おそ松さん第二期16話感想


今回の話はほぼCパートがメインになると思うのでAB軽く触れるだけにしておきますがこのCパートとんでもなく嵐の予感。人によって感想が全然違ってきそうなそんなお話です。

本文中の『』内にある日付つきの引用は当時ツイッターのものです(誤字脱字や二次創作的コンビ名などは訂正しています)。

Aパート:宇宙海賊 Bパート:グルメ回

今回この二つのパートは両方とも往年の漫画・アニメのパロディネタなのでまとめて感想です。Aパートはコブラ(ハーロックとかも混ざってるかも?)、Bパートは美味しんぼですよね。

Bパートに関しては松造役の中の人が美味しんぼの山岡さんやってたって事で突然始まるパロディで何の脈絡もない。カラ松の「何のスイッチが入ったんだ!?」ってセリフ、お前が言うなですよ。カラ松も結構スイッチタイプじゃないか(サマー仮面な奴に言われたくない)。この話で確信しましたがカラ松は絶対父親似(苦笑)。

この二つの話の共通点は「かくあるべきという常識を見つめ直す」という事について。おそらく次の話も「自分とはかくあるべき」に関する話なのでテーマをさりげなく合わせているのかもしれません。

Cパート:となりのかわい子ちゃん

この話ネット上を検索して見ても人によって感想がネガポジ千差万別。私自身も何回も見るうちに微妙に感想が変わっていったり考えがまとまらないです。ネガな意見にもポジな意見にも両方分かるところがあるんですよね……。

元々は「おそ松くん」原作にもあった松野家の隣に可愛い女の子が引っ越してくるというお話をベースにしたものでお隣のかわい子ちゃんの名前(犬山キン子)もそのまま引用されていますが元祖と全く違うストーリーのようです(私は原作の方は知りません)。

とりあえずツイッターでの感想を順に引用します。

『今回のキンコちゃんの話、キンコちゃんの話ではあるんだけど実態は六つ子とトトコの関係性の話であったよね
キンコちゃんは外的サンプルという添え物なだけで
だからこそ純粋にかわいさ、よいこさを楽しめたので良かったけど
21:43 - 2018年1月23日』
『今回は私も普段からよく考えてはドツボにはまってしまう長男のあかつか世界におけるあり方とその中でのトトコちゃんの役割という物が如実に出ていて怖い回でもあったなぁ
やっぱり長男は自覚的に六つ子の長男という役割を守っているんだろうなって
21:47 - 2018年1月23日』
『「~くん」の世界を「~さん」に持ってくるにあたり大幅な改変がくわえられているし時代背景も何もかも変わりまくっているわけなんだけど
そういうなかで赤塚の世界観を守るための必要最低限を守るのが長男の役割なんじゃないかっておぼろに思っている プレーンな松だから…
21:49 - 2018年1月23日』
『主人公はヒロインに憧れ、ヒロインは常に美しい高嶺の花でなければならないという昭和的世界観もおそまつが守らなきゃならないものの一つでしかないんだろう
21:51 - 2018年1月23日』
『でも今回の話はそれが必ずしもトトコにとって幸福をもたらさないという現実にトトコが自覚的になったという点では救いがある
結果として同じ元の木阿弥に戻ったように見えても流されるまま役割を演じるのと覚悟して自覚的にその役割を選ぶのとでは全然違うから
21:52 - 2018年1月23日』
『だから時々自覚的にこの世界に対する悪意を見せてくれていた方が多分いいんだよ
松の世界はパラダイスじゃないんだ
私は地獄めぐりのアトラクションをつかの間に楽しみに来てるんだ
22:04 - 2018年1月23日』
『実際には多分絶対抜け出せないけど抜け出したい、自由になりたいと一瞬でも思った事実が尊い
今回トトコちゃんもそう思ったんだろうな(好き)
結局長男を筆頭とした六つ子たちに引きずり戻されたけどギャグ漫画てこういう事の繰り返しみたいなとこあるからね
22:07 - 2018年1月23日』
『超絶可愛いヒロインでいなくてはならないことを「めんどうくさい」と感じたトトコちゃんを私は責める気になんてとうていなれないけど、その事を特に長男と末弟は面白くない事だと感じたというのが何というか……何というかなんだよな!!
22:11 - 2018年1月23日』

ここら辺が初見の感想。南方(おそらく沖縄)からお隣に引っ越してきたキンちゃんはちょっと抜けたところはありますが気さくで可愛い素直なよいこ。最初は童貞の性欲全開だった六つ子たちとも次第にごく普通に仲良くなっていきます。六つ子たちは近く地元に帰ってしまうキンちゃんに最後のデートに誘われたのは良いのですが、実はその日にはトト子との先約があって……という出来事から小さな諍いが起こってしまう、というのが簡単なあらすじです。

当たり前のようにあると思っていた六つ子からの信奉が究極のよいことして描かれるキンちゃんによっていともたやすく覆ってしまった(と勘違いする)トト子がそこから自分の役割や「かくあるべき自分」について考えるという話なのですが、本来のテーマ以上に目立ってしまったのが舞台装置としてのキンちゃんの不自然なほどのよいこさと、トト子に課せられる理不尽なのです。

ギャグ漫画という不条理の中で「普通のよいこ」というキンちゃんの設定は異物となってこの世界のいびつさを浮き彫りにしました。

この話を考えるうえで特に大きなポイントは二つあります。そこを順に考えていきたいです。

①長男の思考言動をどう見るか

今回の話は最初から長男のモノローグで進行しているため何気に長男視点の話なんですよね。六つ子の代表たる長男にとってトト子ちゃんはいかなる存在なのかという。そういう話でもあるのです。

『16話のかわい子ちゃんは見れば見るたびに違う解釈が生まれて私の中の考察厨が賛否両論
恐ろしくメシマズなものから可愛いね~って感じのほのぼのまで、曖昧透明で縁もなし
12:26 - 2018年1月24日』
『原因の一番はあそこで長男が何を考えて「かわいくないよ」って言ったかという解釈が見る人によってものすごく分かれてしまい真実が見えないからだよなぁ
私は普通に偶像過激主義なのかと思ってたけど、トトコちゃんにこれ以上醜態をさらさせないためととってる人もいるしホントに分からないんだよね
12:28 - 2018年1月24日』
『制作陣は長男の思考言動はあえてやぶの中にしてる傾向ある
今までの話でも大体そうだもんね
12:29 - 2018年1月24日』

トト子ちゃんとの約束を断り、キンちゃんとのお出かけに行く事になった六つ子たちなのですがうっかりトト子ちゃんに見つかってしまいます。最初は余裕を見せていたトト子ちゃんですが徐々に楽しそうな六つ子たちの様子に焦り始めます。

結局最後は全員で居酒屋に大集合し気まずい言い訳合戦を繰り返すことになるのですが、その際どうせわがままな私は可愛くないわよね、と言ったトト子に対しておそ松が「うん、全然かわいくない」と爆弾発言してしまうんです。

この「かわいくない」が何にかかっている言葉なのか。そして長男が何を思ってあえてこの場でこの発言をしたのか。はっきりとした回答は作中で示されていないので類推するのみ。ここをどう解釈するかでおそ松への印象もひいてはこのCパートに抱く印象も変わってきてしまうのです。ここから先の解釈はあくまで「私が」この話で感じた印象であり、正解ではなく一つの妄想でしかない事を改めて書いておきます(おそ松および六つ子たちに少し厳しめ意見なのでご注意ください)。

まずトト子ちゃんを連れ全員で居酒屋に集合した時、トト子ちゃんへの言い訳に終始焦った表情の長男以下の松と違い、おそ松は最初から割と「おもしろくねぇー」って顔です。最初からトト子ちゃんに対し「かわいくない」と思い不満を抱いていたことが見て取れます。

一期の頃から長男は外の世界に出たり、変化することを嫌う性質だと感じているので、この時も第一印象としては「普段のトト子ちゃんとは違う自信のないはっきりしない物言いを『かわいくない』と感じ元のトト子ちゃんに戻って欲しいという思いを抱いていた」と感じました。戻って欲しいというより戻るべき、トト子ちゃんはかくあるべしという強固なこだわりです。これは長男に対しかなり悪印象な解釈だと思います。

好意的に解釈すれば「このままトト子ちゃんが自分を自虐するような発言を続ければトト子ちゃんにとっても、この場にいる皆にとっても良くない」と思い無意識に発言したとも考えられます。ただ私はどういう解釈にしろおそ松にはあの場で意識的に何かを促そうという意思はなかったのではと考えています。

というのもこの後おそ松のフォローに来たのはトド松だし、その後キンちゃんの約束について弁明したのもキン子ちゃん自身だからです。ここでおそ松に明確にトト子ちゃんをどうこうしようという意思があるのなら自分で何らかのリアクションを取ったのではないかなと。それこそ一期24話で大暴れしたくらいの大きな感情の動きを見せてもおかしくない。

しかし、この話を見てる限りトト子ちゃんに注意をした後のおそ松の態度は結局他の六つ子たちとあまり変わらず、キンちゃんと一緒にトト子に謝りに来た時も他の六つ子と同様に割と穏やかな顔です。他の六つ子たちにも言いたいけど、なんかさぁこの穏やかな顔が「そんな大したことじゃないだろ」と思ってる感じで私としては「分かってネェな……」と思ったシーンです。うん、やっぱりおそ松は他の六つ子同様分かってない。私はそう思いました。

この後事情を察したキンちゃんがトト子ちゃんに謝るのですが「いや…別にキンちゃんが謝ることじゃないから……」っておそ松、お前(というかこれは六つ子代表しての意見だから「おまえら」)が言うな!! と正直私は思った(このシーンになって急に焦ったような顔になるのも格好悪い)。

そう思うならせめてトッティ同様おそ松が率先して謝りに来い(トド松も結局「なにがめんどうくさいんだよ」ってなっちゃったからきちんと謝れてないけどそれでも矢面に来ただけ少しはマシ)。キンちゃんの事情なんて先に出されたらトト子ちゃんはもう怒れないし、自分の非が際立ってしまっていたたまれないだろうが。

言い訳よりも何よりもまず先に謝罪をしないといけないシーンだと思う。そりゃ普段のトト子ちゃんは傲慢極まりない女王様キャラだけど、この話ではそれを責められるようなことは一切してないのに六つ子たちの扱いが普段のギャグ軸にいるトト子ちゃんへのそれとあまり変わらないのに違和感あるのかもしれない。六つ子たちがニヤニヤしながら事情説明をキンちゃんの聞いた後で「てかちゃんとそう言えばよかったな。トト子ちゃんごめん」って軽すぎる。そりゃキンちゃんも気を使って謝るしかないってなるよ。

ここ人によってはキンちゃんが謝るからかえって空気が重くなるんだよ空気読めやみたいなキンちゃんを責める意見もあるみたいだけど、ぽっと出の第三者でしかないキンちゃんに六つ子やトト子ちゃんの微妙な関係性など分かるはずもないし酷というもの。むしろあのシーンではキンちゃんが「よいこ」と設定されてる以上ああするしかなかったんですよ。

要するに私としては六つ子たちはトト子ちゃんやキンちゃんの内実のことをちっとも分かっていないし、だからこそトト子ちゃんが何に対してこんなにも「めんどう」と思っているのか理解してないし、それはおそ松に関しても同じだと思っています。ただ他の松より変化とか、気まずさに敏感でそれを口に出すことに躊躇がないというだけだったのだと思う。

本来なら事情説明もおそ松および六つ子たちがしてキンちゃんは矢面に出すべきじゃないシーンだと思うんですよね。何の事情も知らない年下の女の子を前に出して説明させるとか成人男性としてスマートじゃないんですよ。まあそれすると話が始まらないからっていう事情があるんですけど。なんで六つ子の言い訳をキンちゃんがせにゃーならんの? むしろキンちゃんは六つ子たちに対してもっと怒ってもいいんじゃないかな(まあ怒るのも体力使うし馬鹿らしいけど)。

結局のところ六つ子たちは無職ニートの童貞で、コミュニケーション不全の至らない大人でしかないのでスマートじゃないのはある意味正しい描写なんですけど問題はその不全が不全として描かれずなんかいい話風のストーリーの中で誤魔化されてしまった事です。

私はおそ松が居酒屋で「かわいくないよ」っていった事やトド松の「なにがめんどうくさいんだよ」を格好いい発言とはあまり思えないのですが演出的には格好良くなっていることが何というかムズムズしてしまうんですよね。

トド松は一対一で謝りに来てるしトト子の心を理解しきれないという事自体は責められないからまだ納得できるけど、おそ松はただ感情のままに言ってしまっただけとしか私にはとれないので未熟な大人だなという感想しかないです。だってその後の落とし前自分で全然とってないし、結局トト子ちゃんとキンちゃんはお互いの意思で仲直りしたんだしな……。

仲直りのきっかけはおそ松の発言といえばそうだけどそもそもダブルブッキング自体もおそ松のせいだから、最初からお前がもっとしっかりしてればという感想しかない。

まあ最初に言ったようにこれは私の主観なので本当はおそ松に大いなる考えがあるのかもしれないしそこは藪の中で明確に答えなどない。普段ならこの答えが出ないところが楽しみな部分ですけどこの話に限ってはただただもやっとしてしまうのです。

ここでは主におそ松とトド松の事しか言ってないから他の松たちの責任はどう考えてるの? と言われるかもしれないですが、他の4人も普通に無責任だとは思いますよ? ただ意図的にそうしたって訳ではないでしょうが、カラ松・チョロ松・一松・十四松に関しては作中ではあまりいいところがなく基本格好悪い童貞としての態度しか描写されていません。美化された演出が少ない(まったくないわけではないですが)のでギリギリなんとかギャグとして見れるかなって感じです。あくまで私はですが。

六つ子たちのクズさ未熟さがイヤという事ではないです。だってそれは一期から描かれていたことです。六つ子らは最初から人間関係に未熟な泥臭い人間で女の子とまともな付き合いができるような男性じゃないなんて今更な話。問題はその未熟な部分がさして改善されたわけでもない今回の話で、未熟な部分と向き合い一皮むけたトト子と同じような立ち位置で扱われるちぐはぐさです。クズは徹頭徹尾クズであれ! クズを美化すんな!! って事です。

②キンちゃんという存在をどう捉えるか

『16話は長男もなんだけどキンちゃんをどういう位置づけととらえるかというのも重要ポイントでパッと見普通にいい関係を築けているととれば平和な対比なんだけどそうじゃない人もいる訳です(私はそうじゃない人寄りです)
12:46 - 2018年1月24日』

キンちゃんは今回のお話のメインテーマに沿って、トト子と全く正反対の美少女として対比されるためだけに作られた存在です。ショートカットの褐色美人で、性格は気さくで善良。そのキンちゃんが六つ子に普通に受け入れられていきトト子よりも一見人間的な関係を築いていけているように見える……そういう話にしようとしたんだと思います。

しかし、キンちゃんとの関係が本当に良い関係なのか。そしてキンちゃんとトト子は正しく対比がなされたのかという点について私は違和感を覚えました。

『最初は気兼ねない関係としてえがいているのかなって思ったけど、そうすると知り合うきっかけがブラジャーっていうのがどうのもちぐはぐに感じてしまうんだよね
人間的な関係はブラジャーから始まらんだろ?
12:47 - 2018年1月24日』
『一見サバサバとしていて人間的に見えるキンちゃんだけどあれも新しいヒロイン像の一つでしかなく男性たちの性的搾取の対象であることには変わりない…トトコちゃんが旧態依然としたヒロイン像だとしたら、キンちゃんは現代的タイプのヒロイン そういうことなのかもしれないし
12:50 - 2018年1月24日』
『男に見返りを求めずラッキースケベだけは提供してくれどんなキャラでも平等に扱ってくれるという実に(都合の)よいこ
そう考えるとキンちゃんは本当にただの舞台装置で添え物なんだよね
12:52 - 2018年1月24日』
『冒頭の出会いとかまさにいまどきのハーレム系漫画のヒロインっぽかったもんな
あまり興味のなさそうな男性キャラがラッキースケベしちゃう展開も実にらしい
12:53 - 2018年1月24日』
『その結末が正しかったのかはさておきキンちゃんは六つ子にはトトコちゃんがトトコちゃんには六つ子がふさわしいということを指し示す話を作るためだけに生み出された夏の幻だ
12:58 - 2018年1月24日』

キンちゃんは「六つ子にとってトト子とは、そしてトト子にとって六つ子とはどういう存在か」を体現する為のいわば「舞台装置」としてだけ生み出された存在だと私は考えています。

ただ、ゲストキャラと片づけるにはキンちゃんはあまりにも存在感がありすぎました。そのよいこさの質も実に生々しすぎて完全に「おそ松さん」ワールドのレギュラーとは住む世界が違います。いままでにもそういう世界観が違うキャラはいるにはいましたけどそれら他のキャラと比べても変に目立った部分が多すぎます。

一話限りのみだから存在を許されるゲストキャラであるにかかわらずフルネームを与えられたというのも大きいかもしれないです。思えば今まで出てきたよその世界からの女性キャラというのはその存在感に比例するように名前が与えられなかったり(例:彼女ちゃん、栄太郎ママ等)、与えられてもフルネームではなくどこにでもあるような名前(例:アイダ、さっちん、ミワ、クミ)だったりしています。そこに過去作リスペクトとはいえ「犬山キン子」という堂々たるオンリーワンな名前を持つキャラとして出てきたというインパクトは結構あります。

元々の旧作でのキン子ちゃんはただ単にトト子ちゃんに嫉妬心を起こさせる可愛い隣の子というだけのキャラ(見た目清楚系美女でトト子ちゃんと特に正反対の立ち位置という訳ではない)。ギャグ的なフックの意味で面白い名前がついているのはいいのですが、今回のキンちゃんには名を与える必要があったか疑問。彼女ちゃんのようによそから来た見知らぬ誰かという匿名性が欲しかったのが本音です。しかし、スタッフとしてはレギュラーキャラであるトト子ちゃんと真正面から対決させるという気持ちでいたのかもしれないので仕方ない。

赤塚ワールド住人達というのは普通にまっとうな生き方をすることをストーリーの展開上許されない人たち。トト子ちゃんも六つ子たちも成長したくてもできないというギャグ漫画のカルマにとらわれた存在なわけで……。そこにキンちゃんのようなリアルで普通のよいこを突然入れ込めばそりゃあ、すごい善人で素晴らしいってなりますよ。バトル物の漫画の主人公を日常ほのぼの漫画に入れて戦争で無双するような飛び道具ですよ。しかもそれでいてキンちゃんは赤塚ワールドのギャグ世界にも実に都合よく寄り添ってくれる存在でもありました(不必要なラッキースケベ、男子からのセクハラまがいの言動にも拒否を示さないなど)。

何といえばいいのか難しいんですけど、キンちゃんを実社会にいるような素敵な女子として描こうとしてるのか、ギャグ的に過剰化されたよいことして描きたかったのかどっちつかずでわかりにくい。笑えばいいのか、感動スタンスなのかっていう疑問。正直感動スタンスにしてはキンちゃんのキャラは都合よすぎて現実感ないし、さりとて振り切ったギャグと見るには生々しすぎる女の子だしで……。扱いに困ってしまうんです。

これは作ってるスタッフ自体の素敵な女の子像と視聴者層の女子が思う像に齟齬があるという問題からきている可能性もありますね。

とにかく最後のオチやテーマを考えるとキン子ちゃんはやっぱり作品世界の添え物でしかありませんし、むしろそうあるべき。それなのにどうもキン子ちゃんのような女の子への肩入れを過剰に感じてしまうのです。そしてこういう女の子が良い子!って示されることに対しての微妙な拒否反応が作品への没入を妨げてしまうのです。

トト子ちゃんにだっていいところはあるよ! ってならなきゃいけない話なのになんだかトト子ちゃんの我儘が一方的に断罪されているような理不尽を感じるんですよね。実際作中でも特にトト子ちゃんの美点は具体的に示されません。

一応キンちゃんに素直に謝れたということは美点ではありますが、それはキンちゃんに対してであって六つ子たちへのアクションではないし、普段のトト子ちゃんとは反応を異にする言動です。六つ子たちが「我儘女王様でもやっぱりいつものトト子ちゃんが一番!」って思う理由の明示としては弱い。なんとなくお約束的にトト子ちゃんがサイコーっていう雰囲気に流されたラストになっています。

トト子に我儘キャラを強いているのは自分の意思だけでなく六つ子たちの意思でもあり引いてはこの赤塚世界の理でもあるというのに、それを責められるのはやりきれません。

③以上二つのポイントを踏まえたまとめ

とりあえずツイッターでの感想ツイートをまとめておきます。この話本当にどこをどう切り取るかで印象が凄く変わる難しい話で私も色々気持ちが二転三転してます(今も正直し続けてます)。

『二期16話はさ、その人の持ってる価値観やらトラウマやらで刺さるところが全然違う話で人によっては全然気にならないところが別の人にはとんでもなく不快という滅茶苦茶解釈が荒れそうな話ではあるなって思うんですよ 公式はホント罪なことしてくれる
21:36 - 2018年1月25日』
『六つ子のキャラクターもトトコちゃんの我儘もギャグ漫画という枠組みだから許されるって部分は大きいので、今回の話はキンちゃんという外部の常識が挟まったことでリアリティラインが現実寄りになってしまったのが問題の根源な気がする
21:40 - 2018年1月25日』
『ギャグでたまーにこういういい話(っぽい)のをやるときはリアリティラインの管理を特に注意しないとキャラがただのとんでもないクズになる危険性大なんだよね
まあ実際ギャグ漫画の主要登場人物って大概現実にいたら絶対付き合いたくねぇ~っていうような極端な性格付けされてるしね
21:50 - 2018年1月25日』
『16話は本当にネガな意見もポジな意見も人によって賛否がいろいろあってどっちの面からも「わかる~」があるので心が迷い子になる話だけどようやく自分の中ではどのあたりの位置で見られる話かというのが落ち着いてきました
9:06 - 2018年1月27日』
『なんかこう作中でそれぞれのキャラが知っていることが断片的なのも誤解を生む要因の原因の一つだし、これは本来いい話ではなくいい話っぽいけどあくまでギャグとして造られた話なのにギャグとしての組成が中途半端なのも誤解を招く原因なんだろうな
9:10 - 2018年1月27日』
『最初六つ子たちがドタキャンしたのは明らかに悪いだろと思ったんですけどよく見ていると濁してはいるものの「急な用事が入った」と一応本当のことを言って断ってはいるんだよね
9:13 - 2018年1月27日』
『トトコちゃんは内容が分からないなりにも先約の自分を無視して別の用事を取ったという事実は不承不承ではあるけど了承はしてるんだ
あの場面で別の女の事と出かけるってバカ正直に言ったらいらん時間を食うこと間違いなしだしキンちゃんがもうすぐいなくなるって事を考えると仕方ないとこもあるのか…
9:15 - 2018年1月27日』
『あとブラ飛ばしの件もキンちゃんに対しててっとり早く「性欲」→「庇護」の感情に移行させるためのギャグ的手段と言われるとそうなのかもしれない
「ダメだこの子早く何とかしないと……」って六つ子たちに早急に思わせる手っ取り早い手段だったといえばそうなんだろうけど
9:19 - 2018年1月27日』
『ただなぁ~ここがこの理由でただのハンカチ飛ばしとかじゃだめっていうのは分かるけどそれだったいっそ出だしはブラでもいいから、次にはものほしざお自体を飛ばしてみたりいっそ洗濯ものじゃない別の何かが飛んで来たりとかギャグ的エスカレートがあってもよかったんじゃない?
9:22 - 2018年1月27日』
『あれがあくまでギャグの前フリだっていうんなら「ダメだぞこの子」って思わせるために別に性的対象のものを飛ばさなくてもいいはずだ
出だしではそういうもの飛ばしてファ~オ☆な展開なのかな?と思わせてからの外しがあったらもっと素直に笑えたんじゃないかなって感じる
(私の勝手な言い草だけど)
9:24 - 2018年1月27日』
『こうやって考えていくと二期16話が内包する問題点はギャグがギャグとして機能しておらずみんながマジレスしてしまうようなエモーショナルな方向へ触れてしまったことなのだと感じる
これは一期五話の問題点と共通しているのではないでしょうか
9:26 - 2018年1月27日』
『キンちゃんをトトコちゃんの対極のよいことしてえがきたいならもっと振り切ってギャグ漫画的なよいこにしてくれていたら素直に笑えたし変に良い話風にもならなくて「私は」好みだったかもしれない
あくまでここまでの話は私の考える妄言なので正解とか正しいお話はこれという話ではないです
9:33 - 2018年1月27日』

今回のお話、ブラ飛ばしが導入に用いられているため私としては今回はギャグ寄りの話なのかなと思ってみていました。現にお話をリアタイで見ている人の中にもキンちゃんがこんな普通の良い子な訳がない、何か裏があるのでは、と疑って見守っている感想がありました。

しかしそういうギャグ漫画の文法で始まりながらお話はどんどん感傷的で生々しい方向へ流れていきます。今までギャグ世界では当たり前に流されてきたトト子ちゃんの暴言、行動が急に良くないものとして白日にさらされました。そしてキンちゃんに対し一見気安く接しているかに見える六つ子たちもギャグの文法から抜けきっておらず現実世界だとただのセクハラまがいとしかとれない発言(童貞なんだぞ!とか)を繰り返してしまう為、これまでは笑えた部分が急に笑えないという現象を引き起こしたのです。

……いや、「引き起こしたのです」とか書いてますけど、引き起こされたのは一部の人だと思います。おそらく大体の人は一期の十四松の恋の時のようなテンションの話と切り替えて感動部分をうまく汲み取って見たんだと思います。この話で「女性に慣れてない男性」というのを強調するのにおもしろおかしく「童貞」という言葉を使ったりするのはちょっと安易すぎるとは思いますが逆に「いつものこと」とスルー出来る人もいるでしょう。

しかし一回違和感を覚えてしまうともう駄目なんですよね……。個人個人のもっている価値観や経験に基づいてトラップポイントが目に見えづらいところに一杯ある。それが視聴者の感想のブレを引き起こしている様子。

上記ツイート引用でも言っていますがリアリティラインをもっと強く意識して作劇してほしかったんです。例えば一期十四松の恋などでは、内容の是非はともかくリアリティラインの管理という点ではとても気を使っていたと感じます。

彼女ちゃんの生々しいキャラ付けは匿名性により一話限りの夢と強調されています(またその生々しさもあくまで察せられる程度にとどめ明言はしません)。また六つ子全員と関わらずあくまで十四松とだけのやり取りに終始しているので一種の番外編なんだなと分かりやすいです。十四松の様子がいつもと違う普通の人になっているというもの良いと思う。ゲストキャラに負担を強いるのではなくあくまでレギュラーが世界観に寄っていくという意味で。そして最後にすべてが終わった後には十四松は普段の十四松に戻るので、次からはまた何事もなかったようにギャグアニメが始まることを素直に飲みこめるようになっていて非常に世界観が丁寧に維持されているんです。

『ギャグ漫画に変なリアルを突然ぽんと入れられると現実に引き戻られちゃうんだよね
崖から突き落として殺しても翌週にはよみがえるような登場人物たちの中にいきなりキンちゃんのような生々しいよいこを投入されるとなんというか、その困る キンちゃん包丁で刺したら普通に死ぬ子だから…
9:39 - 2018年1月27日』

私は今回の二期16話の内容の善悪はないと思うし、作中のジェンダーのあり方とかそういう話にも興味はありません。ミソジニー論、ミサンドリー論およびではない。大切な話だと思うけどおそ松さんで議論したいとは思わないので。

ただ、とにかくこの話、世界観がふわふわしすぎている。私はただお話を楽しく見たいだけ。ギャグアニメは面白さがすべて。でも前提となる世界観がギャグなのか人間ドラマなのか中途半端なんですよ……。足元がぐらついてると安心して楽しめないんですよ。

恐らく、今期、トト子ちゃんは嫉妬の感情を理解する描写があったりにゃーちゃんとの友情描写があったりと一期に比べて人間らしい描かれ方をしている事が多いし、六つ子たちも同様に二期7話の合コン回とか外部とのかかわりの中で傷ついていったりしているのでスタッフはレギュラーキャラを「人間」として描こうと試みている気配はします。そういう意味では丁寧な積み重ねはあったとは思うのです。

しかし同時に「ギャグ漫画だから許される」って部分に甘えてきたところを捨てきれてない。というか捨てたらギャグじゃなくなるし。捨てるなとはいわないけど一期とは違うものが描きたいなら同じ方法論は通じないぞ、と思う。それを「自己責任アニメ」の一言で済ますのは無理があるのではと感じます。

要するに今回の話を『真面目な人間的交流をかく話』としたいなら六つ子たちがキンちゃんと親しくなる過程はブラ飛ばし何ぞではないもっと普通の方法でなされるべきだし、逆に『真面目な話に見せかけたやっぱりいつものギャグ』にしたいならキンちゃんのキャラクターをもっと匿名性の強い強烈なギャグ寄りの良い子にしておく必要があると思うのです。両方のいいところ取りをしようとするな! 小賢しいぞお前(スタッフ)たち!! って気持ちなんですよね。

六つ子たちとトト子ちゃんが初めて素の自分のままでやりとりをしたっていう点ではすごく貴重な回だと思うのでそれだけに細かいところが残念で。私は中途半端が一番苦手なんだ。

ある程度人気を得てしまった作品の二期って難しいよね……というゆがみを感じる回でもありました。

『「あなた達の隣にはヨワイトココという最強のかわいこちゃんがいるの!」っていう最後の言葉はトトコちゃんの呪いだと思ってる
作中で明確に六つ子が断罪されてないので不満がたまってる向きもあるだろうけど私はアレはトトコちゃんの六つ子への意趣返しだと思ってる……
13:11 - 2018年1月24日』
『六つ子たちはそれぞれに多少のスタンスの違いはあれど明確な理由は分からないまま「おそまつってそういうことしないでしょ」みたいなノリで現状を受け入れているんだろうけどトトコちゃんはもう違うんだ
自分でこのヒロインになると決めたんだ
13:14 - 2018年1月24日』
『最後に長男がトトコちゃんにこの中で彼氏にするなら~みたいな会話を振るのも一見いつものお約束やり取りだけどトトコちゃんの中では同じようなセリフを言っていても多分意味は全く違うものになっていると思う
それを六つ子たちが多分気が付いていないのだろうことが六つ子たちへの断罪で呪い
13:16 - 2018年1月24日』

六つ子の女王様であることに疑問を抱きながらも結局元の役割に戻ったトト子ちゃん。でもその心根は以前とは確実に変わっている……。いい事か悪い事かはともかく覚悟はできたという事。それとの対比で全く気がついてないんだろうなっていう六つ子たちが切ないけど。でも六つ子たちは主人公という強固な鎖でこの作品世界に縛り付けられているからね。

トト子ちゃんは自分の立場を自覚したのでそれを捨て去るという選択肢も生まれたんだと私は思ってるけどどうなんだろう。なにはともあれ地獄であるという自覚がなければ逃げることも叶わないからトト子にとってはこれは一つのハッピーエンドなんだと私は思います。呪いだけどな。

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