心霊スポットの裏話【軽く怖い話⑤】
東日本のとあるダム
きっと地元の人以外からの知名度はそんなに高くない場所だから忘れ去られているだろうと思いつつ、そのダムを検索してみた。
景勝地としての他に、いくつかのサイトでは本当にあった飛び降り事件や水難事故に絡めて心霊スポットっぽく紹介されていた。
水難事故のほう
地元の学生が自主制作映画の撮影の一環としてそこでロケを行い、ダム湖に飛び込んで“溺れる演技中”に事故は起きた。水中に潜ったままなのもシナリオ通りの演技だと思っていた撮影クルーが、あまりにも長時間浮上して来ない主役の異変に気付き、仲間数名が飛び込んで捜索救助にあたったが見つけられず、遂には消防へ救助を要請したのだった。その結果、湖底に沈んでいるのが見つかった主役は帰らぬ人となり、自主制作映画は封印された。
心霊スポットの紹介サイトには
だいたい前項のようにその水難事故の経緯が記され、更に仲間内で封印された自主制作映画の録画ビデオ映像には亡くなった主役の学生の脚を湖底から無数の腕が掴み引きずり込もうとしている様子が映っていた、などとしてめちゃめちゃ怖い心霊話に仕上がっていた。
八割がた本当の話
そしてそれらの内容は恐らく実際の事故当時に当事者に近い環境(同じ学校など)に居たか、その類の人からの又聞き若しくは地元紙などの詳細な報道を目の当たりにした人物による寄稿であろうなと思える程、詳細に状況が描かれていた。
筆者は何故そんな事が判るのか
その水難事故で亡くなった自主制作映画の主役の学生は親兄弟ではないが俺と血縁者である。ウチは当時そこからは遠方に住んでいたのと、俺がまだ子供だったので両親だけが葬儀に参列した。事故翌日の全国紙に小さくだが記事が出ていたのも覚えている。正真正銘実在の事故なのである。
自主制作映画撮影中というのも本当。溺れる演技をしていたというのも本当。ただし、封印された撮影済ビデオ映像に溺れる彼を無数の腕が湖底へ引きずり込もうとしている様子が映し出されていたという描写は脚色によるもの。実際には撮影カメラは一基でダムの上の通路から水面を撮影していただけなので水中の様子は一切記録に残っていなかった、と当時から聞いていた。溺れて、沈んで、しばらく浮いてこない。体を張った名演技として上映される筈の水面シーンだけが残っていたそうだ。
事故の原因
彼は元々活発だったからこそ自主制作映画の主役を買って出たのだろうが、迫真の映像制作の為だったのか、あろう事か柔道着を着て飛び込んだのが命取りとなってしまったようだ。
道着というものは水を含むと非常に重くなる。溺れる演技だとしてもがけばもがくほど体力は奪われ、いつの間にかパニック状態になり演技どころではなくなり身動きが取れなくなる。最終的に運動神経には自信があった彼も水中深くで力尽きてしまい本当に溺れてしまったのだった。道着に身を包んで水に入るリハなどを行わずにいきなりダム湖に飛び込んでしまったという若さ故の事故だったのである。享年18歳だった。
心霊スポットの逸話になっていたのは正直驚いた。アレを寄稿したのは一体誰だろう?勿論俺では無いから驚いたわけだが。久しく会っていない別の血縁者ではないことを願いたい。
おわり
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