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わかっているけど改善できない日本のすばらしい文具の悩み

先日、ちょっと打ち合わせがあって本の問屋(取次)大手のトーハンさんにお邪魔したときに思ったことを書きます。当たり前のことで、わかっている人はわかってて、わからない人は今後もわからないままかもしれないけれど、どちらの人も何か手を打たないといけないことなので自分が忘れないようにメモっておきます。

訪問の本題は他のことだったのですが、「ちなみにノウトさんはどんなものを作っているの?」という話になり、うちの商品をズラリと並べたところ、思っていたのとは少し違う反応でした。「見ただけだと何なのかちょっとわかんない。」的な。

そう、ここなのです。

作った本人や関係者は、当然のことながらその商品のことをよく知っていますから、「どうです?おもしろいでしょ?」という気持ちになってしまうのですが、初めて見た人はまず間違いなく「ポカーン」です。

ある意味、凝って工夫を重ねてものづくりをしているからこそのジレンマかもしれません。

ご存知のように、日本の文具雑貨というものは、アイデアに溢れ、緻密で非常に優れたものが多く、海外にももっと知っていただきたい日本の「文化」です。

実際は、海外の文具ユーザーは総じてこうした「細やかな配慮の行き届いた文具」には興味がなく、失礼な言い方ですが「がさつな文具」で十分であるということもよく聞きます。

しかし、少数でもそういった日本的文具を好きな方もいるはずですし、他でもない地元民であるわたしたち日本人なら、文具に興味のある方はたくさんいます。(というか文具を嫌いという人にあまりお会いしない。)

ですから、そういった層、市場に向けてがんばって売っていきたいわけですが、外国よりは温まっているはずの日本でさえ、新商品を見てもらうと「ポカーン」なわけですね。

つまり、「説明がないと何だかよくわからない」ものをわれわれはせっせと作っているのです。

鉛筆やハサミ、糊といった、誰が見ても何の道具かわかる文具は、もう100年以上前から大手のメーカーさんが作っており、新商品と言ってもそこに新しい機能がちょっと加わったとか、その程度という世界。いわゆるスタンダード品です。

そういったものは、店頭で説明がなくても、必要な時に自動的に売れていきます。でも、それ以外の商品というものは、ちゃんと説明して、やっとわかってもらえるものが多い。形だけ見て、どんな文具かわかる新作は、今どきほとんどないと思います。大手さんの商品であっても。

もちろん、メーカーの営業担当は、それを小売店さんに一生懸命に説明して、仕入れていただくわけですが、問題はそこから先です。

お店に並んだとしても、今度はお客さんが「ポカーン」なのです。

小売店さんも忙しいので、ひとつひとつの商品に丁寧なPOPをつけることは難しい、もしPOPがあったとしても表示スペースがない、というのが現状です。すばらしい文具たちが、何の説明もなく並んでいるわけです。

どんな文具なのかわからなければ、売れません。これが日本の、すばらしいものづくりをしている文具メーカー、そして文具業界の悩みです。

説明があれば売れるのです。その証拠に、文具女子博のような対面の物販イベントでは、メーカーの販売員が説明する端から商品が売れていきます。もちろんそれだけが売れる要素ではありませんが、あの熱狂が毎日だったらどんなにいいだろうと、出展社のみなさんは思っているはずです。

ですから、わたしたちメーカーがやらなければいけないのは、とにかく説明をすること。店頭に自分が行かれないのなら、SNSなどを使ってなんとかお客さんのもとに情報を届けなければいけません。

手段はウェブだけではありません。マスメディアの力ももっともっとお借りしたいところです。ネットに時間を奪われているとはいえ、やはりテレビをはじめとした既存のメディアは強い。

情報番組で紹介されるやいなや、1分以内にウェブサイトがパンクするというのはよく聞くお話です。

お店に出荷したらOK、店頭に並んだら安心ではなくて、それが指名買いされるように、情報を出し続けなければ、せっかく一生懸命作った商品も、気付かれないで終わってしまうのです。潜在的なお客さんがたくさんいるかもしれないのに。

そして、そんなことは誰でもわかっているわけで。わかっているけどなかなかうまく実行に移せない難問なんですね。しかし考え続けて、少しでも正解に近づいていくしかない。

トーハンさんとお話してて面白かったのは、本というのは言ってみれば文字でできている「コンテンツ」で、自分でどんどんアピールすることができる商品。(もちろん他より目立たせるためにいろいろなノウハウはあると思いますが。)

それに比べて文具は、「コンテンツ」というよりはそれを生み出すための「道具」であり、自分で自分のことを説明することができないので、例えば書店の文具コーナーに置いておくだけでは売れない。本も最近は売れない病だけど、文具の取り扱いも難しいのだそう。

ということで話は最初に戻ってうちの商品ですが、見事に説明がなければ何だかわからないものばかりで、目眩がするほどです。

まずはシーズンものからがんばって発信していこうと思いますが、世界一白い?カレンダー「白暦」。

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壁より白い。(笑)

これも特徴を説明すると2分48秒くらいかかります。もし3分お時間あったらぜひお聞きください。

>>白い白いカレンダー「白暦」

それから、今からガチなシーズンに入る受験生応援グッズもいろいろあります。

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>>保護者の方や塾の先生がメッセージお札を書いて応援する「紙だのみ」お守り

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>>たくさんの色カードで覚えやすく、お風呂でも勉強できる濡れても大丈夫な単語帳

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>>クリーニング店のプロがタグ記入に使う、ガシガシ洗っても「落ちない」ペン

うーん、確かに見た目はわりとノーマルですが、何が新しいのか、何がおもしろいのかは、説明しないと絶対にわかりませんね。

まずはこのあたり、どこまで多くの方に説明できるか、チャレンジし続けたいと思います。

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