2021/07/30

上野の服屋で買い物していたら雨がしこたま降ってきた。店員さんと最近異常気象が多いですね、なんて話していたら雨が上がってきたのでとりあえず外に出てまた降ってくるかもしれないと走り出そうとしたら店先でめちゃくちゃ滑って転んだ。わわわ!店員さんが心配して飛んできちゃう!と思い、慌てて後ろを振り返ったが店員さんは既に店の奥に消えておりただ店先で転んだだけの男になってしまった。

こうなってしまうともう何事もなかったかのように立ち上がるしかないので何事もなかったかのように立ち上がり、散らばった買い物袋を拾い集める。お品物どうぞ~なんて店先まで送ってくれた店員さんであったが薄情なもんである。いや、あの店員さんも気づかなかっただけかもしれない。それに一人で生きていくってのはこういう事だよなと思い直し、雨が降りそうな曇天の下を一人で歩き始めた。


我が社の2年目の新人で有名大学卒のかなりデキる後輩がいる。彼女はハキハキと喋る子で物事にはっきりと意見を言う。嫌なものは嫌だと言うし、好きなものを好きだと明確に言う。俺は後輩ながらもこの子凄いと思っており、よく話しかけるのだが近頃はプライベートな話まで出来るようになって恋愛相談までする始末になっている。竹を割ったような快活な性格と、確かな学歴と実績、これらが合わさりとりあえず何を言おうがまぁ学歴に説得力があるしなとなっていまうのが不思議である。


彼女曰く、俺の恋愛観は”既に終わっている”らしいので結論としては”自衛隊に入った方がいい”とのことらしい。一見意味が分からないが、東大卒のデキる人間が言うんだから確かにその通りなのだと思う。とりあえず、25歳にして恋愛観の矯正のために自衛隊入りが決定したわけだが、俺の恋愛観なんてものの為に国防を動かすのは気が引けるのでとりあえずはシャバで恋愛観を養うことにした。
彼女に相談する中で一番効いた一言があり、それは俺が「付き合った後は付き合う前より確かに情熱が冷めている」と発言した時のことである。それに彼女は「相手が手に入った途端に相手を大事にしなくなるのは凄く貧乏くさい価値観です」と言った。俺は基本的に人の話を聞かない終わっている人間なのだが、これには思い切り顔を殴られた。実際彼女は俺を男のクズと評しとりあえず殴ってくる性格をしている。お前ほんとに後輩か?

しかし彼女のこの返しはかなり本質を突いていて、俺は確かに貪欲で飽き性で一度手に入れたものに対しての興味は薄くなっていく傾向にある。これは確かに貧乏くさい。まるで卑しい子どものようだ。俺は子どものような感性であろうとしているが、価値観まで子どものままでいたのではきっとこの世に置いていかれてしまうだろう。
今日、俺は曇天の道を一人で生きていく思いで歩き始めたが本当は転んだ時は誰かに手を差し伸べてもらいたいし、雨の日は誰かに傘をさしてあげたいのが本音だ。長すぎる人生が寂しくならないように俺も子どものままではいられないらしい。

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