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予行練習できない世界線

束の間の連休が昨日終わってしまった。
地元に帰って特に約束していないのにすぐ会えて遊べる友達を持って幸せだと思った。
そんな繋がりが環境があることに安堵した。

風が少し強い日だった。
幼馴染の家の倉庫で同級生先輩たちみんな集まってバーベキューをした。
飛び入り参戦、こいよこいよ、温かく迎えてくれるみんな、初めましての人もたくさんだった。久しぶりの友だちに会えて、あーでもないこーでもないと、知らなかったここ数年の出来事に耳を傾けていた。

いつもは気乗りしないお酒が喉を通っていた、一缶、もう一缶、くしゃっと不恰好に潰された空き缶が溜まっていた。わたしは気分がよかった。立ち上がるとふらっとして、あっ酔っているなとわかった。先輩がアスパラベーコンを巻いていた、お酒が飲めなくて甘党な人らしい。そこに幼馴染と応援をして席を外した。

寒くない?と幼馴染は気にかけてくれた、「うん、大丈夫」とだけ言った。
お酒は足りなくなって人が増えたので途中で買い出しに行った。幼馴染も一緒だ。
隣に座ってくれた。

最後は妹のためにと買いすぎた花火をこれでもかと消費して、飲み会を終えた、その頃にはすっかり寒くなっていて上着を着ていた。

一度自宅に帰り、妹を帰した。
夜の8時良い子はおうちに帰る時間だ。
一緒に入れない姉を許してと、またあの倉庫へと戻った。
戻るとバックミラーに映った友達が全裸で砂利の上に寝転んでいたが、目を瞑って遮断した。
笑いながらも、目を塞いでくれた。

飲み直すぞーといったことないスナックに入る。
結婚した同級生の奥さんと仲良くなった。
これまた良い子で面白そうな人だった。
もっともっと知りたくて仲良くなりたくてインスタを交換した。仲良くなったきっかけはなんでもよかった。それがポッチャマの色違い厳選するんですよね!?と聞かれたことでもなんでもよかった。

シラフでついてきた同級生と、先輩たちが帰っていった。最後に残るのはカレカノがいない残り物の3人だった。私と幼馴染と友達だ。

幼馴染は私の隣に座っていた。
あれ?距離が近いなとは思っていた。
でも普段に比べるとあまり酒が入っていないようで、兄にも友達にも、今日のお前なんか、酔ってなくない?飲んでなくない?と何度も指摘されていた。
小指が触れていた、頭をポンとされた?
わたし拒絶していなかった、酒の席だから?
嫌な奴は本能的に避けるはずなんだが、おかしいなと。

お手洗いに行ったすきに会計は済んでいた。いいよと2人が言う、お言葉に甘えて、肌を冷やす夜風に触れて3人で帰路に着く。そこで初めて写真を撮ったが、写真はブレて真っ暗で、目の開かない笑顔と髭面が2人写っていた。友達は〆るんで、送ってこいといい、家までの150m幼馴染と帰路に着く。

たった150mが長いのだ。
幼馴染歩幅急に狭いぞと。
距離は近くなっていた。
ゼロ距離だ。

好きだと言われた。
ずっと可愛いなと思っていた。
頭をぽんぽんしたくなってしまう。
わたしがやりたいことは応援する。
遠くても俺が会いに行く。
俺の友達たちとも仲良くできて心配がない。
嫌ならこなくても、1人で遊びに行く。
嘘じゃないと。

突然の幼馴染に告白される世界線、予行練習なんてしていない、酔いの回ったわたしもすっかり冷めてしまった。

それでもわたしは久しぶりに愛を伝えられて、あぁこんなに素敵な人って本当にいるんだと思った。あいつはいつだって、会いにこなかった。会いにくるのは別れを告げる時だけだったから。
そんなことを思い出しては、ヒールを履いた私よりも背の高い安心してしまう幼馴染の胸で少し泣いてしまった。もう少し早く会いたかったと、もう私は帰ってしまうよと。

人生はうまくいかない。
昨日高校の友達と、結婚って何?
無理じゃない?まだまだできない笑
といっていたばかりなのに、急に恋の種は降ってくるのだ。
自分次第で水をやることも種から花にすることも出来そうな恋愛がそこにいまあるのだ。

何を悩んでいるのか、分かるようでわからないようで、わかるけど認めたくない。
幼馴染圧倒的に良い奴なのだ。
悪いところが見当たらない。
もう少しカオがタイプならなぁくらいだ。
私の中にまだ残っている罪悪感が私を引き止める。
元彼がまだ好きか、忘れられるのか、超えてくれるのか、踏み出さないとわからないだろうと、そんな浮ついた気持ちで受け止めても良いのか。
考えることが一気に増えた。

地元に戻って、幼馴染と幸せになって。
みんなで釣りしてキャンプして、また酒を飲んで、毎日のようにバーベキューをして、笑って、あー悪いとこないなと…
家族もいる自然もある、それでも捨てきれない都会での暮らしとエゴ見知らぬ人との恋あるいは経験した恋…

自分にとって何が1番大事なのか、考えるきっかけとなってしまったあの日から、今も悩み続けている。それでもたしかに、LINEを密かに楽しみにしている、私がいるのも。事実である。

はじまるかもしれない。

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