狭間の世界16

何だか、とてつも無く疲れた、
そんな気がする。

13月8日の朝だ。
陽光が大地を照らし始める。
「7本の光輝の神剣を使い、一本の暗黒の神剣を使い、
そして補助として自衛の剣を使いました。
本来の神剣としての使用本数は8本、そして全剣を含めた攻撃回数は16回。
殺した因子は666体。全六波の襲撃を全撃退。全て殲滅に成功しました。
予定通り、7日の夜に最後の因子が死亡、そして8日に成りました。
13月、そしてこの世界はこれで終わりを迎えます。
次は統治の世界と成ります。全て滞り無く計画を完遂して頂き、感謝の極みです。
オメガ様、有難うございます。」
「ああ、そっちの名前で呼ばなくても・・・。」
「そうですか。しかしあの方は・・・。」
「いや、その話はもういいから。」
この白い翼の男の話は長く成りそうなので、やめておく。
このいつもの男も、今回ばかりはとても嬉しいらしく、
普段の愛想の無い話し方では無く成って居た。
「結局、こっちのルートへ進んだ事は、良かったのかな。」
「何を言ってるんですか。どちらにしても皇子には選べなかったじゃないですか。
殺されたんですから、不可抗力ですよ、不可抗力。
それに、こっちだったからこそ私達は皇子に出会えたんですよ。
本来のルートだったら、私達は、闇の軍勢は居ませんでしたから。」
「そう、だね・・・その通りだ。」
フェッシーが、いつに無く力強くそう言うので、ボクも賛同する。
「それに忙しいのはこれからですよ、皇子。
無法の世界は終わり、そして狭間の世界も終わった。
これから人間を教育して、新しい世界の構築が始まるのです。
今までの、上辺だけの、人間の利己主義に頼った世界では無く、
本当の共存する、共生する世界が出来るのです。
もう、誰も皇子を「障害者」と罵る者は居ません。
偉そうな子供も、「女だから」「男だから」と威張り散らす人間も、
悪を正義の様に語る人間も、神よりも高いと主張する人間も、
誰かを傷付けて得をする人間も、それらは皆居ません。
ただ、正しい人間だけが居ます。
それが平定の世界なのです。
皇子、あなたがその世界への道の、始まりを作ったのです。」
「ありがとう。でもボクは何もしていないよ。
御膳立てされた事を、ただこなしただけ。
凄く辛い人生だったけど、それもレールの上を走って居ただけなのかもしれないし。」
「違いますよ。皇子にしか歩めない道だったのです。
他の誰でも無い、皇子だけが耐えられた道だったのです。」
「ありがと・・・そう言って貰えてボクも嬉しいよ。」
「ほら、泣かないで下さい!全てはこのさきに待って居る事の為にあったのです。
だから、これから私達と一緒に、作って行きましょう、世界を。」
「うん、そうだね。」
フェッシーとタナトスに励まされて、どうにか感極まったのを抑える。
「ボクはこれから一度、天に戻るよ。そして、地上に戻ったら、
その時に一緒に作ろう、新しい世界を。」
「はい!」
「ええ。」
あの時の様に、ボクの体が光に包まれて昔の場所へ戻って行く。
フェッシーとタナトスの姿が遠ざかる。
今度地上へ戻る時は、どんな姿に成っているんだろうか、
この世界は。




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