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21歳#01 「ここではないどこかへ」

「今、ここではないどこかへ」飛び立ちたいと思っていた21歳。

一連の就活イベントを終え、志望していた広告業界の会社で内定も決まり、卒論と口頭試問も乗り越え、愛知県の大学を卒業した。(この卒業間際も色々思い出があるが、また気が向いたら書こうと思う)

4月から晴れて社会人ということで、早く大学生活に終止符を打ちたかった私としては、就職に夢や希望を抱いていたわけではないけども、不安よりも新しい生活が始まることにわずかながら期待をしていた。

冒頭に志望していた広告業界と書いたが、広告業界を選んだのは目的があったからではない。むしろ目的がなかったから、特定の製品ではなく無形商材で、かつサービスの広がりがある、チャンスが多そうな会社を選んだ。こんなゆるい志望動機でも、大学の専攻と同社の新規事業のドメインがマッチし、運良く愛知県ではそこそこ名の知れた会社から内定をもらうことができた。
新規事業の部署に配属されれば東京勤務が確定するが、実際に配属される保証はなかったものの、とにかく就職せねばという焦りと就活を早く終わらせたい一心で内定に飛びついたのだった。

入社後は、4月末に通達される配属先決定までの間、みっちり新入社員研修を受けた。時間が経てば笑い話なのだが、これがまた地獄だった。

新人は誰よりも早く出社するのが慣わしで、朝7時には出社し、上司・先輩のデスクやフロアを掃除。出勤される社員の方々を迎え、大声で挨拶をする。その後、朝礼で社訓を唱和し、研修に参加。研修の中身はほぼ覚えていないが、マナー研修、業界理解、商材理解といった定番のものもあれば、同期同士で今年の新入社員のスローガンを決めて、スローガンを身体で表現して、行動で示す?といったようなワークを考えた気がする。このスローガン決めや中身を詰めるのに、毎日深夜まで議論をした。睡眠時間は毎日5時間程度。ただでさえ、新生活のリズムを作るのに一苦労なのに、いきなり就業時間越えのサイクルを強いられ、社会の洗礼を受けた。

これらに加え、今では人気で予約が取れないという宿泊型の自衛隊体験入隊研修にも参加した。朝6時の起床のチャイムと同時にグラウンドにダッシュし、10分以内に整列。昼間は、匍匐前進、◯キロマラソン、腹筋背筋の筋トレなど…2泊3日の短い研修ながら体力、精神力共にきつかった。

この研修での一番の思い出は、自衛隊研修中は誰であってもノーメイクでなければならないというルールがあると聞かされていたにも関わらず、人事部の1つ年上のゴマキ似の先輩が、ナチュラルメイクを決め込んだ美しいお顔で研修に参加していたことだ。自衛官の何人かが釘付けになっていたことが印象的で、美しいって得だな、としみじみ感じたことを鮮明に覚えている。この先輩とは、後に仲良くなり、飲み仲間になるのだが。

そんなこんなで研修も終盤。スローガンの発表を全員で行った。総勢40名。
全力で大会議室を走り回った記憶がうっすらと残っている…
発表が終わり、達成感で涙している同期もいたが、そんな同期を見て私は客観的になってしまい空気感に馴染めないでいた。

ちなみに新入社員研修の裏目的は、同期との絆づくりなのだが、過酷だった社会人デビューについていくのが精一杯で正直同期との絆は全く作れなかった(笑)。必要性もあまりわかっていなかったし、私は私でしょ、なんて冷めた考え方を持っていた気がする。

いきなりブラックな香りしかしない研修を受け、人生甘くないな、と痛感。たった1ヶ月で学生のノリは消え失せ、配属先もどこでもいいや、と投げやりになっていたが、運良く希望の部署に配属が決まると同時に東京勤務も確定した。

「あぁ、やっとここを離れられる」

同期と仲良くできなかったことよりも、研修や会社の異様さよりも、とにかく今ここではないどこかへ行ける安堵感で胸がいっぱいだった。

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