見出し画像

普通はあるもの、普通はないもの

中古マンションのリノベーション体験記、今回、実質的なスタートを迎えるに当たって、まず間取を中心に、普通はあってわが家にはないものと、普通はないけれどわが家にあるものをご紹介しよう。
少し長くなるが、お付き合いいただければ幸いです。

普通はあってわが家にはないもの

まず、リビングとダイニングをなしにした。[*1]
二人暮らしではあるが、特に共通の友人はいない。親戚付き合いも希薄なので、その意味でも来訪者は想定せず、友人なら自室、という「育つとき個室があった」世代のハシリかもしれない。
それぞれの居室をできるだけ広くとりたいという思いも強かった。通風やエアコンの効きを考えるとどこにでも本棚を置くわけにもいかず、限りある壁面を収納と取り合う。いずれも十分とは言えないのだけれど。
そう、マンションは意外と使える壁面が少ない、というのが、最初の発見だった。

全体的には70㎡程度のマンションと言えば間取も似たり寄ったりで、慣れた方なら大概の見当はつくだろう。
わが家を想像していただくとすれば、玄関とその隣のサニタリー、廊下を挟んで向かい側にキッチン、左右(廊下の突き当り)に居室が一つずつとなった。
壁式構造のために、大枠は動かせなかった。
居室の一方は、普通なら子ども部屋の想定で二部屋のところ、間仕切りをなくして一室にした。
反対側の元々の間取はキッチン続きのリビング・ダイニングと主寝室だった。キッチンと元ダイニングの間を仕切り、仕事場兼用の一部屋とした。
ダイニングをなくしたついでに(というわけでもないが)食事についてはそれぞれで、と決めた。仕事次第で時間がすれても大丈夫にしたかった。それに従来、一緒に食事をしても、テレビをつけてしまっていたから、むしろ好きなように過ごせるのがいい。

もう一つのわが家にないものは、お風呂(浴槽)。
ユニットバスではなく、シャワーユニットを入れた。
入浴については、お風呂でのんびりできる派と、(髪や体を洗ったり)何くれとなく忙しく感じる派、二つのタイプに分かれるらしい。
皆さんはどうだろう? わが家の場合は、ここは一致して「忙しい」派。のんびり湯船につかるという発想がない。
それに夏場は浴槽を使わない。使わない浴槽は結構邪魔だったり、シャンプーがはねて汚れたり、かえって気がかりになってしまう。
日本なら銭湯も温泉もあり、望むなら選択肢はある。

しかも、これには時代の流れも味方した。
以前はシャワーユニットというと内寸で800mm [*2] 四方くらいの狭いものしかなかった。色もビジネスホテルのユニットバスに多い暗めのベージュ。いかにも間に合わせの観があった。
しかし今なら、むしろデザイン性の高いシャワーユニットが、短辺内寸900の仕様 [*3] で売り出されている。この大きさなら、(体格にもよるだろうけど)タオルを斜めに持って背中を洗っても壁面にぶつからない。
リゾートホテルのセカンドスペースさながら、グレードアップのオプションも豊富である。

普通はないけれどわが家にあるもの

反対にわが家にあるもののその一は、換気のできる収納。
今回のリノベーションに当たってどうしても造りたかった。

夏場、部屋は冷房していても、洋服ダンスを開けた途端、むっと暑い空気が溢れ出る、という体験はないだろうか。
と同時に、いやそれ以上に、このブログ全体のタイトルにも掲げた「香害」の蔓延が大きかった。
「香害」については改めて、折に触れて書いていくつもりだが、香害をもたらすのは衣類だけではない。洗濯によって衣類に染み込んだ「香害物質(VOCと言われている)」が部屋や店舗などの空間に広がり、その空間に置いてある物にも付着する。
つまり柔軟剤や「香りづけ」商品、香りの強い洗濯洗剤を使わなくても、「香害物質」は外出すれば衣類や体、カバンなどに付着するし、仕事の書類、購入した商品やお札やレシートなど、さまざまな物と一緒に家に持ち帰ることになる。
それらを、換気できる収納に一時置き、または分別収納し、平常の暮らしを香害から守りたかった。
それぞれの居室には両開きの戸棚で、半分は簀子の可動棚8段 [*4]、半分はハンガー用のパイプを取り付けた。玄関は棚ばかりの収納で、買ってきたものに臭いが付着しているときのストックスペースとして考えた。

もう一つの「わが家にある物」は個室内の洗面設備。
海外の家ではサニタリーが各個室ごとについていたりするようだが、日本では、戸建ての2階に二つ目のトイレが付き、ようやく洗面設備が付くようになってきたところだろうか? 
中古マンションでは、そのような設備はまずないだろう。
特にわが家のような壁式構造では、更になぜか床下(天井裏もだが)の余裕がなく、勾配を付けなければならない排水の取り回しに苦労しつつ、何とか実現させていただいた(本当はトイレも、と希望したが、さすがにこれは無理だった)。
しかし、洗面が室内にあって、それなりに身だしなみを整えてキッチンなどの共用スペースへ “外出”、というのは、やはり気持ちがいい。
と同時に、使用する時間帯の重なりがちなそういった設備に関しては、空くのを待つのもストレスになる。学校や会社など、出かける時間がそれぞれで決まっていれば、毎日がその順番で出来上がるだろう。けれど退職などしてそういう仕切りがなくなれば、目安を決めるための座標軸がないと言える。
双方が同じくらい、そうしたことに無頓着ならいい。けれど普通はそうもいかず、一方の負担になりがち。
そのような状況を避けられるなら、可能ならお金をかけても良いと思った。

着工の時にはまだ、そこまで自覚的ではなかったが、今振り返ると、こういう事だったと思う。
もちろん、こうした試みには誤算もさまざまある。自分的には大誤算、大誤解。次回はそれをご披露したい。


*1 前回「シェアハウス風に」と書いたのは、キッチンや水回りの設備を共用しつつプライベートに個室を住空間として使用する形態というイメージだった。しかしシェアハウスには、むしろ入居者同士のコミュニケーション、コミュニティ化を魅力の一つとする捉え方もあるようで、その点では限定的なイメージだったかと思う。
*2 建築の世界では寸法の単位は mm という事なので、それに倣う。
*3 LIXILの「シャワーユニットNS」というシリーズ。短辺 900については長辺 1200 と 1400 の2サイズがある。
*4 セーターなどを1段1枚で通気させるために間隔は狭くてもよかった。もちろん可動なので、中身に合わせられる。因みに相方の棚は、夏場、配達された発泡酒のケースで埋まっている。

*  書き慣れていない上に仕事が混んでしまったり、間隔があいてしまいますが、たまにご訪問いただければ幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?