永遠の庭-145

そこに居たのは、一人の男であった。
まだ存在が安定していないが、これはどう考えても、邪念の塊であると
ハッキリ分かった。
老齢の男。
しかし。これは、あの大学の特任教授の様な顔をしているが、
微妙に違う何かだ。
「私は悪魔サタン様に生み出して貰えたのよ。」
コイツは生かしておくと危険だ。
本能がそう囁く。
しかし、自衛用の暗黒の神剣に手を掛けた瞬間、
そいつは空へ向かって飛び退った。
「ああ、怖い。本当に恐ろしい能力ね。」
空を飛ばれると手も足も出ない。
こういう時は、地を駆ける生き物として作られた事を少しくも
もどかしく思う。
「安心しなさい。きっとまた何処かでお前を苦しめてあげる。
その時はそうね、ニコニコおじさんとでも呼べばいいわ。
ニコニコ嗤って居るだけで、甘い言葉を聞かせるだけで、
子供は簡単に騙せるもの。おしりを叩かないとね、
心のこもっていない言葉でも信じる様に成るのよね、子供って。」
「ならばそれをするお前をボクが殺す。」
「やってみなさい!何処の世界でもお前は障碍者のアスペ野郎だ。
必ず悪魔の息が掛かったナチスの者達を使って、お前を苦しめてやる。
そして子供は全員白人の慰み者だぜえ!うふふ!うふふ!アハハハハハハ!」
駄目だ・・・自衛用の神剣では、距離の遠い相手に攻撃を当てるには不向きだ。
相手の位置へ刀身を伸ばした時には既に、ヤツは彼方の空へと飛び去って居た。
今は、ただ進むしか無いのか。

こうして、新しい因子が生まれた。
それは狭間の世界に現れた666体の因子よりも遥かに弱い因子であった。
だが、因子は悪魔よりも強い神格性を持つ。
これを殺すのは人の身では不可能であろう。
人間がこの因子に翻弄される事は、火を見るよりも明らかであった。
やがてこの因子は、「魔術師テールウッド」を名乗ったり、
「ニコニコおじさん」と名乗ったり、果ては自分の記憶すら消して
人間社会に紛れ込んでみたりした。
そして神の軍勢の者と戦う事に成るのだが・・・
それはまた、別の御話。

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