ノンビラ詐欺

法律事務所の業務時間は、ビラブルタイムとノンビラブルタイムの2つに分けられる。ビラブルタイムとは、依頼主であるクライアントに請求できる業務時間であり、ノンビラブルタイムとは、逆にクライアントに請求できない事務作業を含む業務時間のことをいう。毎週、毎月どの弁護士がどれだけ仕事をしたかが一目瞭然で分かる各人のビラブルタイムの集計結果は、まるでひと昔前の進学校の試験結果のような位置付けで、みんな気にしていない「フリ」をしているけれど、絶対気にしているはずの集計結果である。ビラブルタイムの合計時間は、自分のボーナスの算出される計算式に当てはめられる大変重要な指数となる。

パートナーや先輩弁護士に業務を依頼される時に重要となるのは、その依頼業務固有のマターコードだ。ビラブルタイムは、各クライアントごと、そのクライアントの案件ごとに設定されているこの各「マターコード」により、システム内でビラブルタイムと紐付けられる。つまり、ビラブルタイムを正式にシステムに登録するには、このマターコードが必要になるのだ。ノンビラブルタイム固有のマターコードがあるが、これはシステムに登録しても自分の稼ぎにはならないので、まずはビラブルタイムの仕事を上からもらうことが重要だ。もらった仕事がノンビラブルだと、やる気が起きない。


一番嫌な業務依頼の仕方は、要件だけを伝えてマターコードを伝えないこと。自分の依頼業務が、ノンビラブル業務であることを最初に言わない卑怯な人もいる。業務を依頼しておいてマターコードを共有しないということは、詐欺に近いと思う。ノンビラ詐欺とでも名付けたい。お金にならない仕事なら、先に申し添えるのが常識だと思う。それを聞いて、やりません、とは言えないのだから。



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