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ジャーナリストが語る!「どうして名古屋城木造復元は進まないのか」

「名古屋城天守の有形文化財登録を求める会」は、24/6/29にジャーナリストの毛利和雄氏と水野誠志朗氏を招いたミニ学習会「名古屋城・天守木造復元の落とし穴」を開催しました。

毛利氏は元NHK解説主幹。文化財報道に長年携わってきました。
NHK退職後に住んでいた広島県福山市から、2年ほど前に名古屋城木造復元事業について見極めようと名古屋市に引っ越してきました。
24/7/1に『名古屋城・木造天守復元の落とし穴』(新泉社)を刊行し、これまでの名古屋城木造復元の経緯と、当初は2022年12月完成予定としていた名古屋城木造復元天守について、どうして進まないのかを明らかにしました。
また、全国各地の城郭復元・修復事情もまとめています。
https://www.shinsensha.com/books/6385/

はじめに、歴史ライターの水野誠志朗氏が、名古屋城木造復元を扱ったABEMAニュースに出演された経緯を説明しました。
(ABEMAニュースの事情により、youtube動画は削除されました)

水野氏は、中日新聞のページに「達人に訊け! 水野誠志朗の尾張時代の信長をめぐる」という記事を連載しています。
https://plus.chunichi.co.jp/blog/mizuno/

ABEMAニュースに出演された中井均・滋賀県立大学名誉教授は「復元する名古屋城はあくまでも令和の建物でしかない」と述べたものの、同じく出演した河村たかし名古屋市長は「木造復元する名古屋城が観光資源になるのは結果であり、世界的にかけがえのない文化を復元するのは時空を超えた価値がある。
現代に生きる僕らの責務、義務だ」と議論をすり替えていると水野氏は述べました。

水野氏は、「外観は現天守閣も木造復元天守もほぼ同じ。
そんなものに500億円も税金を使ってよいのか。客の入場料で全額返済するという試算だが、本当に客が来るのか。
そんなずさんな計画のまま、名古屋市が現天守を先行解体しようとしたのを何としてでも止めたかった」と述べました。

続いて、毛利氏は、まず「文化財とは何か」について文化財保護法を元に解説し、「『復元したら本物になる』というのは河村市長が誤解している。
国際的には50年たてば文化財となる。現天守は築60年を過ぎ、しかも空襲で焼失したものを名古屋市と愛知県、東海財界有志が手分けしてお金を集めて建設したもの。
木造復元は河村市長1人が言い出し、それほど寄附が集まっていない。」と述べました。

さらに、学習会直前に訪問した沖縄・首里城の復元と比較し、「焼失した首里城は内閣府沖縄総合事務所が中心となって国の事業として復元している。河村市長1人が言い出している名古屋城とは異なる。
中井名誉教授が番組で『歴史は重層性をもっている』と述べたのは大きな意味がある。
ヨーロッパの歴史的建造物とは異なり、日本の歴史的建造物は解体修理を行うが『本物』を伝えてきた。
それを『奈良文書』としてまとめたが、河村市長は『復元すれば本物になる』と理解を誤ってきた。
『火事でなくなったものをそのまま復元しても本物にならない』」と述べました。

また、現在名古屋城木造復元は、23/6/3バリアフリー市民討論会での参加者の差別発言によりストップしていますが、
「差別発言した人は、河村市長の『間違った本物論』で勘違いし、『河村市長が作ろうとしているのは江戸時代そっくりそのままの城。当時はエレベータ―はなかった。障害者はわがまま言うな』と述べた。
さらに、河村市長は『足が不自由な人は上までおぶっていけばいい。それが一番親切』とかつて述べたが、『親切で障害者対応』してよいのか。
国際人権基準に詳しい藤田早苗さんによれば、『親切心だけでは解決しない』。ハードの面の整備など行政がやるべきことをやって、その上の親切心が必要だ。

名古屋城木造復元の発案者は河村市長だが、足を引っ張っているのも河村市長。新市長の下で仕切り直しすべきである」と述べました。

毛利氏主張まとめ
・河村市長の誤った『本物』論
・河村市長の「障害者の人権保障」理解が行政の長としてふさわしくない
→新市長の下で仕切り直しを


参加した名古屋市民オンブズマンの内田隆は「毛利氏の著書を読んだが、名古屋城木造復元をめぐる経緯がまとまった初めての本で、全名古屋市民が読むべきだ。
さらに、毛利氏が述べた『仕切り直し』の参考になる各地の城の事例がよかった」と述べました。

会場からは「ここまでこじれている以上、国の方がはっきりした姿勢示さないと進まないのでは」という意見がありました。
毛利氏は「史跡や歴史的建造物をどう整備するかの責任は所有者にある。
名古屋城の管理団体は名古屋市で、あくまで名古屋市が決める。
バリアフリーについて、文化庁は所管外なので『障害者団体、高齢者団体など当事者の理解を得てください』としか言えない。
障害者団体に理解されていない問題について、対立を持ち込まれても文化庁としてはなにもできない。
河村市長のもとでは障害者団体の理解は進まない」と述べました。


・名古屋城天守の有形文化財登録を求める会
 https://peraichi.com/landing_pages/view/protect-nagoya-castle/


今後の予定

・24/7/1(月)名古屋城・天守木造復元の落とし穴(毛利 和雄/著) 出版
  https://www.shinsensha.com/books/6385/
・24/7/1(月)10時半~ 河村たかし名古屋市長定例記者会見
  https://www.city.nagoya.jp/mayor/category/316-0-0-0-0-0-0-0-0-0.html
・24/7/3(水)午前10時30分 名古屋市議会経済水道委員会 付議議案審査[意思決定(2局一括)]
・24/7/8(月)10時半~ 河村たかし名古屋市長定例記者会見
  https://www.city.nagoya.jp/mayor/category/316-0-0-0-0-0-0-0-0-0.html
・24/7/27(土)14時~ 名古屋城天守の有形文化財登録を求める会 例会
 https://peraichi.com/landing_pages/view/protect-nagoya-castle/
・24/8/10(土)14時~ 名古屋市立大学寄附講座
 「名古屋城と庭園」-日本の歴史と文化の象徴― 
 講師 堀内亮介(名古屋城調査研究センター学芸員) 
 講師 千田嘉博(名古屋市立大学 教授)
 https://www.nagoya-cu.ac.jp/event-list/20240626/
・24/9/8(日)14時~ 名古屋城検定 教養講座
 城郭建築の第一人者 三浦正幸氏 講演会「日本城郭史の到達点、名古屋城。」
 https://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/page/0000176066.html


・名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ
 http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm 
・名古屋市民オンブズマンブログ 名古屋城問題
 https://ombuds.exblog.jp/i33/


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