あんなつぁ

以前黒曜社という喫茶店に行ったときに「あんなつぁ」という曲を友達に勧められ、最近はまっている。我らが同志社生が書いた歌である。今日は一日暇だったのでずっと聞いていた。

「あんなつぁ」のPVは、男女の初々しい恋愛と絶妙な距離感を描いた作品である。特に印象的なのが、夜の鴨川デルタで女性が東京に行くことを告げる別れのシーンだ。その時の女性の表情がなんとも言えず儚くて綺麗だった。寂しさと懐古、心残り、すでに大きくなった愛情、どうにもならない切なさ…。感情が堰を切って溢れる寸前の顔だった。それが分析するのも無粋なほど綺麗だったのだ。役者と呼ばれる人たちの本領を見た気がした。

この歌はサビで「あんなつぁ〜」が繰り返されるのだが、同じ「あんなつぁ〜」が場面によって明るくも、懐かしくも、もの悲しくも聞こえてくるのがとても粋で秀逸だった。

「あんなつぁ」のPVを見ていると、この間先輩と、人の顔つきが好きだという話をしたのを思い出した。遠い目でどっかを眺める物憂げな顔つき、苦悩と明るさが同居する芸術家の顔つき、こどものようにクシャっと笑う顔つき、悟ったみたいに優しくはにかむ顔つき、世間に不満を抱えた鋭い顔つき。これまでの人生を振り返ってみても、自分の好きな人達はみんな個性的な表情をする。いや逆に、そういう表情に個性や人間味を感じるからこそ彼らに惹かれるんだと思う。ある一瞬の表情が心に響き、ずっと頭に残っているということがよくある。

最近で一番驚いたのは、ジャルジャル福徳のインタビュー動画を見て自分が涙ぐんでいるのに気づいた時である。なんでかわからないが自分は一瞬の表情で人を好きになるらしい、と確信したのはその時である。

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