赤茶色に枯れた大地を見ていた。地平線までずっと続く赤を。 雲一つない青空とその下に広がる暗い赤がせめぎ合っている。 この赤い地平線の向こうにくそったれの大元が佇んでいる。直接見たことはないけど。 「観測ドローンからの情報は——」 見ればわかる。完全な無風。 相棒を地面に突き立て、地平線をギッと睨みつけてやった。 「今日こそぶち抜いてやるからな…」 「観測手の言うこと聞いてよ…」 ——絶好の狙撃日和だ。 空からあのくそったれが落っこちてきたときのことは何も知ら
むつぎはじめ氏の個人企画、【むつぎ大賞2024】参加作品です。 突き上げるような揺れに、目の前でまどろんでいた男が飛び起きた。きょろきょろと首を振って周りを確認してから、また首を沈めるようにして眠りへと戻っていった。 この路線はいつもひどく揺れている。大きな車体を動かすために多くの馬力を使っているからだ、と昔どこかで聞いた。 駅を出た頃には乱雑だった揺れはそのうち一つのリズムへと揃っていく。まるで多くの馬の足並みが揃うように。 実際、この車体は馬たちの力で動いて
洋上を白い紐が進んでいるように見えた。 <こちらフォアランナ、目標を視認した。どうぞ> <こちらアイランドⅡ了解。これより管制をロングノーズに引き継ぎます。通信終了> <こちらAWACSロングノーズ了解。高度と方位を維持し引き続き観測プロトコルに従って目標に接近せよ。どうぞ> <フォアランナ了解。通信終了> 簡単な観測任務になりそうだった。どこからか現れる巨大飛行生物をお帰りになるまで観察する、いつものお仕事。 <こちらフォアランナ、目標の観測点に到達。どうぞ> <こ
ゴーグルは白く凍り付いていて、視界がほとんど真っ白だった。 「本部、こちらエクスプローラ04。俺以外のエクスプローラ隊全員と連絡が取れない……本部応答せよ……本部?」 氷点下の領域に突入して4時間が経過していた。他の隊員との通信は全て途絶、それどころか後方の拠点との通信すら途絶していた。 雑音しか聞こえない無線を切る。大きく息を吐こうとして思いとどまった。いくらマスクをしていても、氷点下の吹雪の中でため息なんかつけばきっと喉の奥まで凍る。 見回せば建物の影に倒れてい
むつぎはじめ様の個人企画【むつぎ大賞2023】参加作品です。 ◇ ◇ ◇ 傾いたビルから樹の幹が溢れている。寄りかかられた隣のビルは幹と蔦に覆われ、巨大な樹の一部になあっていた。敷かれたアスファルトはほとんどが草や低木に突き破られ、残っている場所を探す方が難しい。ブーツの下で、アスファルトの欠片が砕けた、 第56次人類捜索作戦、行動開始より61日目。今回通りがかった廃墟は大規模だった。 片側4車線の大通りに100mを超えるビル群、地下鉄の入り口には土砂が流れ込み、地