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学園アイドルマスターにおけるSlay the spireカジュアル化のジレンマ


学園アイドルマスターをプレイしました。初星ミッションが全部終わったくらいまでやったので、良い点と悪い点をまとめます。

コンセプトがめちゃくちゃ良いです。
「ウマ娘を完コピしつつ、ガワをアイマス!ゲームシステムをSlay the spireにして、運用型にしたら絶対儲かるでしょ!」

総合評価は、すごい良くSlay the spireをカジュアルにアレンジできていて、セールスランキング上位もさすがという感じです。(ただ、月間のランキングをみないと真価はわかりませんが。)

しかし、やや暗雲が立ち込めているようにも見えます。

良い点

1プレイが20分程度で終わる

ウマ娘よりも高速で周回できます。中距離の電車移動でも1プレイが収まるので、生活には馴染みやすいです。育成失敗した時のがっかり感も、サンクコストである時間が少ないので、ほぼノーストレスです。

深く考えなくてもプレイできる

基本的にカードを選択するときも、イベントの選択肢を選ぶときも"どういう結果になるか"が全部UI上に示されるため、迷うことは少ないです。

ウマ娘やパワプロだと選択肢をいちいちググる必要がありましたが、そのテンポの悪さが一切ないです。

わかりにくい特殊効果アイコンも、それをタップすれば効果説明が表示されるので、見たことないキャラ・ビルドでも初見で対応できます。
Slay the spireよろしく特殊効果が多い、かつソシャゲよろしく報酬導線が超複雑なんですが、それを感じさせないレベルでUXが新設設計です。

この点から、開発者のレベルがかなり高いと感じます。

作成したキャラが次の周回を強化するメモリーシステム

仕様がちょっと特殊で、

①クリア時のライブシーンはカメラモードで好きに撮影できる
②その写真から1枚を選び、それをサムネイルにした"メモリー"が作成される
③メモリーは、サクセス開始時に4つ装備でき有益な効果がある

要するに、ウマ娘の因子をいい感じにカジュアルにしたものです。
親馬の継承などめんどいことは省いて、単純にそのキャラがその周回で使っていたスキルカードなどがメモリーにランダムで登録され、次の周回に継承できます。
クリアスコアが高いほど良質なメモリーになるので、周回意欲が湧きます。

”ライブシーンの写真を周回ルーンにセットし、思い出として保存する。それは次のキャラが装備できる。”

エモさ100点の仕様です。
こんな仕様、仮に思いついても普通の現場なら「そこまでやります?」って感じで通りにくそうです。
これを通してるのがクオリアーツらしく、素晴らしいです。

実際にキャラが歌や踊りがうまくなっていく

他のゲームにない、学園アイドルマスターがこの世ではじめて開発した独自要素です。
クリア時のライブシーンで、実際に育成したキャラのボーカル値やダンス値が参照され、歌のうまさや踊りのうまさが変わります。

元祖アイマスだと、ライブシーンの歌も踊りも1パターンで、パラメータは素人レベルなのにライブだと完璧!という矛盾が解消されています。

とんでもない情熱です。

悪い点

リプレイ性が少ない

このゲーム最大の欠点です。
このゲームが廃れるとしたら、理由はもうこれしかないです。

Slay the spireはリプレイ性が120点のゲームで、1000時間周回しても全く飽きないことが武器です。
これがカジュアル化・運用型にしたことでかなり消えています。

ビルド幅が狭い

大まかなビルドが
①大ダメージで押す好調&集中型
②毒ダメージの好印象型
③シールドバッシュのやる気&元気型

この3つくらいしかないです。
9人のアイドルで初期スキルカードや初期レリックが違うのですが、スキルカードの幅が狭いのでこれしかないです。

Slay the spireみたく「普段は弱いパーフェクトストライクビルドだけど、序盤で"ストライクダミー"を引いたからクソ強い」みたいな、状況に応じた強さは無いです。

なぜなら、SSRアイドルカードは初手スキルカードや初期レリックが固定されているため、目指すビルドが1個しかないからです。
そのビルドに必要なカードを引くか引かないか、でしかないです。

ランダム性が無い

>SSRアイドルカードは初手スキルカードや初期レリックが固定されている

つまり、課金とメモリーによって構成を固定できるので、あとはもうその構成に相性のいいランダムスキルカードを集めるしかないです。

致命的なのは、「レリックの取得がランダムじゃない」点です。

Slay the spireだと、

①エリートエネミーを倒したときにレリックをランダム入手
②ショップに並ぶレリックがランダム入手
③イベントマスでレリックをランダム入手

で、周回ごとにレリックに合わせて集めるカードを変える必要があります。

しかし、学園アイドルマスターの場合、

①中間試験の3つのレリックは固定。
(つまりキャラによって選ぶものが決まっている)
②ショップにレリックが無い
③おでかけ(ランダムイベント)ではレリックが手に入らない

ので、レリックのランダム性は皆無です。
セットしたSSRについてる固定レリック入手イベントが、発生するかしないか、だけ。

つまり、レリックの入手が課金に依存しているがゆえに、プレイングでなんとかするというアドリブ感が消えているのです。

SSRは強スキルカード初手固定できるので、周回ごとの戦略は無い
強スキルカードはPLvが上がらないとゲーム中に登場しないのもSlay the spireファンからするとキツイ

ライブの見た目が豪華になっていかない

ウマ娘の優れた世界観演出として、「サクセス初期は新馬戦などの雑魚レースに参加し、後半はウマ娘の体力や能力を見ながら、G1重賞に行くのか、G3で安パイを取るのか」という戦略性がありました。

つまり、ウマ娘が成長すればレースの舞台が大きくなり、演出や名誉も派手になる。
ユーザーは自分のウマ娘を育てた結果、より大きな成果を手にできていることがめちゃくちゃわかりやすかったのです。

これは元祖アイマスも同じで、プレイに慣れていないころはドームは夢のまた夢ですが、何度も周回して育成に慣れていくと大きな箱で勝ってライブシーンを見ることができ、アイドルの成長を実感できました。

この「育っている演出的実感」が、学園アイドルマスターには不足しています。

溢れでる学祭の練習感

>実際にキャラが歌や踊りがうまくなっていく
これは素晴らしい機能なのですが、どんなにパラメータが上がろうが、最後のライブシーンは必ず学園内のライブステージ固定です。(※true endのみライブドームになります)

これが、思ったよりずっとずっとしょぼい。

学マスのPVでは観客いっぱいのライブドームでキレキレで踊ってるので、キャラとか一切興味ない素人の私が見ても「おお~!なんかすげ~」って感じになります。
旧アイマスもそうでした。

しかし、学マスはどこまでいっても”文化祭ライブ”で観客もまばらなため、ちゃちい感じが否めないです。

まとめ

上記懸念点を総合すると、学園アイドルマスターはすぐに「なんかパラメータ数値を上げるだけのゲーム」という実感になってしまいます。

しかも、1周回が短くランダム性もないため、同じキャラを回すと同じことの繰り返し感がものすごく強くなります。
SSRキャラ・サポカの入手が無い無課金の場合、”次回の周回で全く伸びしろが無い予感”がすぐに来てしまいます。

初期のウマ娘と同じですね。
キタサンブラック3凸以上が無いと、何度周回してもAランクにならないだろうな、という虚無感。あの感じです。

学園アイドルマスターをプレイすると、ウマ娘の「レースという勝負の場でちゃんとバトルしてる演出がある」「強い奴に勝つことで成長している実感がある」ということは、ものすごく大事だったんだな、ということを痛感させられます。

最初に書いた通り、"Slay the spireをカジュアルにアレンジ"という要件は見事に達成できており、きちんとセールスランキング上位のスタートダッシュを切っていることはさすがです。

しかし、この勢いが半年、いや2か月続くかさえもやや疑問です。

少なくとも、アイドルマスターが好きで取り敢えず課金もしてみた私でさえ、このアプリをウマ娘より長くプレイする自信がまったく湧きません。

このビジネスモデルなら、キャラは定期的に追加していかないといけません。

ですが、ゲームモデルをSlay the spireにした時点で、いくらカジュアルとはいえレリックとスキルカードの組み合わせは膨大です。
何か一つ壊れパーツを追加しただけで、すべてが破綻しそうです。
これらをうまく運用していくには、相当なゲームデザイン力が要求されます。

ここからどう新特殊効果・新スキルカードを実装してビルド幅を増やしていくのか、開発陣の手腕に注目したいです。

終わり



以下まとまらない雑感

「じゃあ、対案どうすんねん」って話なんですが、むずいです

周回のランダム性を増やしてSlay the spireに近づける
→レリックを売らないで課金回りますか?
→ビルド失敗したら中間試験に負けるゲームになりますが、スマホユーザー耐えられますか?

で、現状が最適解の可能性はある

私の理想形はスレスパをほぼコピーしたまま、ヒーローの最大HPや初手強化カードや初期装備レリック2~3個をガチャ売りすることだけど、それで収益が回収できるかはかなり謎

アイアンクラッドの最大HPを2増やすのに期待値3000円です、みたいなインパクトだと誰も課金しないと思うし、学マスは間違ってはいない

Slay the spireに萌えのガワかぶせて運用型にした社会実験としては、とても興味深い結果でした

結局、Slay the spireゲーは完コピに近ければ近いほど良いというのは自明だが、それだと無料で遊べちまうんだって話なので、ガチャゲーにはならない


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