見出し画像

アントハード 二話 【創作大賞2024 漫画原作部門】

二話

結縁大和『またすぐ来てしまった、この家に。いや、いつでも来てって言われたし。ご飯食べに来てって言われたし。そもそも名前もあやふやのまま帰っちゃったから俺が来る以外話せないしな』
結縁大和がインターホンを押す
結縁大和『今日はバイトないから夕飯頂いて帰ろう。名前と連絡先も聞いて…』
剣重恵介「帰れ」インターホン越しに
結縁大和「また来てくれって言ったじゃないすか〜!」
剣重恵介「俺は許してない」
結縁大和「そこを何とか!名前も聞いてないんで!名前聞いて夕飯頂いたら帰るんで!」
結縁大和「て、インターホン切れてんじゃん」『外に1人で騒いで恥ずかしい』
犬太郎が門に近づく
結縁大和「ワンちゃん来てくれたの〜?可愛いな。ご主人様呼んできてくれる?出来ればあのイカつい感じの筋肉の人!」『あの人は歓迎ムードだったよな』
犬太郎「ワン」と言って門越しにおしっこをして家へ戻っていく
結縁大和「うわ、おしっこ!何だよあの犬!」
海馬佳乃「なんで来た?」外から声をかける
結縁大和「佳乃さん!良かった〜、誰も入れてくれなくて。犬にもおしっこかけられるし」
海馬佳乃「あはは、臭うからシャワー入らしてあげる」門を開ける
結縁大和「ありがとうございます!ついでに夕飯もいいすか?うち今日適当に食べろって言われてて」
海馬佳乃「あんた図々しいね」
結縁大和「あざーっす」
海馬佳乃「褒めてないわ」2人で家に入る
海馬佳乃「ただいま、ハルちゃん夕飯1人増えたよ」
叶ハルヨ「あら、いらっしゃい。どなた?」
海馬佳乃「前に来た私のストーカーよ」
叶ハルヨ「はて?今日は肉じゃがよ」
結縁大和「結縁大和です!お邪魔します、いただきます!今日他の皆さんいないんすか?」
海馬佳乃「家にいるけど皆それぞれのことしてるんじゃない?鰐口はジム、他は自室にいるんじゃない?」
結縁大和「まじでこの家広いっすよね、金持ち羨ましい」
海馬佳乃「家主があれだからね」
結縁大和「家主ってあの車椅子の?」
黒星雫「そうそう、僕が家主さ。いらっしゃい大和くん」
結縁大和「お邪魔してます!」
黒星雫「そう言えば自己紹介してなかったね。僕がここの家主の黒星です。何かわからないことがあったらいつでも聞いてね」
結縁大和「はい!」『改めて見るけどめっちゃ美男子だよな、何者なんだこの人』
叶ハルヨ「そろそろご飯出来るよ」キッチンから聞こえる

ダイニングテーブルに夕食が並ぶ
黒星雫「あれー?また恵介くんと勇くんがいないじゃん。ご飯は皆で食べないと美味しくないっていつも言ってるのにな」
結縁大和「俺呼んできますよ」
扉が開く
鰐口勇「遅くなりました。シャワー入ってて。結縁来てたのか」
結縁大和「はい!あ、俺シャワー借りるんだった」
海馬佳乃「もう夕飯だから足だけ洗って来ちゃいな。服は剣重の借りれば?」
結縁大和「そうさせてもらいます」
海馬佳乃「剣重の部屋は2階の左端ね」
結縁大和「すぐ終わらせてきますね」

階段を登り剣重恵介の部屋へ行き、ノックする
結縁大和「結縁大和です!夕飯出来たので皆待ってます」
剣重恵介「帰れと言ったろ?」扉を開ける
結縁大和「すいません。夕飯出来ましたよ」
剣重恵介「お前、臭うぞ。手は洗ったのか?」
結縁大和「そういえばまだでした。ワンちゃんにおしっこかけられちゃって。それで足洗いたいんでズボン貸してもらっていいですか?」
剣重恵介「これだからこの家は…。いいか?この部屋には絶対に入るよ。何があってもだぞ」
結縁大和「はい、わかりました」『何だこの人。怖』
ズボンを奥から持ってきて投げる
剣重恵介「返さなくていいからな」
結縁大和「いや、そんな。綺麗に洗って返しますよ」
剣重恵介「いらん。他人が履いた物をもう一度履くわけないだろ」
結縁大和「はい、すみません」
扉がバタンと閉まってまたすぐ開いてアルコールスプレーを扉の前にかける剣重
剣重恵介「シャワー室は右の奥だ」と言って下へ降りる
結縁大和「はい…」『何かかけられた』

結縁大和「戻りました!」
黒星雫「待ってたよ。では頂こう」
全員「いただきます」
黒星「ん〜、ハルヨさんの味噌汁最高!肉じゃがも味が染みてて美味しいよ♡」
叶ハルヨ「今日の味噌汁は黒星さんが好きな大根にしましたよ」
黒星雫「いつもありがとう」
結縁大和「超うまいっす!米おかわりしていいっすか」
鰐口勇「喉つまらすなよ」
剣重恵介「汚い食べ方」
結縁大和「うちの母さんの肉じゃがはいつも豚肉なんですけど牛肉も美味いっすね」『金持ちの家なのに料理は家庭的だな』
海馬佳乃「私の家も豚肉だったな…」
結縁大和「このシェアハウスって家賃高くないんすか?こんな豪華な家で美味しい飯付きだと学生の俺には到底住めないと思うんですけど」
全員「⋯」
黒星雫「家賃はもらってないんだ。有難いことに僕はお金に困ってなくてね。このご時世だし、住むところと食べるものぐらい支援したいと思って」
結縁大和「神ですか?」『神すぎない?こんな所があるなんて。ニート生活も夢じゃない!』キラキラした目で
海馬佳乃『こいつ馬鹿だな』
黒星雫「僕は神じゃないよ。人間という素晴らしい生き物に感謝してるんだ」
剣重恵介「タダより高いものはないぞ」
結縁大和「俺やっぱここに…」
海馬佳乃「補助役って言ってたよね?ほんとにこいつ入れるの?」
剣重恵介「どこにでもいる学生だぞ、馬鹿の」
結縁大和『今俺の事馬鹿って言った?この人』モグモグ
黒星雫「正式にとは言ってないよ。でも使いようによっては良いスパイスになると思ってね」
海馬佳乃「この馬鹿が?」
結縁大和「佳乃さんまで?」
黒星雫「10代のキラキラしたあの目に惹かれちゃってね」
結縁大和「19歳ですが、20歳になっても心は10代です」
剣重恵介「馬鹿は足を引っ張るぞ」
鰐口勇「っくくく」笑う
結縁大和「まだ会うの2回目で酷くないすか」泣き面
黒星雫「僕も本調子じゃないし、人手も必要だと思ってね。とりあえず来週の木曜、大和くん来てくれるかな?」
海馬佳乃「こいつも訓練に立ち会うの!?」
黒星雫「そりゃあ、見たからにはね?」
結縁大和『あのバグのことか?』「はい、是非行かせていただきます!」

木曜日
結縁大和『海馬さんにパン屋来てって言われたけどパンくれるのかな。早くバグが何か知りたいんだけど』
結縁大和「おはようございまーす」
海馬佳乃「おはよ。朝食べてきた?」
結縁大和「プロテインだけ飲んできました」
海馬佳乃「甘い系としょっぱい系どっちがいい?」
結縁大和「甘い系でお願いします!」
海馬佳乃「一丁前のプロテインが台無しだね」

結縁大和「海馬さんって何でパン屋さんなったんすか?」モグモグ
海馬佳乃「千鶴が美味しいって言ってくれたからかな〜」
結縁大和「千鶴って誰すか?」
海馬佳乃「ここの店員で私の親友」
結縁大和「あの人千鶴さんって言うんですか!」
海馬佳乃「千鶴可愛いでしょ〜」
結縁大和「はい!めちゃくちゃタイプです」
海馬佳乃「まぁ結婚してるけどね〜。さ、やりますか」
結縁大和「ショックレベル100なんであとパン5個食べてもいいですか」泣き面
海馬佳乃「もう時間だからお持ち帰りでお願いしまーす」
結縁大和「えーん。て、何するんすか?」
海馬佳乃「あんた、あの家のこと覚えてるよね?」
結縁大和「あんなでかい家忘れるわけないじゃいですか」
海馬佳乃「よし、じゃあやってみるか」
海馬佳乃が鰐口勇にテレビ電話する
海馬佳乃「今からするねー」
鰐口勇「いつでもどうぞ」
海馬佳乃「これ持ってて」結縁大和にスマホを渡す
結縁大和「え?」受け取る
海馬佳乃「お邪魔します」目を瞑って手を合わせる
海馬佳乃「…玄関」しかめっ面で苦しそうに言う
鰐口勇「玄関だな」
結縁大和『何してるんだ?』
スマホ越しに海馬佳乃の姿のバグが玄関にいるのを見る結縁大和
結縁大和「うぇ!?ど、どどどういうこと?へ?2人いる佳乃さんが?」スマホと目の前の海馬佳乃を見る
鰐口勇「丸見えだな」
海馬佳乃「やっぱ見えるよね」
鰐口勇「このスリッパ掴めるか?」持ってるスリッパを海馬佳乃の手に近づける
海馬佳乃「流石に持てないわ」バグの海馬佳乃の手を通り抜けるスリッパ
結縁大和『あの時と同じだ。意味わからんくて言葉も出ねえ』
鰐口勇「じゃあキッチンまで歩いてみろ」
海馬佳乃「歩いてるつもりなんだけど」その場で足踏みする
鰐口勇「移動も難しいか」
剣重恵介「普通に歩くんじゃないよ」鰐口勇に近寄る
剣重恵介「記憶を歩くんだよ」
結縁大和「記憶…?」
鰐口勇「いいぞ、その調子だ」海馬佳乃が歩いてキッチンまで行く
到着したところでバグが消えパン屋で海馬佳乃が倒れ込む
結縁大和「佳乃さん!」
鰐口勇「大丈夫か、海馬」
結縁大和「何なんですか、これ」海馬佳乃を抱えて心配そうに言う
海馬佳乃「一瞬気失ったわ〜」
鰐口勇「今日はもうゆっくり休め」
海馬佳乃「昼飯までには帰るね」
鰐口勇「結縁、海馬を頼んだ」
結縁大和「はい」電話が切れた
結縁大和「大丈夫すか?」
海馬佳乃「冷蔵庫から水取ってきて貰える?」
結縁大和「はい」

休憩室で寝る海馬佳乃
海馬佳乃「頭痛い」
結縁大和「何なんすかあれ」
海馬佳乃「意味わかんないよね、あはは」
結縁大和「マジックってわけじゃないすもんね」
海馬佳乃「世界目指してるの」真剣な眼差し
結縁大和「もう世界取ってますよ」
海佳乃馬「ありがとう」
結縁大和「俺、そこまで馬鹿じゃないすよ?」
海馬佳乃「そうなの?あれは結縁の記憶に入ったの。そこから移動出来るか練習中」
結縁大和「えーと、俺が馬鹿だから言ってること分からないんすかね?」
海馬佳乃「昨日の晩飯覚えてる?」
結縁大和「え?昨日は、確か…」
結縁大和、海馬佳乃「オムライス」
結縁大和「なんで…」
海馬佳乃「月曜テレビなにみる?」
海馬佳乃、結縁大和「月曜から早起き」
結縁大和「エスパーなんですか!」
海馬佳乃「そんな感じってことで帰りますか」
結縁大和「俺もエスパーなりたい!」





#創作大賞2024
#漫画原作部門
#少年マンガ
#ヒーロー漫画
#SF漫画

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?