狭間の世界11

「無法の世界において、宗教と名の付くものは多くあったけれど、
金銭目的やカルト宗教で無い限り、実は同じ神を崇拝して居たんだ。」
「キリスト教とイスラム教とユダヤ教が、同じ神というのは
何と無く知っていますけれど・・・。」
「そうだね。どれも一神教だったから。でも、多神教も、
実はよく考えてみれば同じなんだよ。
例えば、神道。考え方的には八百万の神として、
全てを神と呼んでいるけれど、実際には
最初に現れたのは、
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、
次に、
高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
神産巣日神(かみむすひのかみ)が現れ、
そして、
宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)、
天之常立神(あめのとこたちのかみ)が現れるんだ。
これらの神は別天津神(ことあまつかみ)と呼ばれ、
それ以降に登場する神とは別格の神として扱われる。
つまり、同じ「神」という呼称を用いて居ても、
実際には明らかに別の存在として扱われているんだ。
また、人間に災いをもたらす存在を悪神、幸福をもたらす存在を善神として扱うけれど、
これも考え方を変えれば、悪神は悪魔、善神は天使として見る事も出来る。
人間よりも少しでも高い存在ならば、全て神格を有すると考える訳で、
そうだとするならば、一神教における神より明らかに下位の存在を
神格性から「神」という名で呼んでいるだけの事、
とも解釈出来るんだ。」
「でも、そう成ると、一神教における唯一神と、
神道における上位の複数神で、矛盾が生じる様な・・・?」
「ところがそうでも無いんだ。
聖書の中にはヘブライ語で神の事を、
『ヤハウェ』という単数形で表記されている箇所と、
『エロヒム』という複数形で表記されている箇所が在る。
エロヒムとは「彼等」という意味で、
本来は単一の存在に使われる言葉じゃ無いんだ。
それを考慮した時、一神教の教えと神道の考え方とは、
必ずしも矛盾していないとも言えるんだ。」
「え!?じゃあ神は複数おられる、という事ですか?」
「さあね。『エロヒム』の表記は比喩なのか、それともそのままの意味なのか、
それはボクにもよく分からないけれど。
でも、ボクが仕えて居るのは唯御一方だけなのは、
紛れも無い真実だから。
それだけは絶対に変わる事が無い、事実だし。」
「そうですね。そこは疑い様が無いと思います。」
「まあ、敢えて別天津神の中で唯一神が誰かと言えば、
天之御中主神に成ると思うよ。
何と言っても、最初に現れた神だからね。」
「ですね!最高の御力を示す御方ですから。」
「大事なのは呼び名じゃない。その存在の本質だからね。」

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