見出し画像

ハイテンションを逆手にとったサンシャイン池崎から、芸人の”職能”を学びとる。

自分を客観視するってむずかしいし、客観視できたときの自分をどう生かしていくかってのは工夫がいる。自分が思う(見せたい)自分と、他人が思う自分、この二つをどのように嚙み合わせていくのかを考えるとき、ぼくは芸人の姿に目を向けるようにしている。その例として真っ先に思い浮かぶのが、サンシャイン池崎だ。

サンシャイン池崎は、「イエー!」「ジャスティス!」などシンプルな言葉を金切り声で腹の底から出す、勢いのある芸風で知られている。実は、勢いだけでなく、巧妙に練りこんだネタを持っている。『記憶喪失』は、まさにそうだ。

このネタでは、稽古中に頭をぶつけ、記憶を失った池崎自身が、自分が何者なのかを探っていく。”サンシャイン池崎役を本人が演じる”一人コントである。

目が覚め、記憶がないことに気づいた池崎は、自分の部屋にあるものを手掛かりに少しずつ、自分の正体を明らかにしていく。

ファンレターを見つけて読み上げると、最初に映る文字が「サンシャイン池崎さんへ」だった。それに対して池崎は、「おれ、ハーフか?」と口にする。笑いが起きる。

次に、衣装を見つけ、新たな推測をする池崎。「おれ、スポーツ選手か!」。ここでまた笑いが起き、さらに、ラケットと思って手に取ったものがサンシャインブレード(というRPGに出てくるようなデカめの剣)で、戸惑いながらも「おれ、バカなのか?」とつい漏らしてしまう。笑う声のボリュームが一気に上がる。

極み付けは、ネタ帳を見つけ、自分がお笑い芸人だと気づき妙に安心した池崎だが、ネタのつかみを読み上げると、次の言葉を漏らす。「イエーイ多いなあ」。どっと笑いが起きる。

さらに「昔々浦島は助けた亀をブーメラン」と書かれた一発ギャグに対して「これおもしろくねぇなぁ」と一蹴する池崎。多分に漏れず、ここでも一笑いが。

つまり、このネタは、自身の異常とまで言えるハイテンションキャラを自虐することで笑いに変えている。これは、「勢いだけでお笑いをやっていそう」という世間一般の彼のイメージを逆手にとっており、みんなが思ってそうなことをあえて(記憶喪失の)自分で口にしていることが面白いのだ。

(ただ、サンシャイン池崎の芸風を知らないとなかなか笑いにくいのは事実で、だからこそ、認知度を考慮して、2017年のR-1グランプリ決勝でこのネタは出さなかったのではないかとぼくは思っている)

客観的に「自分(の芸風)がどう思われているのか」を冷静に分析し、ちゃんと汲み取っているからこそできるこのネタは、池崎が戦略的に芸をつくり上げているという証明ではないだろうか。

そういった自己分析力が欠けている芸人には面白いネタはつくれない。東京03やアンタッチャブルが所属する人力舎には、スクールJCAという芸人養成所がある。

その最初の授業では、生徒一人が自己紹介をした後、その人がどのような人に見えるかを、講師が他の生徒に問いかけていく。「ナルシスト」「爆弾つくってそう」など、若干ネガティブな声も上がることもある。

しかしこれが、自分が思う自分と他人が思う自分の差異を理解することにつながり、芸風/ネタづくりに役立つのだそうだ。

「自分が何者であるか」という問いを深めたいとき、サンシャイン池崎の姿をはじめ、芸人のあり方から学べるものは多いように感じる。ここではその一つとして「(自己)分析力」があった。芸人という職業でなく、芸人の”職能”に注目して、その思考/技術を因数分解できるようになりたいなー。

そういえば、サンシャイン池崎の「空前絶後の~~」という常套句ネタや、時折おどけた顔でするマッスルポーズは、『天元突破グレンラガン』からインスピレーションを受けて生まれたんだとか。どこにヒントが転がっているかわかんない。ほんと、物は考えようってやつだなぁこりゃ。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

もしも投げ銭もらったら、もっとnoteをつくったり、他の人のnoteを購入するために使わせてもらいます。

大見謝
16
ケケケ(という屋号) / 編集思考で地域にたゆたう / 百姓2.0 / ローカルプランナー × バーテンダー / 元ライター / 芸能と民俗と風俗 / ことばと思想とコミュニケーション / "そうじゃない"選択肢を / なで肩

この記事が入っているマガジン

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。