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収納扉の ”困った”

「はじめまして」で書いた、換気のできる収納を含め、わが家には4か所、両開きの扉を持つ収納がある。いずれも造作、というのだろうか、発注した枠と扉を、部屋のドアと同じように大工さんがつけるのだが、通常はメーカーで行う蝶番の取付用彫り込み [*1] を現場ですることになった。
というのも、一級建築士のNさんと話していて、指定した扉にセットされた蝶番が90度くらいまでしか開かないものだとわかったからだ(パナソニック、ベリティス)。
今どき、蝶番の種類も多く、蝶番を変更するには彫り込みもそれに合ったものにしなければならないという事だった。

「蝶番」の名の由来でもある蝶の羽のような形状のものしかイメージのなかった私にとって、扉は壁などが邪魔にならなければ180度開くものだったから青天の霹靂と言ってもいいくらいのもの。何故そんなに不便になっちゃったの? と誰かに聞いてみたい。
他方、そのような扉を使ったことがないNさんにとって、それは想像のほかだったようだ。
扉の大きさはまちまちだが、高さは約1750、幅は片側400前後、厚さは20くらいの合板。特別に大きくも、重いわけでもないはず。
場合によっては収納の近くに本棚や机を置く可能性もあり、扉を180度くらいまで開けてしまった方が、人間の立ち位置との関係で出し入れがしやすいと思われた。また重い箱など、持ち上げれば自然と肘を張るので、やはり90度では扉に邪魔をされ、充分に中へ置き、取り出す事ができない。

なお、換気できる収納、というのは、外出の際に香害を纏って帰ってきた衣類たちを、一旦はベランダで風に曝すものの、その後も、あるいは雨の時など(毎回は洗濯しないボトムやセーター・コートなどを中心に)部屋着などと区別して収納し、換気し続けるようにしたもの。内部の天井部分に換気扇を付けダクトを通し、給気は底面から空気の流れを作るように開口部を設けたワードローブ。
そしてまた、スーパーなどで陳列の間に香害物質を吸着していた商品、病院の検査結果の紙など、何でも臭いの気になるものは仮置きする収納でもある。この部分の棚は簀子すのこにしてある。

その収納の扉が、開閉の際、上の方で左右が当たるようになってしまった(下の方は隙間がある)。
よく見ると、左右の扉の板自体が、それぞれに前後や左右に傾いている! 基端と枠の隙間が広かったり狭かったり。板が奥方向へ傾いているものでは、上の枠は見えるが下の枠は見えないし、見えている縦の枠幅が、上と下とで斜めに変わっていく。

始めは戸が当たる点だけ気になって、そう連絡した。
蝶番で調整ができるのか?
 →見に来てもらったが、できないタイプだった。
同じタイプで調整可能な蝶番に交換?
 →枠との隙間がすでに最小の位置で、交換しても調整幅がないとのこと。

さあ困った。
先方からは、蝶番での調節が可能になるように、板を切るしか方法がない、と回答が来た。しかも先端で。
切った後は面取りし、同じ柄の木口テープを貼るから目立たない、と言うが……。
こちらは、見れば見るほど、蝶番を付けている彫り込みからやり直して、ネジ位置も変えて、まずは扉の垂直と高さの左右揃いを確保してほしい(下の方に隙間があるという事は、扉自体の幅の問題ではなかろう?)。
しかし、技術的にできるのだろうか?

そもそも、何故このような事態に至ったのか? 
どうやらNさんが、壁に当たりそうな側は普通の90度ストップのもの、180度開ける側だけ別種の蝶番に、と気を利かしてくれたのだろうけれど、それが仇になったのではないか?
90度以上の開放のために工場出荷の際の彫り込みをやめ、現場での彫り込みとなったのだが、加えて左右別々の蝶番であることなど、やって来た若い職人さんに、その事情は十分説明されていたのだろうか?
そもそも、上中下3か所の彫り込み位置を精密に割り出し、加工すること自体、結構難しいことだったのではないだろうか。
扉を取り付け、調整してくれた大工さんも、これ以上は無理、と左右で高さの違う扉を前にあきらめ顔だった(迂闊なことに、その時は左右の高さの違いしか気づかなかった。その時当たっていなかったということは、後から動いたということだろう)。

何か参考になることはないかと家具店を数軒見たが、インセット(枠の内側に扉がつく形)のものが見当たらない。ワードローブ自体がほとんど見当たらない。
今どき、ウォークインクローゼットだったり、押入スペースに折り戸を付けてワードローブにしてしまったりするためだろうか?

結論として、やはり扉板は切らないことにした。
当たる部分はそっと手を添えて、左右を揃えて押し引きすれば何とか開閉できるので、もうそのままでいくことにした。
垂直でないのには目をつむり、斜めの、不均等な荷重でもし蝶番が壊れたら、それはその時のことにしよう。彫り込みに失敗したら、目も当てられないから、ここは慎重に。

いやはや、大誤算であった。
もしどなたか、方法があったらお教えいただきたい。

今回はそんな閉まらないお話であった。


*1 扉側の蝶番の基部が円柱状(半円?)になっており、適切な取付位置に、使用する蝶番の基部の形に合わせた穴を掘らなければならない。メーカーでの加工ならば機械で位置も正確にできるのだろう。
しかし、なぜ円なのか? 材料の節約? わからないが、少なくとも基端(扉の、枠に取り付けられる側)からの入りと平行がとれるように、その部分だけは直線になっていても良かりそうなもの、と思うのだが( ……、回転する刃で彫り取るためだろうか。四角くては、それこそのみで彫っていかなければならず、機械では難しそう。だとしたら、これは機械化、工業化の弊害と言ってもいいかな?)。

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