永遠の庭-148


「さて。」
仕切り直しか、或いは閑話休題。
「察しが付いたと思いますわ。」
「ボクにまた因子を殺せ、と。ボクは便利屋なのかな。」
「いいえ。殺さなくても構いません。
各地に居る我々で普通に対処出来ていますから。
ですから、『自由』なのです。
殺したければ殺し、殺さなくとも因子は死ぬ。
気ままな狩りだと思えば宜しい。」
「その剣が在るから?」
ジャーラコッドのドレスには、先程の因子を斬り捨てた剣が収まる
鞘が下げられていた。
「オメガブレイドですわ。」
「え?」
記憶から引き摺り出された様な言葉が突き付けられる。
「皇子が執筆された作品に登場しましたわね。
それと大体認識は同じ物ですわ。
但しこちらは実体剣ですし、数も大量に存在しますが。」
「どういう事?」
「このオメガブレイドは、霊剣の複製品に近いのですわ。
御存知の通り、霊剣は通常、光の天使が必要に応じて携行して居る物であり、
それ以外の者は所持を許可されておらず、使用も制限が掛けられている筈。
しかし、霊剣の改良版であるオメガブレイドは、ある程度の能力を持つ
神の軍勢の者ならば、誰でも使えるという便利な武器なのですわ。」
「つまり、霊剣の普及版を「オメガブレイド」と呼ばわっていると?」
「簡単に言えばそういう事で御座いましょうね。」
成る程・・・確かに、そっち側の方の存在に「使うな」とは言っていない。
わざわざこういう事をするというのは、アルファの差し金か。
こういう事を勝手に決められる者は、あまりにも限られている。
裁きの子、であれば可能だ。
「貴女は、どの程度の能力なの?」
「フフフフフフフフ。」
妙な笑いを響かせた、目の前の女。
「成る程。かなりの実力者なんだね。」
「闇の皇子の直属の部下の方達には、とても敵いませんわ。
ですが、地上ではそこそこ名は通っているらしいですわね。」

馬車が停まった。
今までとは違う止まり方。
これは、目的地に着いたのだろうか。
「王妃、到着致しました。」
しわがれた様な声が馬車の外から響く。
恐らく御者だろう。ジャーラと共に下車する。
馬車の外は、巨大な門が在り、それはゆっくりと開いた。
「「裁きの王妃」の名を出せば、この辺りでは大体融通が利くでしょう。
覚えておいて下さいまし。」
「その名を出さなくてもどうにか成らないのなら、困るよ。
その為の平定なんだから。」
「御意。」
ジャーラコッドは頭を垂れた。

「また御会いしましょう。全ての暗黒と夜を統べる者、闇の皇子よ。
救いの子の旅路に、祝福があらん事を。」
「ありがとう。」
眼の前に、世界が広がる。
ボクはもう一つの未来に、何を見るのだろうか。

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