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父親にプレゼントしたバイスプライヤー

自分が小さい頃から金属部品がカチャカチャ動く事に関心を持っていた。何故かは分からない。たぶん父親の影響と思う。
父親が建築デザイナーで家系が鋳造工場である環境のため「何かをデザインして創る」というのが上手い人だ。そんな父親とその周囲にある工具や道具に惹かれていたのだと思う。
ある日、母親の案で父親の誕生日プレゼントを贈ろうという流れになり、母親と自分と兄の3人でホームセンターに行った。工具系が好きな僕はプレゼントの事を頭の片隅にどけて無心に色々な工具を触っていた。その中で一番カチャカチャ動かせて楽しくて格好良かったのがバイスプライヤーだ。僕は母親に「これにする!」と良いプレゼントを決めた。母親も自分も何の道具か何も分からない謎の工具。正直、僕自身も父親がこれを貰って喜んでもらえるかすら分からない。自分の感性のままに選んだ。
その後の事は覚えてない。たぶん優しい父の事だから喜んでいたと思う。

それから十数年。僕が一人暮らしをすると決めて荷造りをしてた時、工具一式が欲しいと思い父親に相談した。余っている工具を何個か貰おうと。
そしたら父親が「これ凄く便利だよ」と差し出したのが小さい頃に渡したプレゼント。名前はバイスプライヤー。色んなものをはさんで固定したり止めたりと使い方が幅広い。父親は当時の感性で渡したものを十数年大事に使いこんでくれて嬉しかった。そして自分が独り立ちした際にその道具が自分の手元に戻ってきた。
なんとも言えない縁を感じた。感情を言語化出来ないが凄く温かい気持ちになれた。そんな思い出深い工具。バイスプライヤー。

これを書いてる時に手元に置いてカチャカチャしてます。
金属の可動も惹かれるけど、何だか動物の骨格みたいな見た目もあって可愛い工具だと思う。小さい頃、無数にあった工具コーナーからバイスプライヤーを選んだのはそんな複合的な惹かれる要素が自分の感性に触れたんだと思います。

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