東京クロノス渋谷隔絶 備忘録 2024/3/31

和久井優さんが出るから行った。



面白かった~〜。


全体的によかった。

公演時間3時間。150分を予定していますってナレで、え?ってなった。150とは言うものの、だいたい3時間あった。クリストファーノーラン監督作品くらいの時間あった。

途中休憩ありの朗読劇はじめて参加した。10分。休憩ありって『トップをねらえ!合体劇場版』か。


ネタバレしかない
原作があるので(同じかはしらないけど)、気になるならシナリオはそれ見たほうがいい。


シナリオがよい

政治家で名をはせてる神谷一族が、渋谷でクロノス世界に閉じ込められる。
一人や二人とかじゃなく、一族が。

舞台には10人だが、めっちゃ居たっぽい。一族が閉じ込められたから。一斉に投票所へ歩き出したとか、全然働いてないアイツに投票する話し合いになったとか言ってたし。

出られるのは、剪定選挙で残った最後の一人だけ。剪定選挙とは、神谷の血族の中で殺すやつを、神谷の血族が投票して殺してくゲーム。

主人公ふくめて、神谷の血族のみが選挙権・被選挙権をもっているのがミソだった。実は、実は、実は。ドロンドロンの人間関係で、ま、まじかよって展開が多くてよかった。こういう系は、やっぱ当主がお手伝いとか孕ませてなんぼよ。

主人公とその兄貴がバディを組んで、なんとかコロシアイ選挙を生き残ろうと頑張る。兄貴はとにかく頭が良くて、人心掌握の鬼。後半にわかるが、スーパークレイジーサイコパス。久々にいいサイコパスキャラみた。

主役の海渡さんがホントにすごかった。3時間しゃべりっぱなし。ずっとずーーっとしゃべってた。台本も一番くたびれていた気もする。アフタートークで、もう口回ってなかった。みんなで海渡さんに拍手しましょうってなったくだりで、私は本当に、心から拍手した。

二回見ると、なぜこんなに兄貴が饒舌にこのゲームの説明をしているのかとか、なぜ芸術家はこんなこと言っていたのかとか、はあーー、よく出来てるなーーと感心感動した。

冒頭のセリフ、「あれ、ここって確か道路になったんじゃ」みたいなやつから伏線だったのがわかった気持ちよさ。ちょくちょくミニカタストロフィ・カタルシスを感じられるのがよかった。

前半と後半で分かれていたのは、休憩時間中にあれってどうなってたんだろうとか、考察する時間の意味合いもあったのかも。
私はキャラの名前と顔が一致しなかったからパンフみた。
まあー登場キャラが多いし、舞台にいないキャラの名前もでるから、そこはちょっとコチラ側が考える必要があった。それだけの価値は存分にあった。


セリフもよかった。


勝手な想像だけど犬神家とか悪魔の手毬唄とかの血潮を感じた(金田一耕助シリーズこの2つしかみてないけど)。
犬神家の一族✕メタルギアソリッド2サンズオブリバティ。

いいなと思ったセリフは、『いいなと思った』
このセリフは、結構小難しいセリフ回しや、なんでこの投票の展開になったんだみたいな論理的な話の中でこのセリフ。
急に感覚的で平坦な言葉になったことで、セリフが浮いてて印象的で、いいなと思った。

忘れてしまったが、神谷を交えたダジャレみたいになってた真面目なセリフもよかった。おっ、ダジャレか……? きいたときは思考をめぐらせた。


主人公がスーパークレイジーサイコパスの兄貴と対峙するために、一皮むけるのに一人称を変えるとこよかった。

『僕からオレになる。』
オレってわりと大人ではない一人称のイメージ。10歳の子が心の成長をはたすのには絶妙な一人称の選び方で、いいなと思った。

(一つだけ苦言を呈するのなら、神谷無斗(むと)と神谷宇斗(うと)がほぼ同じ名前同じ母音なので、今どっちの名前言ったんだって混乱する時があった。話の流れで多分そうかってなる事があった。もとが小説だからしゃーないか。)


キャストのお芝居がとにかく良い。


熱演だった。

クレイジーサイコパスの兄貴・神谷衣緒が、クレイジーサイコパスだと判明して、クレイジーサイコパスさを存分に発揮するキ◯ガイ具合が本当によかった。
(マチネで、なかなか重要なとこで噛んでしまったのを結構気にされていたのをアフタートークでしゃべっていて、ソワレでちゃんといえてて、よしッ、と思った)

白い服で金髪で、なんとなくおらついてるような雰囲気だったが、喋り始めると澄んでいる優しい声色なのがまたサイコパス。

兄貴はダブルキャストで、一日目の方は淡々としているサイコパスだったらしいのでちょっと見たさあった。

主役の海渡さんは、自分で腹かっさばくとこでの痛そうな叫びがすごいよかった。ずっとしゃべりっぱで、ずっとよかった。


画家役の石川さんを間近で見れたのもよかった。
喋った瞬間に、本物だって鳥肌立った。
2B。ミカサ。その声だってなった。少女ではなく少しやさぐれてる大人だったので、全く違ってたけど。

小林愛香さんは、兄貴に過去に助けられた兄貴信者。
車で画家をひき殺すトコの声量と熱演すごかった。衣緒様に頼まれたから! 小林さんと画家は仲が良い。故に、やってしまった恐怖や、衣織の指示で役に立てた嬉しさに板挟みになっていた芝居だった。


神田さん表情の芝居がよかった。
警戒しているのから、兄貴の人心掌握に懐柔されて優しくなっていく様子もよかった。
椅子に腰掛けながら娘のセリフにニコニコしたりしてたのよかった。

地上げされる人・端役も神田さんが演じられていて、芝居が毎回違うらしく、昼夜でも変わっていた。思わず、これかって笑顔になってしまった。
マチネは声荒げる強めの人で、ソワレは言葉をつまらせながら何とか声を上げる弱めの人だった。

神谷無斗役の土田さんの声がよくて、いいなーってずっと思ってた。前半を引っ張る悪役としてかっこよかった。生き残るために全力で悪いやつでよかった。

舞台には、椅子が人数分あって、みんな座り方も役っぽくてよかった。兄貴は足組んで王者っぽかったし、無斗はどっかり座ってた。座り方からも役が出てるのいい。和久井さんは、台本をほぼみないで、じっと前をむいていた。



和久井さん良い


和久井さんは、神谷家住み込みのお手伝い、雨白雪 役。

私の席は、昼は上手側の3列目。
私は、Xの写真で和久井さんが上手にいたのをみていた。

まさかな……。
開場。ほどなくして、当主が死んでたのを報告するのに、上手からバッと登場した。



よし。



結構、椅子の待機時間があった。
和久井さんは、ほとんどじっと前を向いてた。
台本がひざもとに広げてあっても、ほぼ見ていなかった。

物憂げと言うか決意と言うか、それでもぼんやりはしていない、はっきりとした目だった。

私はずっと見た。
もうずっと見た。

和久井さんはずっと前を睨んでいるような、何かを予見しているような表情で前を向いていた。

なにかあるのか? これは、雨白雪が、なにかあるのか……?
ずっと前を向いているその表情をみつつ、何かが絶対にあると思っていた。
結果的に結構なキーマンではあったが、犯人とかではなかった。前半で死亡したし。

母親のいない主人公。その母親役としてずっと主人公を支えてきていた。優しい人だった。こういう役いい。
別の朗読劇(マグロ釣ってきます)でも母親役だった。
向こうは、一般家庭の豪快さもある母親って感じだった。
こっちは、人に使えている謙虚さと優しさのある母親だった。
いいよね。

セリフ自体は少なかったが、キーになるポジションではあった。
こう言ったらあれだけど、座ってるだけも存在感があって、セリフ以上にどういうキャラクターなのか伝わってきた。
いいよな。

当主に考え直すように、声を上げるとこも、主人公に優しく語りかけるとこもよかった。

個人的に和久井さんの一番の見所は、雨白雪の娘・雨白咲恵が、実は神谷の血筋を持ったちゃんとした主人公の妹だと、主人公が知ったとこ。

雨白咲恵は、主人公の心のささえで、血はつながっていないが妹としてつきあっていた。(名言されてないけど)当主が気を病んでるときに人をもとめ、雨白雪にこさえた子供が実は雨白咲恵で、彼女はホントは神谷の名字と本当の名をもっていたと発覚する。

色々あって雨白咲恵をかばって死亡した雨白雪、和久井さんが、後半に手紙読むシーンで再び出てくる。
その後主人公と、雨白咲恵が、「妹は兄には涙をみせるものだ」と会話してる、その側。スポットライトの当たっていない暗がりの椅子で、じっと娘の背中に視線を送っていた。

その表情は、やっぱり何か思いを秘めている強い視線で、色々と意味を感じて私は泣きそうになっていた。
ソワレの部では、私は結構遠くの席だったが、角度的に娘の影からじっと視線を送る母親の構図になっていた。いいよな。これが舞台のよさだ。

アフタートークで、隣の雨白咲恵 役の 市川美織 さんとなんかワチャッと笑い合ってたのよかった。
脳がバグる。決意に満ちた優しい母親 雨白雪から、普段の和久井優の弾ける笑顔と、純真さがでてると、ふぁわってなる。

やっぱ和久井さんいい役者。


※ちなみに和久井さんは石川さんと仲がよく、師と慕っている。ミットマネージメント所属、オミットガールズである。







また行きたい。

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