週に一度の
ガラケーからスマホに移り変わって、ずいぶんと時がたったけれど、遠くにいる大切な人の声も映像もすぐに届けてくれるようになったことが一番の成果ではないかと思う。
すっかり当たり前になったことだけれど、タイミングさえ合えばいつだって声が聴けて、顔を見ることもできる現在のテクノロジーの素晴らしさを痛感する日々だ。
冷蔵庫を開けると、先週スーパーからスカウトした使いかけの食品が所狭しとその時を待っていた。
「レンチンで食べれるから食べちゃってね」
ってあれほど言ったのに。
TKGとか食べるだろうなと思ってそのままにしたのに。
卵とキャベツは見事に残っていて、冷蔵庫のスペースを奪っていた。
「予定より一時間くらい早く帰れそう」
と彼から連絡があったのは約2時間前。
私が最寄りのバス停でバスを待っている間に蚊に刺された頃。
そんなこと言われても私の到着が早くなることはないのにな、
と背骨の上を1時間半腰へ向かう途中にひたすら「到着後の動き」考えていた。
普段ほとんど使われることがないきれいなその場所は、私の到着を待っていたかのように片づけられていた。
私の暮らす部屋よりもかなりコンパクトなその場所で 彼が食べたいとった夕飯を作り始めた。
思えばこうやって彼の帰りを待つのは初めてだったかもしれない。
彼のいない彼の部屋は抜け殻みたいだったけれど、 【信頼されている】というちょっとした優越感に浸っていた。
「そのうち、こんな暮らしも当たり前になるかも」なんて妄想を繰り広げていたら、玉ねぎにやられて涙が出てきた。
「うわっ」と一人で毒を吐いてみじん切りを続ける。
「ただいま~」
と声がして我に返る。
まだ みじん切りしか済んでないのに!と思いながらスリッパをパタパタさせ玄関まで出迎える。
「え、なんで泣いてるの?さみしかった?」
と私を覗き込んだ彼の表情があまりにも滑稽で、そのまま彼にキスをした。
「鼻水ついたじゃん(笑)」
と、呆れたように私の頭を撫でた。
「おかえり。今週も無事帰って来られてよかった。」
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