永遠の庭-147

門の向こう側に最初に有ったのは、三つの墓である。
墓石の一つは「神の墓」と書いてあり、
もう一つには「アルファの墓」と書いてあり、
更に最後の一つには「オメガの墓」と書いてあった。
統治の世界の最終盤に造られた物だろう。
周囲には「ガイジ死ね」「アスペはクズ」「池沼は殺せ」等の暴言が書かれた、
木板が散らばっていた。
木板の裏にはそれぞれ、「保守連合」「革新連合」等と書いてあった。

そう言えば。
無法の世界の終わりも、こんな風であった。

保守には「ナチスは正しかった」等と言い出す者達がおり、
革新には「ガイジ」という障碍者全体への蔑称を頻繁に使っている者達が居た。
このどちらの勢力にも存在する、よく見ると同じ事を主張している連中は、
明らかに国民を騙そうとしている勢力から送り込まれた者達であったが、
皆、自分の勢力を守る事ばかりに目が行ってしまい、
誰もその危険な状態からは抜け出せないままで居た。
誰かが声を上げても、それは掻き消された。
嵐の中でも、順風満帆な航海でも、少しずつ船が沈んで行っている事に
気付く者は少ない。
結局、「耳障りの良い事を言う誰か」を信じた方が、気持ちが安らぐのだった。

その状態を更に悪化させたのが、「倫理観が低い子供達」である。
これは意図的に育てられていた。
「尻を叩かない教育」を推進している者達が、先進国には必ず潜んで居て、
この者達がいつだって根拠の無い正義を振りかざして
マスコミに「ヒーロー」として登場する。
「ヒーロー」が所属する会社や団体、大学等は無条件で称賛される。
結論から言えば、「ヒーロー」は国民を騙しているのだが、
「ヒーロー」が「ヒーロー」をする事は、とてもお金が儲かる事だったので、
「ヒーロー」を辞める者は基本的に殆ど居なかった。

「倫理観が低い子供達」は、他人を見下したり、中傷する言葉が大好きである。
自分達は「ガイジ」という障碍者への蔑称を使っておきながら、
「ガキは子どもへの蔑称なんだぞ」等と、傲慢な自分達を正当化していた。
そして「倫理観が低い子供達」は、その時々で
保守に加担したり、革新に加担したりして、国民を頻繁に惑わせていた。
しかし。誰も咎める者は居ない。
だって、いつでも「ヒーロー」が子供達を護って居るから。
どんなに悪い子供も「ヒーロー」が守って居るから。
だからマスコミも、子供は「絶対正義」として扱った。
そして、世界は益々混乱した。

誰も元凶を倒そうとはしなかったからである。

さて、と。ボクは視線を正面に向けた。

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