間、正気に戻りました。


悪事に手を染めて、それがやめられなくなって快感となっている私の姿はさぞかし怖かっただろう。


従兄弟とは歳も離れていることもあって、友達が少ないお互い、ずっと仲良くやってきたのに、私のこの気が狂った行動のせいで全てが台無しになると思った。


ちゃんと、目を逸らし、目をしっかり瞑り、「正常の」抽選会をした。


目を開けたら、従兄弟が2メートル距離を縮めてくれていた。顔色も少し戻っていたのでホッとした。


帰りの車で、参加賞の飴を従兄弟に渡したら、

「今日はいいや」と言われてしまった。


飴が大好きな従兄弟は、毎月、一番しょうもない参加賞の飴を喜んで食べているが、今月は悪事にそまろうとした私の手で掴んだ飴だったのでそりゃいらないよな。と思い、袋に閉まった。


「いや〜それにしても興奮したわ〜〜。けど、本当に〇〇(従兄弟の名前)がいてくれてよかったよ」

と、私は窓の外を見ながら、試合に勝ったアスリートのように、助手席で思い出に浸っていた。


「だって、普通にやっちゃダメなことだからずっと大丈夫か不安だった」

と、ずっとこわばった表情が取れなかった従兄弟が、肩の荷が降りたように話し始めた。


あの時、従兄弟がいなかったら、私は今頃、抽選会法違反者として牢屋にいたかもしれない。


普通にやっちゃダメなことをやらない。

そんな当たり前の判断がどうしてもつかなくなる時がある。


そんな時、一度視線をずらし、頭を冷やして、自分の大切な人を頭に思い浮かべてほしい。


自分のこの姿を見られたらどう思うか。

いつだって誰かが必ず見ているし、絶対あとで知られてしまう。今そこで得られるメリットより遥かに大きいものを失わないために、善悪の判断がつかなくなるくらい頭がおかしくなった時は大切な人を思い浮かべるようにしようと思った。

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