永遠の庭-143

映画館を出ると、奇怪な姿の一団を眼前で視認した。
それは人間の大人の様な外観であり、背丈もその様で在りながら、
動きや手足は蟷螂の様であった。
両手は蟷螂のそれよろしく、鎌状の鋭利な刃物に成っていた。
しかし顔は人間のもので、女であったり男であったりした。
胴体はスーツ姿であり、立派な大人の体を成している様で、
反面どいつもこいつも股間には、いきり立った男性器の様なものが付いている。
そして口々に、こんな事を言い始めるのだった。
「子供の為に。」
「子供は叩いちゃ駄目よー。」
「子供を守ろう。」
「子供は叱っちゃ駄目よー。」

次の瞬間。
一団は近くに居た少女に向かって飛び掛かった。
ボクはすかさず剣を抜いて全員を切断する。
「もう少しで、セーブ・ザ・チルドレンの目的が達成出来たのに・・・。」
際の言葉を遺して、加害者の集団、即ち因子は全員死んだ。
成る程。
確かに、この世界の因子は弱い。
デチューンされた自衛用の暗黒の神剣でも、簡単に斬り伏せる事が出来る。
しかし・・・街中(まちなか)にまで入り込んでるのか。
数に関しても、複数で集団行動を取っているのなら、普通に厄介な気がする。

「これは皇子!御手数を御掛けしてしまい申し訳御座いません!」
先程とは別の神の軍勢の者が走りやって来て、頭を下げて言った。
今しがたの事を話すと、先程の因子について説明してくれた。
「それは『ナチママ型因子』で御座いましょう。無法の世界にて、
世界を股に掛けて暗躍していた性犯罪者集団セーブ・ザ・チルドレンの者等を
模したであろう因子です。大した力は無いのですが、
集団で行動する特性があり、人間にとっては十分な脅威と成ります。
街中にまで入って来る事に関しては、神の軍勢の者を複数駐留させる事で
何とか対処しておりますが・・・。」
「中々厳しそうだね。」
「ハッ。しかし街の住人の大半はそうした戦闘職では無いものの、
人間ではありませんから、決して人間を守りきれない
という訳でもありません。」
「安全性の向上は今後の課題だね。何とか人員を増やせれば良いのだけれど。
何にしても教えて貰って助かったよ。この世界に関しては、
まだ知らない事ばかりだから。」
「ハッ、勿体無き御言葉。感謝の極みで御座います。」
神の軍勢の者は再び頭を下げると、その場から去って行った。

それにしても、未だにあの性犯罪集団と同じ様な存在が因子として
残っているとは・・・。本当に心が穢れた者の意志というものは、
何処までも腐り散らかして行くものなのだろう。

「子供の為に」「子供を守れ」
そんな言葉は、あの連中にとっては昆虫の擬態と同じなのである。
子供という弱い存在を「性的虐待」「強姦」という捕食行為をする為の、
上辺だけの姿。
そこには「性的虐待加害者」という生き物の本心は存在しない。
寧ろ、その裏にある「子供の魂を全て喰らい尽くす悍ましさ」こそが、
連中の本心であり、本質なのだ。

連中は今日も、子供を誘い出す為の鳴き声を上げる。
「子供の為に」「子供を守れ」と、
子供を襲う醜い魂を隠しながら。

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