そのさよなら、代行します (あらすじとプロット)


※脚本が間に合わなかったため、あらすじとプロットのみとなります。

〈あらすじ〉
伊達圭人は依頼人の代わりに別れを告げる、さよなら代行の仕事をしている。
しかし本当は、たった一冊単行本を出しただけの売れない小説家。
このままでいいのかと悩んでいたある日、新米記者の葉山茜が取材をしにやってくる。しかし締め切り前で焦っている伊達はきつく断る。
後日またやってきた茜は、取材ではなく恋人へのさよなら代行をしてほしいと言う。
が、しかしそれは体験談として記事を書くためについた噓。恋人にはドッキリと言って後でばらすつもりだった。
依頼を受けた伊達は茜の恋人の名を見て愕然、それは伊達の親友の小野田であった。しかも小野田には妻と子がいる。
気まずいながらも小野田に別れを告げる伊達であったが、伊達の説教じみた話に小野田は「夢ばかり追ってるお前に言われたくない」と反論する。さらに伊達と小野田の過去やさよなら代行を始めるきっかけが明らかとなり・・・。

〈人物表〉
伊達圭人(28)…依頼人の代わりに別れを告げる、さよなら代行の仕事をしている。
葉山茜(23)…新米雑誌記者。
小野田亮介(28)…伊達の友人。
依頼人(22)…就活生。


〈プロット〉
回想。顔の見えない女性。「さようなら」と口が動き、去っていく。

我に返り、パソコンを打ち始める伊達圭人(28)。
物がほとんど無い小さな事務所。机とソファ、大量の本が並んだ本棚だけがある。
ここは依頼人が別れを告げたい相手に直接言えない場合に、代わりに別れを告げてくれるという、さよなら代行の事務所。
卓上カレンダーには3日後に「○○賞締め切り」の文字。イライラしている伊達。

すると依頼人がやってくる。
就活の内定先へ辞退の連絡をしてほしいという男性。
すぐさま会社に電話をし、仕事を終える伊達。その速さに驚く依頼人を気にもせず、伊達はパソコンを打ちながら代金を要求する。その冷徹さに困惑した依頼人はお金を置いてすぐ出ていく。

事務所の外。葉山茜(23)が事務所の写真を撮っていると、依頼人が出て来る。
この会社の取材をしに来たという茜に、やめた方がいいと言う依頼人。
恐る恐る中に入る茜。

看板のほんわかとした雰囲気とは一転、質素な空間と伊達の威圧感に圧倒される茜。
しかし初めて自分一人で記事を書かせてもらえるのだと張り切っている。
無視されてもめげずに色々質問する茜を、伊達はイライラしながらきつく追い出す。
仕方なく茜は、置いてあった伊達の名刺と依頼の内容を書く用紙を取って出ていく。

茜が事務所から出ると上司から電話。
伊達のことを気難しそうと言って弱音を吐くが、絶対取材して見せると宣言する茜。
そして用紙を見ながら何か思いついた様子。

営業が終わり、古本屋に行く伊達。
ある一冊を手に取る。その小説の作者は伊達である。帯には「期待の新人」と書かれている。裏を見ると値札シールが何度も張られ、100円になっている。そっと棚に戻す。
隣にいるスーツを着たサラリーマンを見て、自分の服装を確かめる。このままでいいのだろうかと考える伊達。
するとそのスーツの男性が伊達の本を手に取る。気になってじっと見る伊達だが、男性はパラパラと見てすぐに本を戻してしまう。
そこへ親友の小野田亮介(28)が現れる。「お前の小説楽しみにしてるよ」と小野田。
あまり嬉しくなさそうな伊達。

翌日、パソコンを打つ手が止まっている伊達。
また、顔の見えない女性が頭をよぎる。

すると茜が事務所にやってくる。取材ではなく依頼をしに来たと言う茜。
恋人と別れたいと言うが、その名前を見た伊達は驚く。
伊達が少し声色を変えて電話すると、電話の相手に直接会って話したいと言われる。
伊達は断りかけるが、茜が電話を奪って無理やり約束してしまう。

事務所を出た茜。
やっぱり悪いかな?いやでも記事を書くため・・・などとぶつぶつ言っている。
「あ、やば、お店閉まっちゃう」と言って急ぐ茜。

数日後、カフェで茜の恋人を待つ伊達。伊達と背中合わせの席に変装した茜が座る。取材用のメモと、プレゼントを取り出す茜。プレゼントについたメッセージカードには「ドッキリ大成功!騙してごめんね」と書かれている。
そしてやってきたのは小野田。小野田は伊達がさよなら代行だとは気づいておらず、たまたまだと思って伊達に話しかける。
小野田「お、何やってんの」
伊達「お前、未季と別れたの?」
小野田「なにいきなり」
茜、ん?と不思議がる
伊達「葉山茜さんと別れてほしい」
小野田「お前なの?あの電話」
伊達「不倫なんてやめた方がいい」
茜、不倫?とつぶやく。
どうして不倫なんてするのか、相手に悪いと思わないのかと正論をかざす伊達。
小野田「お前に説教されたくない。夢しか見てない奴にはわかんないよな。現実ってそんな簡単じゃないんだって」
伊達「・・・」
小野田「だからお前の小説売れないんじゃないの」
伊達「おい」
小野田「未季だって・・・お前が小説のことしか頭にないから、別れるしかなかったんだよ」

回想。顔の見えない女性(未季)。「さようなら」と口が動く。

伊達「振られたのは、俺の方だよ」
小野田「ああ。でも振らせたのもお前だろ」
伊達「振らせたって・・・」
茜、一人困惑している。取材用のメモに相関図を書いて必死に整理している。
小野田「未季はお前のこと好きだったんだよ。好きだから別れたんだよ」
伊達「好きだから?」
小野田「お前小説のことしか見てないもんな」
茜、伊達のところに「小説家?」と書き足す。我に返り。いやいや、何やってんの私。え、私、愛人ってこと?と状況を飲み込む。
伊達「話を戻そう。葉山茜さんと別れてください」
小野田「嫌だ」
伊達「未季がいるのに」
小野田「未季とは終わってる。いや、なんなら始まってもない」
伊達「?」
小野田「好きにはなれないと思うって。初めに言われた」
伊達「でも子どもも」
小野田「お前のな」
伊達、言葉が出ない。
小野田「俺たち、籍入れてないから。夫婦っていうより、パートナー」
茜、待って待ってと大混乱。
小野田「だから不倫とは違うの。わかった?」
伊達「俺、どうしたら・・・」
小野田「どうもするな。未季の覚悟が無駄になる」
茜、立ち上がり。
茜「ごめんもう無理」
驚く小野田。伊達の隣に茜が座って。
茜「ちょっと色々よくわからないんですけど。亮ちゃんにとって私ってなんなの」
小野田「恋人」
茜「じゃあ未季さんって人は?」
小野田「だからパートナー」
茜「好きじゃないの?」
小野田「好きだよ。だけど未季の方はライクで、茜はラブだから」
茜「どうでもいいそんなこと。なんで言ってくれないの?そんな大事なこと」
小野田「ごめん」
茜「私達2年も付き合ってるのに」
小野田「・・・」
茜「もう亮ちゃんのこと信じらんないわ」
とプレゼントを突き出し、
茜「さよなら」
と店を出ていく。
小野田、プレゼントのメッセージを見る。
茜「伊達さん、行くよ!」
伊達、茜についていく。
放心状態の小野田。

カフェを出た道。
茜、こらえていた涙が一気にあふれ出す。
茜「伊達さん、私、また嘘ついちゃった」
伊達「?」
茜「かなうわけないよ。だってあの人、未季さんの人生背負おうとしてる。それって最高の好きでしょ?」
伊達、うつむき。
茜「あ、ごめんなさい、そういうつもりじゃ」
伊達「いや・・・。かっこよかったよ。さっきの」
茜「・・・」
伊達「好きだから、別れたの?」
茜、小さく頷く。
茜「でも良かったです。ちゃんと言えて。まあ、別れるつもりなかったんですけど」
伊達「え?」
茜「あー、なんか泣いたらすっきりした。いい記事書けそうです」
と笑う茜を見て少し元気が出る伊達。

数日後。伊達の事務所。茜が勢いよく入って来て、できました!と雑誌を持ってきた。
すると唖然、伊達は事務所を片付けていた。
茜「なにやってるんですか」
伊達「もういらないから」
と大量の本を段ボールに入れる。
茜、勝手に段ボールを漁り、これも?と伊達の小説を取り出す。
茜「私、伊達さんの小説もっと読みたいです」
伊達「無責任に期待だけするの、ずるいよ」
茜「・・・」
伊達「好きだから、別れるんだ」
と言ってまた片付け始める。一緒に手伝う茜。
しばらくして。
茜「なんで事務所まで閉めちゃうんですか」
伊達「別れを告げられるのは苦しいけど、告げる方はもっと苦しい。そう思って始めたけど、その痛みはきっと、前に進むために必要なんだと思う」
なるほどと感心する茜。
伊達「だからこの仕事はいらない」
茜「え、でもせっかく記事書いたのにここ無くなったらどうするんですか」
と慌てる茜を見て、ふっと笑う伊達。
初めて見る伊達の笑顔に、シャッターチャンス逃したと悔しそうにする茜。
茜「もう1回お願いします」
伊達「いやだ」
と楽しそうな二人。

茜が出ていき、一人になる伊達。
すっかり空になった事務所。
茜からもらった雑誌を開く。
記事を見て「ちいさ」と笑う。



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