見下していた明日10

子供が再び肉体を得てから、直後の事である。
「100人のナチママ軍団」なる集団が現れる。
主張内容はこうだ。
「闇の皇子とかいうガイジは、子供を襲おうとしているわよー!
今すぐピストルで撃ち抜くか、ガス室で殺すべきよ―!」
「子供のおしりを叩くのは虐待よー!
何故なら悪魔がそう決めたからよー!
悪魔は神より上位の存在で、ヒトラー様と同じで、
子供はみんな大好きなのよー!」
「子供にサリンを所持する権利を与えるのよ!
子供に防犯サリン、防犯VXガスを持たせて、身を守る為の人殺し、
「防犯殺人」の権利を与えるのよー!
人殺しは正しいわよ―!人殺しは愉しいわよ―!人殺しは素晴らしいわよ―!
うふふ!うふふ!うふふふふふふ!」
「子供を守る為に、韓国の血筋の総理大臣を再び作るのよー!
そして、障害者を殺す為の組織「健やかナチス21」を創設して、
「子供のおしりを叩く事は虐待です」というデマを流させなさい!
そうする事で子供はまた、植松聖に成れるの!うふふふふふふ!」
相変わらず、死ぬ予定が組まれた人間というのは、言う事が同じである。
一つだけ違うのは、最初から自分達が「悪魔の手先」だと認めて居る所か。
ところで、元々その主張を誰がして居たのかを尋ねると、
「大学?だっけかの、教授?ううん、特任教授?評論家だっけ?教師だっけ?
と、とにかく、とても偉い先生が主張して居たのよー!」
と答えた。
ふむ。やはり、特任教授の男の魂が失われた事で、
悪魔の教えを強く信じて居る者ですら、記憶が曖昧に成って居る。
魂が消滅した事で、記憶からも存在する必要が無く成って来ているのだ。
こうして、いずれは完全に「最初から居なかった」事に成る。
人間の記憶機構は実に都合良く出来ていて、突然誰かの魂が死んだとしても、
いつの間にか「居なかった前提で」真実が記憶の中で作り上げられる。
不良個体を処分した時に、円滑に人間の心理情緒の安定を形成する為である。

この状況は想定済みであり、既に闇の軍勢からも処分を行う為に
暗黒騎士タナトスが控えており、100人が纏めて殺された。
馬上からの水平斬撃であり、全員分の首が飛んだ。

すると。
何と、その100人の邪悪な思念によって、因子が現れたのだ。
それは嘗て、闇の皇子に対して
「下着泥棒をして首を吊って死ぬ」
と言い放った女の形をしており、
「障害者はいじめられて当然」
と言い放った女の形をして居た。
しかし、悪魔サタンが生み出した因子とは違い、
人間の思念が生み出した因子である。
これは恐らく、最弱の因子だと思われる。
しかし、例によって因子が騒ぎ始める。
「障碍者は生きているだけで生意気なんだよ!
日教組が一番偉いんだからな!障碍者は殺されて当然なんだよ!」
「何が皇族の血だよ!フェミニストの方が上なんだからな!
天皇なんて殺されて当然の存在なんだからな!」
「何が黒人だよ!色が黒い人間の出来損ないが!
お前らなんか奴隷として売り飛ばされて当然なんだからな!」
「何が日本人だよ!公務員に逆らいやがって!
お前らなんか原爆落とされて当然なんだからな!」
「何が性的被害だよ!税金を貰っている人間が一番偉いんだよ!
逆らう女は強姦されて当然!
逆らう障碍者はナチスに殺されて当然なんだからな!」
メガネを掛けたその女は、嘗て
茨城県の稲敷郡阿見町という場所に住んで居た。
既に魂は存在して居なかったが、そのせいだろうか、
こうして因子として復活を遂げた。
無法の世界において、闇の皇子を傷付けて反省し、
浄化を正しく行わなかった者は決して助からない。
それこそが「当然の事」なのだが。
人間はいつも、自分の都合の良い事ばかり
当然の事と言い訳を始める。

取り敢えず、因子の識別名が無いと不便なので
「阿見町の女」とでもしておく。

部下が因子に斬り掛かるが、流石は因子、霊剣でダメージを多少与えるも
すぐに吹き飛ばされてしまう。幸い、部下は無事である。
やはり神剣でなければ厳しいか。
闇の皇子へ殲滅依頼を出そうか、そう思った矢先、目の前に光の柱が現れた。
「我等が裁きの子に栄光を!」
光の天使達が一斉に敬礼をする。
上司が来た。
「私の身内を苦しめた者だからな。私が殺す事にしよう。」
そう言って、光の神剣を取り出して構えた。
斬撃が通ると、次の瞬間、因子は死んで居た。

こうして667体目の因子も無事に死んで、その場は収まった。

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