得失点分析のすすめ

昨今のサッカー戦術は飛躍的に向上・複雑化をしている。これにより、その解釈をすることが楽しみにもなり、SNSの普及とも相まって、戦術論議が大変に盛り上がっている。しかし、あまりにもそれに傾倒していないか?点を取る、あるいは失点を防ぐための手段、すなわち戦術が得失点にも勝って注目をされすぎているように思える。
 
Jリーグは世界のトップレベルと比べても幾分か、そのレベルが落ちる。こうなると、戦術設計と現実の試合結果はトップクラブと比べても、より大きな乖離が生まれる。簡潔に言い換えれば、戦術上の狙いを説明しようとも(それが重要であることは否定しないが)、勝敗を説明しきれない場合が多いように感じる。
 
こういったことを鑑みると、僕たちは改めて原点に立ち戻ることも、戦術を語ることと同じ、いやそれ以上に重要になってくるのではないか。 サッカーにおいて最も大事なことは何か。それは相手チームより多くゴールを決め、相手チームよりゴールを許さないことだ。
 
このようなことを言葉にもならない、漠然とした印象を持っていた時に目にしたのが、現セレッソ大阪のロティ―ナ監督のインタビュー記事だった。
 

 


「国外のリーグを初めて見る時、そのリーグの特徴をつかむためには2つの方法がある。1つはとにかく多くの試合を見ること。もう1つはより効率的な方法で、ゴールのハイライト映像を見ることだ。ゴールを見ればそのリーグが持つ特徴、チームや選手の質を知ることができる。よって、まず私はJ2のゴール映像を見て、このリーグの特徴を把握した。その後に昨季の東京Vの失点を全て、何度もチェックした。」


この発言から着想を得て、作成したのが本記事で紹介する得失点分析フォーマットである。前置きが長くなってしまった。このフォーマットの概要、特徴を説明していこう。
 
 

 
1.得失点分析フォーマットとは何か?

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得失点分析とは、読んで字のごとく、得点と失点を分析するものだ。ハイライト動画を見ながらフォーマットに情報を打ち込んでいく(上図はそのフォーマット)。目的としては、どのようなパターンにより得点あるいは失点していたかを『具体的なパターン』として把握することにある。得失点はポゼッション、トランジション(カウンター)、セットプレーの3つに分類。ポゼッションとトランジションの区別としては、攻撃を開始してから相手に奪われることなくゴールに至った場合をポゼッション。相手が保持していたボールを奪ってゴールまで至った場合、ルーズボールや相手のクリアを拾ってゴールまで至った場合をトランジションに分類している。
 

 
 
2.得失点分析フォーマットでなにができるのか?

これは、先日大宮アルディージャの2019年シーズンの総括記事を見ていただいた方が早いだろう。


まあ、いろいろと応用もできるので、使い方次第だが思いつくままに列挙してみよう。
①ポゼッション、トランジション、セットプレーでどれだけ得点(失点)したのかが分かる
②具体的な得失点のパターンが把握できる。
③パターンごとの詳細な分析ができる
④具体的な数字を提示しての説明ができる
⑤どの選手がどのように得点に関わっているのか把握できる
⑥過去の得失点をすぐに確認できる
⑦シーズンを通しての分析ができる
⑧他チームとの特徴の比較ができる

 
上述した総括記事はシーズン全43試合(リーグ42試合、プレーオフ1試合)の得失点を入力して分析をした訳であるが、過去に山形とのプレーオフに向け得失点分析をしたのが下の記事で、対象は計11試合の20得点19失点。これでも十分に傾向を分析することができた。(警戒すべき点として挙げていた速攻・カウンター・セットプレーにより失点したことは苦い思い出)
 

 
ただ、恐らく5試合も分析すれば十分であろう。例えば、山形の11試合分、39の得失点を単純に半分にした20の得失点が対象にしたとしよう。これにどの程度時間がかかるのかというと、試しに時間を計って入力してみた神戸と磐田の試合(4-1)の入力には20分かかった。20得点となると、単純計算で80分と、2時間もかからずにできる。この程度の時間で直近5試合の傾向が分かるということであればプレビュー記事も書きやすいと思われる。また、入力は面倒なように思うが、慣れてしまえば単純作業だ。スマホにGoogleドライブとGoogleスプレッドシートをインストールすることでスマホでも作業可能なので、私は通勤時間を利用して入力作業をしていた。
 
 
 


3.得失点分析フォーマットの限界

サッカーの得点シーンを分類しようとすると、定義が難しい。例えば、上図はトランジションに関する入力フォーマットであるが、「ボール奪取の方法」という項目がある。これは文字通り、どのようにボールを奪ったかを入力する項目で、チームでのプレス、個人のプレス、個人技、相手のミス、セカンド回収と5つに分類をしている。しかし、チームでのプレスと個人のプレスをどう厳密に区分すればいいだろう。また、その区分を厳密に守って入力ができるだろうか。このようにどうしても主観に頼らざるを得ない部分があるのが、本フォーマットの未完成な部分だ。
 
また、失点分析において自チームの選手がどうかかわっているか、セットプレーの分類がいまいちできておらず内訳(PKかFKかCKかなど)の区分程度しかできない、等々の課題はある。
 

 
 
4.なぜ得失点分析フォーマットをすすめるのか?


3.でも言及したとおり、このフォーマットは作成したばかりで未完成な部分が多い。自分だけでなく他の人にも使ってもらい、フィードバックをもらい、より完成度を高めていきたいというのが本記事の執筆理由だ。当然、ある程度フィードバックがもらえれば、フォーマットを改善したうえで、使っている人にも改めて共有したいと考えている。
 
また、記事を書くためにはこのフォーマットにより得たデータをどう解釈するかが極めて重要であり、本フォーマットを使っての分析記事が増えれば、応用方法も増えるだろうということも理由として挙げられる。
 
このようにフォーマットを使ってもらった感想なども含めて、使ってもらった方と今後やり取りをしたいと考えていることから、単純にこのブログにてフォーマットを共有することはせず、私にDMを送ってもらえれば共有をさせていただくという形にしたい。
 
サッカー戦術レビュアーの方々、データ分析に興味ある方々など、とりあえずフォーマットのデータを見てみたいということでも構いませんので、どうぞ気軽にご連絡ください!
 
以上

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