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#文サお茶代_3月のジユー課題

【課題】
あなたが好きな音楽家を一人(一組)選び、その魅力を1000字以上で自由に語れ

アーバンギャルドについてテキストを書くとき、「前衛都市」の名のもとに、なるべく実験的な試みで言葉を綴ってきた。
文字数を揃えたり、韻を踏んだり、いつも何かしらの課題を設けながら創作しているのは、ウォーホルが並べたスープの缶詰みたいにしたいと思ったからだ。

改めて文字にしてみると、我ながら「縛りプレイ乙」という気持ちになってくるが、それは私にとっての自由でもある。
普段から規範意識に囚われまくりの人間なので、「お題」という不自由があると救われる。だから今回は、そんな自分のたくらみを明け透けにして臨もうと思い、この前置きを載せることにした。

以下に書くのは、コラージュを模した短い劇中劇——あるいは、思い通りにいかない頭と身体のスケッチとも言える。

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アーバンギャルドについて話そうとするとき、私はいつもとんちんかんで、無性に格好つけたくなる。
ふさわしい言葉がなかなか出てこなくて、やきもきしてしまって、その魅力をうまく伝えることができない。

ふさわしい、なんて本当に大袈裟なことだけど、どうしても簡潔に好きを表現することができない。
ホールケーキならいざ知らず、目の前に三段重ねのウェディングケーキが運ばれてきたようなもので、デザート用のカトラリーしか持たない私は切り分けることに躊躇して、誰かのお皿に盛り付けることができない。

私はずっと、綺麗な文章が書きたいと思っていました。
耽美的とは当たらずしも遠からずで、たとえば、泥団子を磨いてピカピカにするように、人間の持つ汚さを、とびきり美しい文章で表現したいと思っていたのです。

アーバンギャルドについて語ろうとするとき、私たちは自らの過去と真摯に向き合わなくてはならない。
何故なら、「私たちの青春はあなたたちのもの」だから。
アーバンギャルドについてより深く知るためには、彼らと「青春」を共有する必要がある。

思春期の女の子が抱える闇とは、この世で一番忌々しく汚いものです。
あなたはその薄汚い塊を、ホイップクリームでデコレーションし、色鮮やかなケーキへと変えてしまいました。

アーバンギャルドについて思いを馳せるとき、心が痛むことがある。
その痛みは、荒れた喉でツバを飲むときに感じるものとよく似ている。
彼らの歌は心の炎症にひどく染みる。「アーバンギャルドはロキソニン系だ」という文言もあったが、その効き方は限りなくムヒに近い。

女の子たちは美味しそうにケーキを食べます。恐ろしい毒を摂取していることに、彼女たちは気付いているのでしょうか。
けれど、それは予防接種と何ら変わりはありませんでした。
汚い闇が美しいケーキに生まれ変わることで、女の子は自然に病みを受け入れ、それを糧にして強くなることが出来るのです。

アーバンギャルドについてテキストを書こうとするとき、私は二次創作ばかりしてきた。
それは、病的にポップな作風に敬意を表するとともに、自分も文学クローンさながらに「青脂」を産み出したいと思ったからだ。

あなたの作品は、私の理想そのものでした。
わたしになれない、あなたになれない、苦しみの中で日々を生きています。

アーバンギャルドについて語ろうとするとき、私たちは自らの過去と真摯に向き合わなくてはならない。
なのに私は、未だに自分自身と向き合えずにいる。

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