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組織風土「病」???:組織改革論②

 2回目の今回は、「組織風土病」について考えて、いきたいと思います。

組織風土。とても奥深い言葉です。人間の行動は環境が規定していています。いごこちのよい空間はゆったりしたり、スタイリッシュなデザインの空間では感性が鋭くなったりするものです。仕事場でも同じです。組織風土次第で、人間の行動、創造性、労働生産性など多くの要素が花開きもしますし、抑圧的に働くこともあります。組織風土の問題としては、前回も上げたような問題が発生します(以下の図)。

筆者作成

ごちゃごちゃ書いているので、まとめると
◆経営の問題:適正なマネジメントができない、方針や目標・優先順位への納得度が低い
◆組織の問題:各部門の利害対立で協力関係が構築されない、各部門の利害対立、組織内で協力関係ができず、ぎすぎすした職場の雰囲気になっている
◆人間関係の問題:面従腹背、社員間の相互不信、コミュニケーション不全、ボトムアップやトップダウンが機能しない、一部の声の強い問題社員が職場の雰囲気を支配
◆風土の問題:行動に影響を与える制度・ルールや不文律が存在、個々の尊厳毀損が許容されている、権威主義的価値観がはびこり、上記の問題を引き起こす

といった問題に集約されると思います。

組織風土病って?

大企業だと
・部門の縄張り意識と外部不干渉
・無駄なルールが横行、前例踏襲主義がはびこる
・業務がブルシットジョブばかりに、イノベーションや改善や挑戦が忌避される
・社員の意欲減退、どうせ・・・みたいな閉塞感
といったものが「大企業病」と言われます。

実際「組織風土病」としてはどういったものが言われているでしょうか。CIAフォーラム研究会「組織風土から不正の兆候を診断する」
月刊監査研究 2022年11月(no.588)
では、以下の図が示されています。

【出典】CIAフォーラム研究会「組織風土から不正の兆候を診断する」
月刊監査研究 2022年11月(no.588)

なかなか良くできたものだと思いますが、企業社会においては利益至上主義は当然ですし、組織の存亡に関係するわけで、それを病気と言うのはどうかなと思います。リスク軽視といっても、どの基準と比較して「軽い」のか、が見えないので、印象論にしか見えないと思います。
特徴として「隠ぺい体質」「権力の集中」「硬直的」というのはあるかもしれませんが、こうした特徴は相対的なものであり、何かしらの条件をチェックしての診断結果として導出されたものではありません。「隠ぺい体質」「権力の集中」「硬直的」と主張しても、「あなたの印象でしょ」と返されたら、事実を挙げて言い返すしかありませんし、相手をそれで説得できるとも思えません。ある意味、程度問題であり、日々業務は動く中で、「病」として診断するのは難しいと印象を持ちました。

1.状態
上司信頼度、社員の満足度、モチベーション度合、エンゲージメント度合、ストレステスト結果

2.結果
法令違反件数、ハラスメント件数

で数値を見ていき、ある許容ライン、基準を超えた場合、「病です」と診断することになるのでしょうか。

しかし、上記のアンケート調査や調査結果では
・不文律として、法的な違反をしてでも利益を優先して追求する行動が許容されているか?
・権力者の高圧的・威圧的な態度と振舞い、言動がみられるか?いわゆる「権威主義」がみられるか?それはどの程度か?
・ハラスメンㇳが発生しそうないくつかの条件を満たす人間関係が存在するか?
・不快に思われる言動・行動をどの程度見聞きするか?
・社員自身の尊厳が毀損されていると感じたことはあるか?それはどの程度か?
・問題があっても声をあげたりできないと思ったとか、あきらめたことはあるか?
といった項目は調査しにくい現実があります。なかなか難しいものです。

組織風土診断で問題は明らかになるのか?

コンサルティング会社の「組織風土診断」としては、
・職場の雰囲気・協力関係
・コミュニケーション
・人事制度・人事評価への納得
・処遇
などについての設問があって、アンケート結果として測定されます。領域別に点数がつけられ、総合点がレーダーチャートで示されたりします。
しかし、「大体そんな感じ」「そんなのわかっている」という声が多くなりがちですし、「問題解決の処方箋としては使えない」と思う顧客も多いでしょう。精緻化・複雑化された分析結果を見て、だから何?と多くの人が思うことでしょう。
また、「組織風土の劣化」がと言いますが、何が「劣化したのか」「優劣の基準は?」と疑問を感じることも多々あります。筆者がかって所属した会社でも組織診断ツールはあり、内容にあまり納得がいかなかったので、次回は組織風土診断について考えていきます。

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