見出し画像

名古屋城木造復元バリアフリーアンケート 市長「無作為抽出は『フラットに聞くため』」

河村たかし市長は23/5/22定例記者会見で、現在市が行っている名古屋城木造復元バリアフリーアンケートについて「無作為抽出は『フラットに聞くため』」と述べました。
アンケート文書については「見せてくれと言われれば、別に秘密のもんではない」と市長は述べました。
名古屋城総合事務所に電話で確認したところ、「開示請求の決定は今週中にも出す」とのこと。

・23/5/22 河村市長会見文字起こし(名古屋城部分)
 名古屋市民オンブズマンによる、半自動文字起こしアプリによる文字起こし
 http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/230522.pdf
 
河村市長は「エレベーターを最上階まで付けた方がいいかといえば付けた方がいいという人が多くなるのは当然。
それとは別個な意義で、もう1回国宝になるような宝を若干不便であっても残しておこうというのは別個な価値判断なので、フラットにお伺いしてみよう。
バリアフリー対応については文化庁に方針を出す必要がある。みんなに聞いていない、アンケートも取っていないのかとも言われかねない。
2016年アンケートは、木造に賛成か反対かだった。
今回は、最上階5階までエレベーターを付けた方がいいか、1階まで付けた方がいいか、つけないほうがいいかというもの。
『国宝一号であったのは歴史的なこと』と説明文書を書いてある。
これまで何階も名古屋城に関して市民意見交換会を行ってきた。
木造そのものに賛成か反対か、エレベーターについての意見もあった。
今回は無作為抽出した人の意見をフラットに聴くとどうなるか。これは重要な選択ではないかと思う」と述べました。


近年、「熟議民主主義」「討議民主主義」「ミニ・パブリックス」等と呼ばれる、無作為抽出された市民による政策形成プロセスが注目されています。

名古屋市民オンブズマンは、2016/5/15に名古屋大学法学研究科の田村哲樹教授を招いて「熟議民主主義の必要性」の学習会を行っています。
https://ombuds.exblog.jp/23146943/

田村教授は「熟議民主主義では、熟慮+議論、ならびに自分の考えを見直すことが重要となる。熟議を通じて生まれる『練られた意見』が大事となる。
ただし、行政がその立場を変える可能性が確保されていないと、アリバイ作りの機会と言われてしまう。」と述べています。

今回のアンケート書面では、名古屋市の一方的な主張が記載されているだけです。
しかも、23/6/3に予定されているという市民討論会で、市民同士が討論するかどうかは不明です。

OECDで示された「ミニ・パブリックス」活用ガイドラインでは、11項目示されています。
①目的
②アカウンタビリティ
③透明性
④参加の包括生
⑤代表制
⑥情報
⑦グループ討論
⑧時間
⑨高潔さ
⑩プライバシー
⑪評価
https://848b8f03-2e71-42e6-9502-a8a8a7b84d0e.filesusr.com/ugd/b677db_9843b49cf93241c1aa3f20796f751fb0.pdf
今回は特に③透明性、⑥情報、⑦グループ討論、⑧時間、⑨高潔さ、⑪評価 に問題があると思います。
⑨高潔さ には、「主催する公的機関とは異なる、政府とは適切に距離を取った調整チームによって実行されるべき」と記載があります。

そもそも、名古屋市は昇降技術の公募を議会の議決を経た上で行い、22/12/6に株式会社 MHIエアロスペースプロダクションを最優秀者に選んでいます。
・名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募
 (国立国会図書館が保存した2023年2月4日時点のページ)
 https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12549184/www.castle-challenge.city.nagoya.jp

公募要項に、「『木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針』を2018/5/30に定めており、技術公募はこれに基づき行います。」とあります。
https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/tenshu_information/mokuzoutenshu_fukasetsubi.pdf
5.基本方針
 また、協議会を新たに設置し、障害者団体等当事者の意見を丁寧に聞くことにより、誰もが利用できる付加設備の開発を行う。

さらに、公募要領に「また、2020年4月3日衆議院国土交通委員会、5月 12日参議院国土交通委員会において、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」が施行されており、この趣旨を踏まえることとします。 」とあります。
・附帯決議 令和2年4月3日衆議院国土交通委員会、5月 12日参議院国土交通委員会
 障害者権利条約に則り、歴史的建造物のバリアフリー化を進めるため、歴史的建造物を再現する場合等におけるバリアフリー整備の在り方について、高齢者、障害者等の参画の下検討が行われるよう、必要な措置を講ずること。

愛知県の「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」でエレベーター、スロープ等の設置義務があります。
http://www.pref.aichi.jp/soshiki/jutakukeikaku/0000043092.html

日本弁護士連合会(日弁連)は、22/10/24に名古屋市長に対して「再建名古屋城天守閣に高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第18条第2項第5号の要件を満たす最上階までのエレベーターを設置する」よう要望を出しました。
https://www.nichibenren.or.jp/document/complaint/year/2022/221024.html
大型エレベーターを最上階まで設置しなければ、「憲法・法律・条例違反で人権侵害にあたる」と述べています。

日弁連は「民主主義と基本的人権の尊重・解説(令和版)みんなで決めるべきこと、決めてはならないこと~民主主義と基本的人権の尊重~」の中で、「たとえみんなのことであっても、個人の尊厳を害するような著しい不利益を与えることは、決めてはならない」と述べています。
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/activity/human/education/kaisetsu2.pdf

にもかかわらず、市議会にも説明せずに勝手に「無作為抽出市民アンケート・市民討論会」を行うと市は発表しています。
市が定めた「基本方針」「公募要領」、参議院附帯決議にある当事者参加は無視です。

これでは、田村教授がおそれた「アリバイ作りの機会」になってしまうのではないでしょうか。

・2019年01月10日 DPI日本会議
 名古屋城の木造新天守へのエレベーター不設置について、人権救済を申し立てました
 https://bit.ly/3xjiaSI
 
・名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ
 http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm

2012年6月 北海道大学科学技術コミュニケーション, 三浦太郎;三上直之
コンセンサス会議の問題点の再考と討論型世論調査の活用の可能性
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/49450/1/JJSC11_008.pdf

6月 18日, 2019  勁草書房編集部ウェブサイト
めんどうな自由、お仕着せの幸福
第5回:熟議でのナッジ? 熟議へのナッジ?《田村哲樹さんとの対話》
https://keisobiblio.com/2019/06/18/nudgetalk05/

2021 年 12 月 11 日
第 7 回 日本ミニ・パブリックス研究フォーラム 開催記録
https://848b8f03-2e71-42e6-9502-a8a8a7b84d0e.filesusr.com/ugd/b677db_f9cd9a76ac704056a63682589347c00e.pdf

日本ミニ・パブリックス研究フォーラム
https://jrfminipublics.wixsite.com/mysite

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?