【弐の幕】超気軽に東京から大阪までチャリンコで行ってみた話(横浜〜箱根峠)
2017年11/1(wed)午前9時
未だ横浜中華街だ。
謝甜記を後にしたボクは少し焦っていた。
予定であればもっと先に進んでいる筈だ。
現在地の横浜中華街。
午前5時から営業している「杉田家」で家系欲を満たして先に進むのが理想だったのだ。
かなり遅れを取っているし自分が想定していた中でももっとも遅いルート通過時間だ。
朝粥で腹も満たせたしここは一目散に小田原を目指して静岡を目指さねば。
元町を抜けひたすら脚を進める。
「何とか夜までに静岡へ行って宿を探す」
これが大きな算段違いだと云う事をこの時のボクは知る由もなかった。
午前11時━━━━
鎌倉着
やはり自分の脚を過信していたと云うことを露呈することになる。
進捗が遅い!!!
1日200kmを稼いで3日で大阪へ入る予定でいた。
甘かった。
この初日の算段ミスが後の行程に大きく影響を与えることとなる。
が、気にしない。
あくまでこれは気楽なチャリ旅。
観光客の間をすり抜け鎌倉を堪能していた。
そして遂に━━━━
自走して太平洋に来たよね。
なんで人間ってば海を見るとテンションがダダ上がるんでしょうね。
この時点で一切の疲れも感じてなかったが海を見て更にメンタルが先に向いた。
電車で来ればそりゃ京浜東北線で1本だし2時間もありゃ来れてしまうけども。
自走してここまで来て見た海は格別だった(これから腐るほど見るけど)
暫く波風と波音をひたすら聞いていた
(ここからどうしょうもないくらい海だけど)
鎌倉から江ノ島まで暫く絶景が続いていた。
こんな所をチャリンコで走る日が来るとは。
天気にも恵まれて正に生まれてきてヨカッタナー状態。
「あっあっほら、富士山が薄っすら見えるぅう!」
などと1人でぶつくさと呟いていた。
心は暗い、仕方無い。
この辺りにくると完全に浮かれており鉄道マニアの人たちに申し訳なくなるほど鉄道とかに興味がないのに江ノ電のベストショットとかを待ち構えてみたり。
でも海やキレイなものを見てこう思ったのは確か。
「まぁなんとかならぁな」
という超楽観的な思考だ。
良くも悪くも愉しもうとそう思えた。
そんなこんなで完全にお上りさん状態のボクはお腹が空いていた。
当たり前だ、この時点で既に13時少しは前。
その場で美味そうな店を見つけて食べる。
完全にノープランなボクは宿すら取っていない。
食べる目当ての店はいくつかあったが辿り着けなきゃそれでいいのだ。
なのでその場でスマホを駆使し美味そうな店を探す。
フレキシブルに。
みぃつけた(ニタァ)
うおっ、オサレ。
道中、汗で濡れだぬきになってるボクが入っていいものだろうか。
否とにかくラーメン食いたい……
思えばラーショにフラれ杉田家には時間的都合でイケず。
麺やbar渦@本鵠沼
店内も非常にオサレ。
口頭注文のようだ。
店員さんも凄く丁寧、イイね。
屋号通りbar利用も出来るそうな。
奥には座敷があり昼下がりの主婦と子供たちの嬌声が聞こえていた。
カウンターには常連と見られる初老の男性ふたり。
恐らく地元の方だろう。
一番大切なお客さんってのは近隣の住民の方々だと常々感じる。
その近隣の方々に愛されている店なら間違いないだろう。
琥珀/ちょっとだけ全部のせ
などと考えている間にラーメンがくる。
白醤油基調で無化調の塩。
スープは鶏、淡めの魚介混合でかなりバランスが良い。
自家製麺は全粒粉(目立たないが)入りの都内で良く見かけられる三河屋のソレに近いもの。
これも口当たりがよろしく啜りやすい。
豚バラ肉は炙られており、味付けは甘め。
これもラーメンには非常に良くマッチしている。
シラスボールが個性的で面白かった。
湘南ならではのトッピングと言えよう。
メンマにせよ
味玉にせよ
「美味いモノを食った」
という気分にさせてくれた。
空腹時は何を食っても美味いがこうやってチャリンコで身体を使い果たしてる空腹時にコレだけのモノが出されると云う有り難み。
近くに来たらまた寄りたいと思った。
ごちそうさまでした。
さぁ、先を急ごう。
ホテルパシフィックなどを通り過ぎひたすら小田原にむけて西湘バイパスを進む。
歩道にはしばしば海岸の砂が巻き上がっており砂を巻き込み転ばないように慎重にただ脚を送る。
進む事2時間━━━━
簡単に2時間と言っておりますがコレがこの旅のキモで兎に角━━━━
超絶暇。
バイパスなどに突入してしまうと後はひたすらチャリンコを漕ぐだけ。
写真を撮る景色がない。
車も危険が危ない。
暇なのに集中力を要するこの時間にたくさん思考出来た事だけは有益だったように思う。
正に修験者が如く。
そしてココ酒匂川に辿り着いた瞬間に或る1つの目的が消滅していたことに気づく。
行きたかったラーメン屋
の営業時間が終了していた。
そして気づけば15時を回っていた。
ヤバい。
日が落ちる支度をはじめている。
そうそして、酒匂川のバックに見えるあの禍々しい影。
ボクはこんな所に来てもまだソレに気づいてなかったのだ。
ういろうを越え小田原城址公園が見えるも寄っている余裕はない。
こんなことでは静岡になんて辿り着けない。
そして風雲急を告げる━━━━
勾配が、勾配が今までの比にならぬほどキツくなってきたのだ。
「このヘトヘトな身体でこの勾配はキツい……」
元々思考から外していたのだろう。
陸路でも山なんか登らないで平地でイケるんだろ?
なんて甘く考えていた自分がいた。
そうそれは━━━━
箱 根 峠
ボクは段々と静かに凶暴にキツくなる勾配を力いっぱい登りながらこう思う。
「えっ?なに?ここから山登んのこれw」
後の祭りではなくアホの祭りだ。
平和ボケしたボクは陸路が近代の技術により整地されておりソコソコ平地で繋がってると信じてやまなかったのだ。
箱根峠 10km
こんな青看板が見える。
勾配は更にキツくなる。
そして山の特徴としては「急に」景色が寂しくなるのだ。
気付けよ自分。
なんて書いてある?「峠」だぞ。
峠は山のテッペンか?
それでもそこがテッペンで今のこのキツい登りは終わって何とかなるという楽観的な考え。
だが焦りが確信に変わっていく。
しかし、まだ甘い考えは抜けなかった。
「何処かに抜け道が存在して明るい国道みたいなところがあってきっと静岡まで辿り着ける」
この楽観的思考がこの後の自分を更なる地獄へ追い込むこともわからずに。
この時点で16時━━━━
思えばコレが本当の地獄の始まりだったんだ。
地獄の入り口はこのあり得ないくらい陳腐な架け橋だった。
━━━━弐の幕、了
参の幕へ続く。