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『グリーンブック』私もこんな手紙が欲しい!

映画『グリーンブック』を観た。人種差別が色濃い1960年代の南アメリカをツアーでまわる黒人ピアニスト「ドクター・シャーリー」と、そのドライバーを務めるイタリア系白人男性のトニー・バレロンガ(リップ)の約8週間の旅路を描いた物語。

劇中で、奥さんに「電話はお金がかかるから、手紙を書いてね」といわれて、大柄で大雑把なトニーが時間を見つけては、煙草をくわえながら、一生懸命に手紙を書くシーンが特にかわいくて好きだ。

ある日の朝、トニーの手紙の内容の薄さと稚拙さを見かね、ドクが代わりに手紙の文面を考え始める。

愛するドロレス 

君を想うと、アイオワ州の美しい平野が目に浮かぶ。
僕らを割く距離が、気を滅入らせる。
君のいない時間と経験は意味がない。

君との恋は、前世からの運命だ。
生きている限り、君を想い続ける

「超ロマンチックじゃん!」と嬉しそうに書き写すトニー。

そして、彼からの手紙を涙を流しながら、嬉しそうに読む妻ドロレス。声に出して読み上げ自慢すると「私もこんな手紙が欲しい!」とうらやましがるママ友たち。遠く離れた愛する人から寄せられる手紙の尊さを、現代の私たちは知り得ない。

そして、ドロレスがまた本当に素敵な女性なんだよな…。劇中ではトニーとドロレスの絡みはそれほど多く出てこないものの、二人の演技から二人が心から愛し合っていることが伝わってくるので、役者さんは本当にすごい。

さらに、トニー役のヴィゴ・モーテンセンはアメリカ出身で、役作りのためにイタリア系の訛りを一から勉強した、というのを映画を見終わってから知り驚愕。また、大食いのトニーを演じるべく、大幅に体重を増やしたとのこと。劇中のトニーの気持ち良い食べっぷりは見ものだ。

旅中、黒人だからという理由で、服の試着を断られたり、暗くなってからの外出を禁じられたり、白人用のレストランでの食事を禁止されたり、掘っ立て小屋みたいなトイレしか使わせてもらえなかったり、とにかく「なんで?」「いや、理由はないけど、そうゆう決まりだから」みたいなモヤモヤするシーンがとにかくたくさんあった。

そんな差別が、辛くて、反抗したくてたまらないのに、我慢して、慣れた様子で振舞うドクの表情に、胸がいっぱいになる。そんなドクも、トニーの価値観に触れ、最後は自分の尊厳を守るべく、差別的なオーナーのレストランでの演奏をキャンセルする。(よくやった)

もとは黒人が使ったガラスコップを、ごみ箱に捨てるぐらい偏見バシバシだったトニーも、ドクの苦悩や孤独に触れ、最後は自分の家のクリスマスパーティに招くシーンで幕を閉じるのだ。

割とディープなテーマを扱う作品なのだが、旅するおじさん二人のやり取りのかわいらしさや、登場人物の人情味、映像の美しさから、心地よい温かみを感じられる作品だった。とにかく今、フライドチキンが食べたくて仕方ない。






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