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混合水栓と給湯器、使い方の大誤解

給湯器の種類と混合水栓

現在どのくらいの家庭で、混合水栓を使っているのだろうか。
例えばキッチンや洗面では、ワンレバーのものが多いかもしれない。レバーの上下で流量を決め、左右で湯温設定をする。下図はわが家の混合水栓の説明図(LIXIL)である。

lixil_レバーハンドル

浴室用としてはこれに湯温調節用のサーモスタットが組み込まれているものが多く、その場合レバーは湯量調節専用となる。

ところがこの混合水栓、どうも説明通りには働いていない。
今回、まず給湯器について調べたところ、現在一般に使われているものには、2種類の方式がある。

1. 瞬間式(直圧式):給湯器内の配管を通る水を設定温度まで熱し、そのまま給湯する方式。一般家庭に多いデジタルで温度を設定するもの [*1]。
2. 貯湯式(減圧式):貯湯タンクに給水し高温まで熱して貯め、使う際に水と混ぜて適温にする方式。銭湯や温泉、エネファームなど。

なので、単純な話、混合水栓が必要なのは貯湯式のみ。どうも瞬間式に混合水栓は本来的に不要、ミスマッチなのではないだろうか?

混合水栓の使い勝手の悪さ

まず一般に、上の図のようなワンレバーでは、従来の水栓を踏襲して(?)温度にしても水量にしても調節の手掛かりになるような目盛も何もない [*2]。例えば手を洗うだけのことにしても、初めに手を濡らし、止めて石鹸を付けて洗い、最後にお湯で流す、など、出したり止めたりを繰り返すケースが多いのに、レバーの微妙な位置設定を支点なしに3Dでしなければならず、調節が難しい。勢い、出しっ放しの無駄遣いになってしまう。それはどうしても不適切に思われる。

加えて瞬間式の給湯器の場合、せっかくデジタルで設定している温度の湯に、何故水を加えて温度を変える装置を付加するのだろうか? とずっと不思議に思ってはいた [*3]。けれど、給湯器で設定できる最低温度は37℃ [*4] と決まっていたので、それよりもぬるくできるのだろうと、漠然と期待していた。
ところが、水を混ぜているのに却って熱い湯になったり、うまくぬるくなったと思っているといつの間にか水になったり……。
どうやら瞬間式、瞬間には湯温を変えられないのだ。
それは瞬間式の給湯器が水を沸かす構造にある。水がそれなりに長い管の中を通りながらバーナーで加熱される形になっている。なので、急に出口(水栓)のところで水を混ぜられると、給湯器にとっては、急に出湯量が減らされたことになる。すると、順々に出ていくはずの、ほとんど出来上がって設定温度になった湯が、出口渋滞で加熱され続けてしまう。それが、一時的にではあれ、水を混ぜて熱い湯が出てくる理由だろう(もちろん温度センサーが働いて火力を落とすのだろうが、それが湯温に反映されるまでには、出しっ放しが気になるくらいに長い時間がかかる [*5])。
逆に消火してしまうのは、水の比率が多くなりすぎて出湯量が減り、給湯器の水量センサーが水停止と判断してしまうからだろう。混合水栓では、どれだけ湯量が絞られたか、わからない。

瞬間式はまた、設定温度の湯を少ない湯量で出すのも苦手のようだ。
給湯器が湯温をコントロールするために、火力と「給湯器を通る水量」の両方がかかわっているからだろう。冬になるとよくわかるが、浴槽への湯張りなど、出が細くなって時間がかかる。夏と同じ設定温度でも、水温の低い分、カロリー(火力)が足りなくなり、流量を減らして補うようになっている。
このため、因果は逆になるが、湯100%の位置で流量を減らすと、結果として給湯器を通る水量を減らすことになり、設定温度を上げたのと同じことになってしまうのではないだろうか。
下の写真は設定温度37℃で湯量を絞った時のもの。42℃を越えている。(しばらく計量カップに湯を貯めて測ったので、止水の直後に再開して起きる一時的な高温現象ではない。)

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そして、どれだけ待てば流量の減少を感知して火力が弱められるのか、見当がつかないのが困る。あるいはまた、湯と水をどのような割合で混ぜれば希望の温度にできるのか、レバーの目安のなさと相まって、皆目見当がつかない。
情報としてほしいのは、以下の表のようなことだ。

混合比率の表

このXYZ(もちろん水温は季節に応じて5℃から5℃刻みくらいで、希望温度もできるだけきめ細かく)が給湯機メーカーから公表され、混合水栓がそれに応じた設定をできるように3Dの目盛(地球儀についている緯度のスケールが縦横に組み合わさっているような形だろうか)など付けば万々歳!
むしろこれまでにそういう進化がなかったことが不思議なくらいだ。

混合水栓大誤解の謎

以上のように、使ってみて困ってみて、現状では瞬間式と混合水栓はミスマッチ、使いにくいものとわかったが、残念ながら建築関係の方々から、そういう説明や使い方のアドバイスはなかった。
各種メーカーや販売店では、混合水栓がすでに標準。相方の洗面台(パナソニックのシーライン)にセットされていたのはまさにワンレバーの混合水栓。システムキッチン(イケア)のシンク天面の穴開けも混合水栓用に一つが前提で、うっかりワンレバーの混合水栓を買ってしまった。

何故だろう?
初めにあげた混合水栓の説明図のように、給湯方式に関係なく「湯と水を適切に混合すれば希望の温度、希望の量で湯を出すことができる」と思っているのだろうか? そうとすれば、それは大変な誤解ではないか? 
そしてそれが訂正されないというのは謎と言ってよいように思うのである。皆さん、職業としてかかわっていると同時に、利用者でもあるはず(それとも単に、拘らないだけ?)。

さらに、その図示された説明により、もし利用者もそう思って(思わされて)いて、うまく湯温をコントロールできないのは自分の使い方が下手なのだ、と思ってしまっているとしたら、我慢して熱い湯を使っていたりするなら、それはずいぶん残念な事ではないか?

実は本稿をあらかた書いたところで、改めて取説を見てみた。すると「ご使用前に」という項目のもと、「直圧式給湯器と組み合わせてご使用の場合」という項がある。つまりこの水栓が減圧式(貯湯式)を前提にしていることがわかる。しかも、その項で述べられているのは「着火しない場合」についてのみだ。
一般の利用者でいきなり直圧式と言われてわかる人がどれほどいるだろうか。しかも「ご使用前に」である。
また、上で書いたとおり、問題は「着火しない場合」ではない。

むしろ上掲の混合水栓の説明図に並べて直圧式(瞬間式)の場合の説明図を、「湯100%の位置で全開の場合に設定どおりの湯温になる」こと、さらに「出湯中に湯水混合比率を変更すると、湯温が不安定になったり、消火したりすることがあります」くらいの説明を添えて、掲載してほしいものである。

サーモスタット付き混合水栓の大誤解

シャワーユニットには、初めからサーモスタット付き混合水栓のほかに選択肢はなかった。
例えばリクシルはサーモスタット付き混合水栓の使い方として、給湯器の設定温度を「50℃以上60℃以下 [*6]」に設定するよう勧め、「サーモスタット付き混合水栓は(中略)給湯器の設定温度より、吐水温度は低くな」ると説明している。本当だろうか? 
さらに言えば、家族の入浴時間は往々にして夕食の支度や後片付けと重なるのではないか? もし50~60℃に湯温を設定したら、キッチンではよほどうまく混合水栓を調節できないかぎり、とても熱くて、お湯を使えない。

これに対し給湯器の取説(リンナイ)では、湯張りなどの場合、サーモスタット付き混合水栓は「温度調節ハンドルを最高温度側いっぱいに回す」、ワンレバー混合水栓も「レバーを最高温度側いっぱいに回す」と、それぞれの温度調節機能を実質無効に設定することを求めている。
湯量が絞られて設定湯温以上の高温になったり、絞られすぎて消火してしまったりするのを防ぐためだろう。
そうすることで、デジタルで設定した温度での安定した出湯が可能だし、設定温度も40~43℃くらいで、洗い物にはやはり高温だが、よほど安全である。

なおこれらはあくまでも瞬間式の場合の事。貯湯式の場合は問題がないので、誤解なさらないでいただきたい。

瞬間式の給湯器に望むこと

ここで改めて瞬間式の給湯器について言えば、夏冬の水温の変化に対応するために、バーナーにひと工夫欲しいと思う。というのも、食器洗いや洗顔に37℃までは必要なく、上の表に示したように、30℃くらいからの出湯を可能にしてほしいからだ。上では混合水栓での調節を可能にすることを考えたが、給湯器サイドで可能になるなら、その方がずっとシンプルだろう(ただ、給湯器の買換えはなかなか高額なため、水栓が進化してくれれば庶民にはその方がありがたく、まずは混合比など必要な情報の提供をお願いしたい)。

さて、何と言ってもガスの良いところは、無段階でガス量の調節ができるところだろう。以前使っていたノーリツの瞬間湯沸かし器では、ガスコンロと同じように回転式のガス量調節ダイヤルがあった [*7]。類似の調節装置が付いていれば(もともと備わっているガス量調節機能と抵触しなければ)、それにより今以上の調節ができるだろう。
あるいは、ガスコンロのように、バーナーを大小に分けるという方法はどうだろう? 例えば現在の全カロリーの三分の二と三分の一(単にイメージなので、望ましい比率はきちんと求めていただく必要がある)の二つにバーナーを分け、冬はバーナーを二つとも使う、春秋は三分の二の方で、夏場は三分の一で、というように火力をより大きい幅で調節できるようにする、という案。
それができれば、浴槽への給湯やシャワーの時だけ全能力、キッチンや洗顔なら中等度~ぬるま湯、という使い分けもアリだろう。
季節や用途に応じた消費量の選択を可能にするなら、それもエコと言えるのではないだろうか [*8]。

おわりに

混合水栓には美しいデザインのものが多い。それだけに、機能的にも十分な物であってほしい [*9]。
混合水栓と2種類の給湯器。今回の問題はそのマッチングにあったのだと思う。物が使われる場面で、ほかのものと関係なく純粋に単独でその機能が成立することはないだろうから、物の使用についても選択や設置についても(私が当事者になることはないが製作・開発の場面でも)、その点に充分に意識的でありたい、あってほしい。
と、話が少し観念的になってしまったが、給湯器と混合水栓が今と変わらない機能の場合、最終的な結論としては、瞬間式には2ハンドル、だろう。
水を使う時は水の、湯を使う時は湯のハンドルと給湯器の温度設定で使う、というのがスマートで正解のように思う(もちろん、文中で表にしたような情報とそれによるワンレバーの進化があれば別だが、やはり、多分、複雑すぎるだろう)。

危惧するのは、現時点ですでに、2ハンドルの機種があまりないこと。ワンレバーのみになってしまったら、湯の時は湯側へぐるりと回し、水の時は水側へぐるりと回す、という、あまり美しくない使い方をしなければならないし、壊れやすくなりそうな気もする。その点ではメーカーさんや建設関係の方々にも、それぞれの用途の適不適をわかっていただけたらと思う次第である。

◇なるべく正確に、と思い、また現象を理解していただきたいと思い、随分長くなってしまいました。
もし誤認・誤解があったら、どうかお許しください。コメントでご指摘いただけたら嬉しいです。
読んでくださって、ありがとうございました!
何かが改善されることを切に願っています。

【注】

*1 これには「瞬間湯沸かし器」とか「小型湯沸かし器」と呼ばれる、個別にキッチンに付けるタイプの5号程度のものもある。これは能力的に限界があるが、アナログで湯温調節ができるようになっており、元祖瞬間式ではないだろうか。
*2 旧来の水栓ハンドル(ネジのように回転させて開閉するタイプ)の場合は、手のひねり角度に対する慣れや回転の回数など、むしろ見当をつけるための手掛かりは初めからあったと言える。そういうものが必要とは思われなかったのだろうか?
*3 給湯器の基盤が壊れることを想定すれば、安全のために水を配管しておく必要はある。
*4 わが家が入居したマンションでは、給湯器が屋内設置に設計されている。そのため、何故なのかは確認していないが機種の最低設定温度は37℃である。屋外設置の機種では最低温度35℃がある。 
*5 「実験」と思いつつも、どうしても流しっ放しが気になって貧乏性の私には実際にぬるくなるまで待てなかった。なので、時間がたてば湯温が調節されるかどうか、実際には未確認。
*6 その取説には「ヤケド防止のため60℃を越えない設定に」と書かれている。おそらくそれは瞬間的に触れて「アチッ!」とよけた場合の事。確かに当該の「サーモスタット付きシャワーバス水栓」は浴室でしか使われないが、本文に書いたように、キッチンや洗面での湯の同時使用は十分にありうること。開発者ご自身は浴室以外で、家族の入浴中に、湯を使うことがないのだろうか? この点でも認識を改めてほしいものだ。
*7 その調節幅は十分ではなかったが、春秋の微妙な時期には重宝した(リンナイは大小のみの切り替えで中間の選択はできないことになっていた)。
*8 そのほかにもいくつか、希望はある。
(1) リモコン(または表示機能)について。
現機種ではリモコンが2台しか接続できず、キッチンと浴室に付けたため、各個室で湯を使っている時に立ち消えていてもすぐにはわからない。
あちこちで温度設定を変えると不具合があるかもしれないが、メインで設定されている湯温と立ち消えがわかる程度の表示は複数台の取り付けが可能であるとよい。今後、一軒の家の中で洗面の設備個所が増える可能性は十分あると思われ、必要になるのではないだろうか。
(2) 仕様の表示について
現状では気付かないうちに消火してしまい、急いで混合比率を変える(湯を増やす)のだが、その時点で本体内部に貯留する水の量が結構多く、再度湯になるまでに時間がかかる。上の表に例示した項目のほか、この内部配管中の貯留水量、入れ替わるまでの所要時間やガス消費量の最小値、カロリーも仕様として表示してほしいものだと思う(出湯能力最大時のガス消費量、カロリーは記載されているが、最大と最小、その幅が「能力」なのではないだろうか)。
(3)「よく使う温度」の登録
わが家ではキッチンや洗面は最低温度の37℃、シャワーは(夏場、または夏冬?)40℃か41℃。これはほとんど動かず、それぞれのリモコンにメモリーされて「優先」設定で切り替わる。なので通常は不便はないのだが、あと一つ、冬に湯たんぽを使う時、60℃に設定する。この温度変更が何度も▲ボタンを押さねばならず、不便。終わって▼ボタンを押すのも同様。
こうした特殊な設定を、一つか二つ、登録できるようにしていただけると大変便利になる。
(4) 高温時のアナウンス
高温に設定直後の出湯では、設定が高温であることのアナウンスがある。しかし、温度を戻し忘れ、しばらく後に高温のまま出湯してしまう時、つまり高温で2度目以降の出湯の時、アナウンスは入らない。
高温に設定した本人なら「シマッタ」で済むのだが、与り知らぬ相方は「危ない!」とプンプン。
本来危険防止の観点からは、設定していない人、設定から時間がたっている時、こそ、アナウンスが必要なのではないだろうか。その意味では、意識的に高温に設定するわけだから、設定直後のアナウンスは不要でもある。
この点、改良されたい。
*9 本文の趣旨とは関係ないが、購入したキッチン用のワンレバー混合水栓は樹脂製だった。樹脂製の吐水管は温度確認ができないので不便、かつ危険でもあり、もう販売されていないと思っていたのだった(重ね重ね、うっかり、である)。もし樹脂製が今後も生産されるならば、部分的にでも、実際に管の中を流れているものの温度を外側から、湯に触れずに確認できるような構造であってほしい。それは安全のためであり、瞬間式でも貯湯式でも同じ。
そしてシャワーもホースやヘッド部分については同様。こちらは体中に浴びてしまうので、なおさらである。ただ基部は昔と同じで壁出しなので、そこに手を当てれば確認はできる。
どんなに機械が便利になっても壊れない保証はないので、確認の方法と習慣は持っていたい。

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